1.はじまり
かなり昔書いた文章のバックアップ用です。
いろいろひどいです(笑)
黄金の瞳をもつ王子
この世に生を受けしとき
王国は危機にさらされる
碧い瞳・漆黒の瞳の龍の導きによって
GOLDEN EYESの偉大なる力目覚めさせ
定められし運命を乗り越えよ
されば
王女となる者が現れ
国を救っていくだろう
(『GOLDEN MEMORY』 第1巻 序章 より)
伝説は真実となった。
GOLDEN EYESことデルタス王朝第56代王子アキリア=デルタスは水龍ウィオラ、光龍ライラの協力のもと、みごと闇龍ビルラを倒し、世界を闇の空間から救い上げた。
それが、今から約8ヶ月前の話。
そして・・・。
「ウェスタ王。ぜひお耳に入れたい事がございます。」
アキリア王子はいつもと変わらず片膝をつき、王の前に参上した。
全てを包み込む光輝、金色の双眸。金色の髪。それはまさにGOLDEN EYESのもの。
「何なりと申せ。」
「はい。実は、導きの龍として今回の冒険を共にしたマサキを、我がデスタスの王女として迎え入れたいと思うのです。」
「は?」
王は威厳も忘れ、すっとぼけた顔をした。
あまりに唐突な話の展開についていけない王・ウェスタと女王・アークル。
「突然のことだということは重々承知です。しかし・・・。」
「アキリア。」
ウェスタ王はアキリアの話を遮った。
「少し・・・考えさせてくれ。お前は、一度下がれ。」
「はい。」
アキリアは小さく一礼すると、その場を去った。
「ふう。」
そんな簡単にお許しはでねーか。
アキリアは小さくため息をついた。そこに降ってきた、声。
「何て言ってた?ウェスタさん。」
アキリアは思わず声のした方向を見上げた。天井近くの天窓に、人影がある。
左目は、海の色を全部集めて作った、深く澄んだ碧い瞳。右目は、光と闇をいっぺんに集めた漆黒の瞳。好奇心の強そうな大きな瞳、健康に日焼けした小麦色の肌。きっと黙っていれば美少年にも見てもらえるであろうその整った顔立ちで、アキリアを見下ろしている。
「考えてみるって。」
「やっぱりなあ。」
そいつは2~3メートルはゆうにありそうな高さから、軽々と飛び降りた。
「そう簡単にいくわけない、か。」
「ま、そういうこと。」
二人は並んで歩き出した。
「シンジは?」
「連絡が取れない。どうやら2ヶ月ほど前・・・マサキが帰ってくる直前に貿易取引のためにアリアに向かったらしいんだが、いつ帰ってくるのかは分からない。」
「そっかあ。早く会いたいなあ。」
「シンジも同じこと思ってるよ、きっと。」
何しろ、マサキの安否が分からない期間は8ヶ月以上も続いたのだから・・・。きっと今も心の片隅でマサキのことを案じているだろう。だから今すぐに教えたい。マサキが帰ってきたこと。
「シャラメイがいればひとっとびに連れていってもらうのに。」
「呼べば?」
「シャラメイ、まだ怪我の回復が完全じゃないんだ。ウィオラとライラの再生能力にも、限界があるらしいし。自分たち自身を回復させて、ティラを治して、俺の身体を作り直して・・・なんてやってたら、力の使いすぎにもなるよなあ。」
マサキはケタケタと笑ったが、笑い事ではない。もう半年もたつのにまだ回復しないなんて、どれだけの力を使わせたんだろう。アキラは少しだけ胸が痛んだ。
「あ。マサキにいうの忘れてた。」
「何?」
「メシアの子供こと。」
「メシアの子供?」
「そう。メシアに息子さんがいたんだよ。それも、マサキが知ってる人。」
「誰?」
「当ててみな。よーく考えれば分かるぞ。」
アキラはメシアとどこか面影の重なるティラの顔を思い出した。
「ヒントは?」
「うーん。妖力者だってこと。それとマサキがよーく知ってる人だってこと。」
「まさか・・・シンジ??」
「ばーか。んなわけあるか。メシアはシンジのおばさんだって言ってたろ。シンジのイトコにあたる人だよ。」
「じゃ、誰?妖力者で、シンジぐらいの年で・・・。」
マサキははっとした。むしろシンジよりも意外だ。
「ティラ?!」
「ピンポーン。」
「うっそだろお?!ティラがメシアの子供?!で、シンジの従兄弟?!」
「もっと驚くこと。メシアは長の娘なんだ。要するに、長はシンジの祖父だったってわけだ。」
「へー。世の中せまいなあ。」
「そんなもんさ。長は・・・シンジが孫だって知ってたのかな。」
「分かってたんじゃねえ?何か隠してたみたいだし。」
「うん・・・。」
でも、隠していたのはそれだけじゃないと思う。長は絶対に、<マサキを見て>驚いていた。マサキもどこかであの部落とつながりがあるのかもしれない。
「あ、そう言えば、俺の親は?どこにいるんだ?」
「あ。聞くの忘れた・・・。」
「いいや、自分で聞くよ。」
マサキはアキラの着けていた正装用のマントを剥ぎ取ると、自分の背に着せた。そして服の乱れを整え、髪を撫で付けると、もと来た廊下を戻り始めた。
「自分の服もってこいよ。」
「めんどくさい。」
「まったく・・・。」
マサキは変わらないなあ・・・と思いながらも、アキラは温かな気持ちに包まれていた。今までにはない安堵感。
それがマサキと過ごす時間のもたらすものだと知るまでには、まだもう少しかかりそうだ。
「マサキ様が見えております。」
部屋の入り口の兵士が来客を告げた。
「今度はマサキか。」
ウェスタ王は苦笑する。ついさっきアキリア王子が来ていたばかりだ。
「通せ。」
「はっ。」
開かれた扉の向こうから、マサキが現れた。とても女とは思えない、さっそうとした態度で真っ直ぐ王のもとへと向かってくる。
おしいな。男なら、よい武将になっただろうに。
「ウェスタ王。」
マサキははっきりとした口調で率直にこう告げた。
「俺の・・・じゃない、私の両親について教えてください。」
この1ヶ月で新しい付き人のハールに言葉づかいを習ったけれど、まだまだ使いづらい。
「両親・・・か。」
ウェスタ王は小さくため息をついた。
もちろん、この日が来ることは覚悟していた。マサキが生還したと聞いたその日から・・・。
「その前にマサキ。ひとつ聞きたい。」
「何ですか?」
「お前は、本当にこの国の王女になる気はあるのか?」
「あります。」
間髪入れずにマサキは答えた。
「王女になるということがどういう事か分かっているのか?」
「はい。」
マサキの瞳に迷いはない。
「俺はこの国が好きです。この国に住む人たちも・・・。だから、守っていきたい。俺がやらなくちゃだめなような気がするんだ。俺に・・・。」
マサキはいったん言葉を切った。
やばい。こんな言葉を使ったら、またハールに怒鳴られてしまう。
「・・・私にしかできないことはきっとあります。世界を救うのがアキラにしかできないことだったように。」
碧い瞳、漆黒の瞳。この娘が赤ん坊だった時から幾度見てきたことだろう。この瞳の奥に龍が潜んでいることを、どれだけ恐ろしく思ったろう。
だが今は、マサキ一人だ。マサキ自身の意志で先へ進もうとしている。
「・・・お前の出生は、お前が王女になるには大きな障害となるだろう。」
「どういう事だ・・・ですか?」
「それはすぐに分かる。だが、お前たちならきっとこの運命を乗り越えるだろう。」
ウェスタ王は同意を求めるようにアークルに視線を送った。
アークルは微笑み返す。
「会議を開く。すぐに会員の招集を・・・。」
会議は3日後、開催された。
メンバーは、ウェスタ王、アークル皇后、国軍隊長テミストクレス、書記長官のガーネットとぺリドット、妖力者代表セバー=ロージス、商業者代表バルト=ヴァンドル(シンジの父親)、生産者代表カートラ=ポネトス、学芸者代表ナタ=ペッグマンなど、合計12名。
協議は4日間にもおよんだすえ、とうとう結論が出た。
「ふたりを呼んでまいれ。」
「はい。」
警備兵はすぐにアキリアとマサキを連れて戻ってきた。
「お呼びでしょうか。」
アキリアとマサキはは新しく用意された正装をまとっていた。王の間にはコングレスのメンバーがずらりと勢揃いしている。
「まず、アキリア。お前のマサキを王女にしたいという気持ちは変わってはおらぬな?」
「もちろんです。」
アキリアには一年ほど前の気弱な様子が微塵も感じられない。
アキリアをこれほど変えたのはやはりマサキなのか?
「では、マサキ。お前も変わっていないな?」
「はい。」
「マサキが王女になるまでは決して平坦な道のりではないだろう。・・・それでもよいのか?」
「はい!」
二人の声が重なった。
ウェスタ王は威厳を持った声でこう言った。
「マサキをデルタス国の王女として正式に迎え入れる。」
二人の顔がぱっと輝いた。
「!!ありがとうございます!!」
「それに先立って、マサキに帝称を与える。」
「ていしょう・・・?」
マサキがきょとんとした。
アキリアは小声でマサキにささやく。
「王族に与えられる名前のこと。王子の名と王女の名は、その時の王が決めることになっているんだ。」
「つまり、俺の新しい名前ってことか。」
ま、そういうこと。
「マサキ・・・お前の帝称は、<ヴェルナ>だ。東方の月の女神の名だ。」
「ヴェルナ・・・。」
マサキ・・・改めヴェルナは口の中でその名を復唱した。
「ありがとうございます、ウェスタ王。」
「うむ。」
王は満足そうにうなずくと、不意にいすから立ち上がった。
「伝令者を派遣しろ!デルタスの王女が決まった、と。その名は・・・ヴェルナ=デルタス!!」
「はいっ!!」
警備兵も嬉しそうに飛んでいった。
「アキリア。戴冠式はまた後日行う。それまではまだ<マサキ>であり、この国の正式な王女ではない。」
「はい。」
「戴冠式の前に、二人でキチ島へ向かい、セバー=ロージスに会うのだ。」
「長ですか?」
「そうだ。マサキ・・・ヴェルナの出生のことを教えてくれることだろう。」
「分かりました。すぐに向かいます。」
「よかったな、マサキ。」
「ああ。」
マサキは心底嬉しそうな顔をしている。
「すっげえ嬉しい。この国のために生きていけることが。シンジや、ミーアや、メシアのためにここにいられることが。なによりも・・・。」
マサキの碧い瞳と漆黒の瞳がアキラの視線を捕らえた。
「アキラのそばにいられるだろ?」
マサキはにーっと笑った。
「な?」
「ああ・・・俺も、すごく嬉しい・・・。」
アキラはマサキに微笑みかけた。
「あーっ!マサキさまあ!」
突然廊下の向こうから大声。
「ハール。」
マサキの新しい付き人のハール=クリストだ。
「おめでとうございます!とうとう王女になられたそうで。」
「ありがと、ハール。」
マサキはハールににこっと笑った。
ハール=クリストはもともと王宮の雑用係で、毎日毎日掃除やら洗濯やらなんやらかんやらをやっていた。が、ある日庭の枝きりのために木登りをしている所をマサキが通りかかって、ハールをいたく気に入った。そしてマサキは王に頼み込み、ハールをメシアの後を継ぐ付き人になってもらったのだ。
純粋なデルタスの、青い瞳に金色の髪。歳は19。穏やかな表情は人に気弱な印象を与えているが、実際の所、根性があって意志がかたく、やりはじめたことは最後までやらないと気がすまないという堅実な人間である。
「いまからキチ島行くから、準備するぞ。あ、ハールも行くか?」
「いってもよろしいのですか?」
「もちろん。」
「じゃあ、ごいっしょさせていただきます。よろしいですか?アキリア王子。」
「ああ。早く準備して来いよ、二人とも。」
「はいはい。」
アキラも兄貴のようにしてハールを慕っている。
「いこ、ハール。」
「はい。」
二人はすぐにかけだした。
伝令はその日のうちに国じゅうに伝えられた。それがまさか、こんな事態を引き起こすとは思ってもみなかった。
もちろん、ほんの一部の人間は承知していたことなのだが・・・。




