嫌いなアイツは先生
10/21 短編を初投稿
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中学に入学してすぐ、俺は嫌いな奴と出会った。
何を隠そうウチのクラスの担任になったやつだ。新任だと自称しているが、どこか変。
同姓同名だし。
そのせいで友達におちょくられることになったのは頭が痛い。
奴は社会の先生で、俺の最も嫌いで苦手な科目なのも社会。
受け入れられないのは当然。
しかし、それを知ってのことかいつも俺に問題を出してくる。この前だって世界史の問題を振られた。
中学一年生に世界史上の産業発展について答えろ……ってわかるかっつーの。
ほかの授業が自習になったときは嬉しかった。
だって担任がこないのだから。
けれど俺の友人たちはそれを否定した。どうせ来るなら担任がいいとのこと。
理由を聞けば、あんなに生徒をわかる教師は類を見ないと威張って言う。
ありえん。
あんなにうざったくて面倒な教師のどこがいい。
あんな教師なんて大っ嫌いだ。
そういえば俺の得意科目の生物の問題を出したとき、先生はあっさりと答えた。あまりのあっさりさに、俺の「正解」という言葉が女友達の黄色い悲鳴にかき消されてしまうぐらいに。
ちくしょう……あの問題は高校生でも答えられるか微妙なラインの問題だったのに。
そういえば、俺は部活に入っている。
入部したきっかけは小学校の時に仲良くしていた先輩がいたから……と、楽そうだから。
で、あろうことか担任の野郎は卓球部の顧問にまでなりやがった。副顧問といえど担任。忙しい身でありながらせっせと部活に顔を出してきやがる。
でも部活内規則の基礎を作ったのもそういえば先生だっけ。ウチの代は学校が弱かったけど、先生のしごきのせいで他の学校から強校と言われるのにそう時間もかからなかった。
先生はとんでもなく強くて、俺の全盛期のときでも歯が立たなかっし。ランキング戦では上位二位だったのに。
先生に練習させられて、幸か不幸か俺はそこまで強くなってしまった。
俺が全盛期のとき……それはつまり中学三年のときだ。
三年のとき、先生は俺のクラスの担任ではなかった。
けれどちょっかいを出すことは日々増えていって、もう社会に関していえば問題なくなった。理科Ⅱも勉強しないでも点をとれていたし。
進路のことになると「将来の夢」を書く欄が増える。やりたいことはなかったけれど、書くこともなかったので適当に書いた。
卒業式も淡々と終わり、さて帰ろうかと思いきや先生と廊下ですれ違う。会話はなかったけどなんだか心地いい気分で別れ、不思議とそれ以来二度と会うことはなかった。
今、教師になった俺。
なんやかんやあって奇妙なことに、新任になる学校は十年前の俺の母校だった。