飛行機の中
初めまして、くれいじいです。
「社会とは何ぞや」などとヒマな事を考えつつ、ゆるりと書いています。
目を通してくれれば嬉しいです。
機体が揺れて、俺は目を覚ました。
小さな窓の外では、空が暗くなり、雨が降っていた。
ふと機内の前の方を見ると、電光掲示板に“シートベルト着用”のサインが出ている。
離陸直後から耳を悩ませていた飛行音は、耳が適応したのか注意しないとわからなくなっていた。
俺は自分の腹と肩を締め付けるベルトの存在を確認した後、中央の通路を挟んで反対側の席へ目を向けた。
「何だか、荒れているようですね。隊長」
「…そうね」
反対側の席に座った女性…“隊長”が、素っ気なく答えた。
「でももう雲の下だから、じきに着陸するようね」
上品な英語を流れるように発音する隊長は、一回りもふた回りも年齢の若い俺から見ても美しいと思った。
「…スリップとか、しませんかね?」
「あら、怖いの?」
ふふっと笑いながら、隊長は冗談めかして聞いた。
俺はまた窓の方を向いた。
「…苦手なんですよ。飛行機」
「それは、前にあなたが言ってた…トラウマってヤツかしら?」
「…そんなとこです」
「そのトラウマ…私に話してくれる気はないのかしら?」
「………ない、ですね」
俺は目を閉じた。
また眠りに落ちればいいと思った。
着陸する瞬間を、起きて感じていたくはない。
そう、俺は飛行機が苦手だった。
今乗っているこの飛行機はとある北欧の国からアジアへと向かうチャーター便。
俺の名はラディ・アルノ。
まだ生まれて間もない頃に、これとは逆のルートを辿る非正規便…要するに“密輸便”に乗った事がある。
自分の周囲で何が起きているのか全くわからず、ただ印象に残っているのは機内の油で汚れた天井の光景…。
そうして俺は、19年前…実の親に、捨てられた。
俺がこの事を知ったのが、捨てられた国で小学校に上がった時だった。
以前から不可解な記憶に悩まされていた上、クラスの中でなぜ自分だけが黒髪に黄色い肌なのか疑問を抑えきれず、育ててくれた養父に質問したのだった。
当時教会の神父だった養父は、出来るだけ俺が傷つかないよう、言葉を選びながら真実を教えてくれた。
お前の母には、お前を育てるだけの力が無かった。仕方がなかったのだと…。
それならなぜ国内ではなく、異国の地に子供を捨てたのか。
それを教えてくれなかったのは、俺が当時まだ幼すぎたからなのだろうか。
…何はともあれ時は過ぎ、俺はもう19歳。
俺が生まれてからの19年は、様々な物が変化する、まさに激動の時代とともにあった。
今俺は、その大きな要因となったある組織の中で働いている。
ラーメンにドライアイス入れたら凍った。
くれいじい