序章にして第一話
途中、相良の昔話をいれています。暗いです。ダークです。なので宗介も、回りを巻き込むダークネスな奴になっちゃいました。違うのは、彼は『黒髪美人』によってポジティブになってゆくことです。羨ましい!?
「好きな奴!?いねぇよ!」
嘘です。います。このクラスに。
もう、一目惚れでした。
恋を知らない青二才が、恋を知る青二才になりました。
彼女は、長く美しい黒髪、しなやかな肢体、極めつけは独特の、ベージュの眼に黒い瞳。
もう!痺れちゃう!
・・・ハイ、そこっ!キモいとか言わない!
ホント、あのエンジェルスマイル見たら、こうなっちゃうから。
それぐらいにかわいい。
しかし、一応クールで通しているので、まわりにこのことを知られるわけにはいかない・・・
小林美里への密っかな想い。そして・・・
俺がオタクだということを!
高校。
それは青春の1ページを彩るステージ。
学生たちは恋愛、すなわちLOVEにひた走る!
しかし入学式数日前、そこには
「つまらない日々が続くんだなぁ」と思う俺がいた。
小学時代、よくいじめられた。勉強すれば常に上、運動すれば中の上、顔付きもいい。
嫉むやつは多いが、モテはしなかった。友人も少なく、5人くらいしかいない。 喧嘩は上級生多人数相手に勝つぐらいに強かった。かえって友達を無くした。
高学年になると、クラスでハブられた。二年間、体育はほぼ見学状態だった。休み時間は少ない友達と遊んだり、本を読んだりした。
中学の思いでは、あまり良くない。
初めての恋。言い出せずに終わる。人の夢ははかないと知る。
部活で、最強の落ちこぼれに出会い、同情して優しくしてやった。理由も無いのに二度殴られ、ブチ切れた。反撃を許さない怒涛の攻めで相手を倒した。歯を折る怪我を負わせ、22万の請求がきた。のちに離婚の慰謝料にされたと知る。 部活は柔道をやった。俺には向いていなかった。結局、中央止まりで俺の柔道はおわった。
他の部員は県大会、関東、全国へと進んでいった。・・・
体育祭、修学旅行、その他諸々、何一つ俺の心に響くものがなかった。皆には笑顔が溢れていた・・・
卒業式。みんな泣いていた。何故泣いているんだろう?何が悲しいのだろう?どこが痛いのだろう?誰に聞いてもわからなかった。泣いていない奴でもわかる奴はわかるって言われた。
「じゃあわからない奴は?」
教えてはくれなかった・・・「お前は暗過ぎる」
「お前は人を気にしなさすぎだ」
「お前は俺が言ったとおりにやればいいんだ」
「何なんだこの点数は!?」
五月蝿い
うるさい
ウルサイ
うるさい!
「ほっといてくれよ!これ以上は無理なんだよ!静かな暮らしを求めちゃいけねぇのかよっ!?」
そんなこと、言う根性も無かった・・・
「趣味は?やっぱ読書?」
そう聞かれた時がある。
趣味・・・ですか?
「読書・・・ですね。あと・・・」
ガンダム。
は?
ガンダム!
「機動戦士ガンダムッス!」
呆れられた。
「なんかオタクっぽい趣味だね」
中学時代、憧れの先輩とこんな会話をしたことがある。すごい美人で寝技の練習が大好きになった。その時だけ会話が出来たから。(乙女チックだ・・・)
先輩が卒業して何ヶ月かした時、偶然あった。綺麗な短髪は、茶色いヤマアラシになっていた。頭の中で何かが音を立てて崩れてしまった・・・大切な何かが・・・
失望感が身体を包んでいた。
絶望が心を蝕んでいた。
何を間違えた?
何処から間違えた?
「俺がっ!何をしたぁ!」
返事はない・・・
わかることは、
生まれたことが過ちなんだ。
でも。
自分で自分を殺すなんて、そんなことできたら・・・
「こんな苦労しねぇよ・・・」
16手前、人生ダメだと思った。
担任に勧められ、この高校を受験した。
「推薦はとても無理ですが、一般入試は確実に受かります!」
ダメだしを受けた親は、縋るようにそこを受けさせた。受かった代わりに、俺は毎日1時間チャリを漕ぐ羽目になった。
一年三組 鍵守 宗介
脱力を振り撒きながら、高校生活がスタートした。