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神話・伝説

猿投(さなげ)神社~神話の神々が登場

作者: sadakun_d

暮れも押し迫った年末の猿投山である。


浮洲は山頂近く西の宮の参道をランニングして"小さな人"を見たという。


山道を見渡す限りは雪で真っ白。さらさらと降る景色は幻想的な雰囲気だった。

「小さな人を見たの?なんのこと。猿投にきた参拝客のお子さんじゃあないの」

猿投の西の宮。


猿投神社のご神体が祀られ『大碓(おおうす)の神殿』である。


昭和8年に宮内庁が猿投にやってくる。


「神話に大碓神について記述があります。実地調査致しますのでご協力をお願いします」


調査は簡単に行われ西の宮参道辺りから瓦や神殿の建物の破片だろうの遺物があった。


調査員が掘ったら瓦が見つかる。

「大碓王子の神殿建物跡でございます。認定されましょう(猿投伝承記)」


西の宮は御陵にある。宮内庁が認めれば天皇さまの遺品となり国が管理をしてくれる。


だけど猿投神社は宮内庁から委託され西の宮御陵を管理する形になった。


さらには名称を『大碓御陵』とし歴史的に有名な古墳になる。


神話にあるとしても大碓御陵は有名ではない。


「あの山頂にある西の宮は御陵なの?つまり天皇家のお墓」


西の宮はちょっとした鳥居がポツッンとひとつ。狭い範囲の囲い御陵であった。

小さいことは小さい。まるで祠のような規模だった。

近くに行かれた観光客や参拝客も気がつかない。


西の宮御陵の山頂近くに御船石(みふね)がある。


巨石がふたつズドーンと天に向かい突き出ている。


「伝承だとねっ大碓王子は空飛ぶ円盤で当時の(奈良の)都からブゥーンと豊田にやってきて御船石に着陸したらしい」


超古代文明があり円盤の基地だと言われている。


「この手の話を聞くと歴史と古代ロマンが感じられるけど。なにせ科学的裏付けがないからなんとも言えないなあ」


いにしへの奈良の都から猿投までフライト。大碓王子は空飛ぶ円盤に搭乗されて何をおやりに来たのだろうか。


ちょっと知りたくなった。

猿投のトレーニングの最中に浮洲と久子は降る雪に見舞われてしまい西の宮御陵で足留めを食う。


「吹雪いてきたぞ。早く下山したらよかったな。チャコ寒くはないか。すまないなあ付き合わせてしまって」


豊田の郊外に猿投はある。

街に近いと言えどもお山は山。吹雪くこともたまにある。


久子はブルと震えてしまい寒さを実感する。


「ちょっと寒い。いやぁーんしっかり私を抱き抱えてちょうだい」


久子は両手を伸ばした。


寒いわっと甘え浮洲の肩に寄りかかる。


ちゃっかりと彼氏の腕によりすがるのであった。


吹雪がなければお山でいいムードのデートである。


夕方にはまだ時間があるが猿投はさらに雲行き怪しくなり暗闇となる。


久子は寒いのっと甘えて浮洲に抱き抱えられた。


恋人はうっとりしていく。

「猿投はそんな高い山ではないから。雪は収まるさ」

チャコが寒さを我慢していたら大丈夫さ。吹雪ぐらいすぐに収まる。


年末の押し迫った冬の空の下。雪が激しく舞い込み浮洲と久子は西の宮御陵でこごえて晴れ間を待つことにした。


雪の世界で二人は異様な光景を目のあたりにすることになる。


うん?


あっ


「チャコ、チャコ!あっ、あれを見ろ!ほっほら前だ!目の前のやつだ」


浮洲は雪降る西の宮に指を差す。


雪の降る中に"小さな人"がいた。日本神話にある神の白いいでたち。


小さな人は見える範囲に三人がボンヤリ見えてきた。

そのボンヤリした輪郭が徐々に見えてくる。


小さなひとりが浮洲達に気がつきこちらを見ている。

「父上さま。父上さま。あれを御覧なさいませ。怪しいものでございます」


小さな人達は人たちで浮洲と久子に気がついた。


エッ?


久子にも見えた。


小さな人達。


それは幽霊かと思い足がブルブル震えてしまう。


一見をしてこの世にあるものではないと察知し怖くなる。


久子は甘えではなく浮洲にしがみつく。


「そちたちは何者じゃ!名を名乗れ。ここは帝王の宮殿なるぞよ」


勝手に御門(みかど)の神殿が造られた。


小さな人。


かっぷくのいい男である。

白い装束の男は強い口調で浮洲達に言う。


ここは宮殿の中である。見知らぬ(やから)は屋敷から出ていけといわんばかりだった。


不気味な光景だとは思う。

好奇心が旺盛な少年はこの先何が起こるのかと胸が高まる。


猿投の周りは雪が積もり吹雪きは強くなり暗闇は深くなる。


小さな人達は吹雪中に篝火を焚き暖を取るようであった。


「父上さま。かようの者はいかがいたしますか」


父上と尋ねられたのは初老の優しい男であった。


「父上さまって言ったわね。あの3人は親子かしら」

光景はテレビドラマか映画のシーンである。古代王朝の雰囲気そのままが見て取れた。


父上はオホホッと小さく笑った。


「そちたち寒かろうて。さあ篝に近くなれ」


初老は威圧的で凛とした言葉であった。


吹雪は収まらない。寒さから暖がほしくなり言われるままに久子を抱き小さな人達の近くにいく。


ゆっくり足が前に出てしまう。


取り立てて近くに行くが不思議と恐怖心もなく浮洲はスゥ~と前に進んだ。


ふたりにはなにも危害ないと安心する。


「あなた方は誰ですか?猿投のお山の神みたいな感じですね」


寒さと異様さを体感。


浮洲は絞り出す声だった。

初老は答えた。


「余は神なるぞ。余は第12代景行(けいこう)なるぞよ」


景行なるぞよ!


なんだろう?


「してこのものは。余の息子の大碓(おおうす)なり。こちらは小碓(おうす)なるぞ」


善きにはからえ~


日本史は詳しくなかった。

第12代?


景行も神武も知らない。


とにかく天皇を知らなかった。


逆に景行から名をなんと言うのか浮洲は聞かれた。


「なに?そちは浮洲(うきす)なりとな!猿投のウキスなりと申すや」


景行天皇は"浮洲の先祖"を知ってる。


現在の豊田にある矢作上流にある(いかだ)職人に名を与えていた。


職人に浮洲と命名したのが誰あろう景行天皇その人であった。


矢作上流のイカダ職人達は技能の高さから、浮洲、浮田、浮井、沢田、沢井と名をつけられた。


「ウキス、余は、そち(の先祖)をよくよく存じておるぞよ」


猿投にいる浮洲の職人達のイカダは出来がよく神に評判よかった。


小碓(日本武尊命)が草薙征伐に海の道を選んだ際に浮洲職人のイカダを使用したのである。


※そんな記述はどこにもありません。


「ソチはイカダ職人か」


浮洲は即座に違うと答えた。


おじいさんや母親から聞いてたのは先祖は(きこり)であり森林から伐採した木々を加工する船大工であったらしい。


「船?"フネ大工"とはナンゾや」


景行天皇の時代に舟や船はなかったかもしれない。


篝火に近く身を寄せたため久子は温かくなってきた。

怖さからしっかりと浮洲にしがみついていた手を少し緩めた。


「あの方は天皇なのかしら?第12代って言ってたわね。初代が神武天皇さん。だからいつの時代になる(弥生時代)かしら」


篝火がゴウゴウ焚かれ寒さが感じられなくなる。


すると景色が一変し宮殿が背後に現れる。


「天皇さまは本当かもしれない」


気がつくと古代の風景そのものとなっていた。


うん?


なにやら芳ばしい匂いが猿投一面に漂いだす。


「何かの料理だ。うんうん肉を焼いている匂いがする」


景行天皇は今から夕食の宴であった。


保存食だろうか雉や兎と山で捕れた小動物達を塩づけ加工。


ハムのように燻製にしてあった。それらを順番に焼き食卓に並べていく。


肉だけでない。穀類から始まり魚や貝海草。木の実果物も侍従らが運び始めた。

空飛ぶ円盤で日本各地から猿投に食材を集めたようで南のモノ、北のモノ取り混ぜ食卓に並んだ。


「ウキスとか申したな。そちは腹はどうじゃ。我々と食していくか」


景行天皇の息子の大碓王子は笑顔で手招きした。


「秋に狩りして得た獲物ばかりぞ」


肉の匂いは堪らなくそそるではないか。浮洲は古代人の神の食卓が珍しい。


喜んで食べたいと答えた。

久子は警戒した。


「よかろう。手前の椅子に座れ。侍従ども客座を設けよ」


二人の両脇にぞろぞろ侍従がやってくる。


お客様でございます。


前にどうぞ


チョコンと神の食卓に座る。


するとサァーとどこからともなく召しの女性達が現れお椀に飲み物や穀類(お米みたいなもの)をよそってくれた。


召し女性は笑顔で浮洲を見た。


おいしいから飲むように


栄養がつくから食べて欲しい


「お椀の飲み物なんだろう?なにがつがれたのかな」

一口舐めてみたらお神酒だった。


古代の食卓は穀類から肉魚ときらびやかなものである。


「ねぇねぇ。箸は使わないの?みんな手で食べているわ。熱いものはおしゃくみたいなもの使っているみたい」

手掴みはハタからみたら豪快なものだが現代人の浮洲達にはちょっと抵抗があった。

「うーん手ではいけないなあ」

浮洲はみじかな木の枝を折り切り箸を持つ。


神達はなんだろうかと注目をした。


「お!ソナタはなかなか器用なものをなさる」


神達は浮洲の箸が欲しくなった。


景行天皇は不思議なものを見たと盛んに首を傾げて浮洲の箸を眺めた。


「どれどれ。枝をふたつに。どうもうまく使えないのう」


箸を見よう見まねで使う天皇。


豆は取れず結局手でパクりである。


美味しい(うたげ)(たけなわ)となる。


景行天皇は話し好きだとみえ快闊に浮洲達に話かけるようになる。


現代とはいかなる世界かっ。


ソナタはなにをなっているか聞いてきた。


「天皇さまに申しあげます。現代は平成の時代でございます。天皇家は第125代に繋がりました」


第12代景行天皇は驚く。


125代と子孫は繋がりであるのか。


そんなに長く続く天皇系譜なのか。


景行は満更でもないとしたり顔をしてみせた。


「余がたくさん子を儲けたためであるのか。系譜は長く続くものぞよアッハハ」

笑って誤魔化すのである。

伝説の景行天皇は子がいくらでもいた。


正室に49人その他の外に51人となって合計は100人だった。


さらに年齢は128歳まで生きたと言われている。この年齢の数字はちょっと説がある。天皇は特別に年に二歳加齢したのではないか(春と秋)と学説がある。


歴史好きな久子はそれらの数字を聞き天皇に尋ねた。

「えっ~!100人もお子さんいらっしゃったの!天皇さま」


子供の数を聞かれた景行は"まあなっ"と照れ隠しにはにかむ。


これだけいたら誰が誰を生んだのか。覚えている可能性が薄である。


さらに…


「お妃さまはどのくらい?」


寵愛された(人数は)どのくらいいらっしゃったのか


久子は喉元まで聞いて見たかった。


天皇さまに聞くかな?


「いやだ。そんな失礼なこと。私から言えないわ。言えないけどさあ~しりたいなあ。ひとりお妃さまが2人ずつ生んだら50だけど」

古事記に"景行天皇の女癖"がいろいろ書かれている。

日本各地に天皇のお気に入りさまがいる。


大変な艶福家であった。


猿投山での逸話もある。


息子の大碓王子は美濃地方に美人姉妹がいたと聞き知り見てみた。


「かような美人ならば妻にしたい」


猿投の神殿に姉妹を強制的に連れて来てしまう。


あくまでも大碓王子の妻にしようとしてだった。


景行天皇(父親)は美濃美人姉妹を見て気に入ってしまう。


どうするのかと思ったら無理矢理に大碓から奪ってしまい自分のお妃にしてしまう。


姉妹とも自分のモノにして平気だった。


「へぇー凄い」


久子は改めて目の前の天皇が恐ろしい存在に見え始めた。


「チャコ、なんせ景行天皇は神様だからね」


久子は息子の大碓王子の顔もジロジロ眺めた。小柄な感じだが勇ましい感じもある。


小碓と双子である。伝承によると三っ児の可能性もある。


「大碓王子さま。小碓王子さま。かっこいいわぁ」


久子は古代にいた王子さまに"ホの字"になる。


女子高生が憧れを抱くことは無理もない。双子の王子大碓と小碓。


小碓は『古事記』で大活躍した日本武尊命(ヤマトタケルノミコト)の幼少名である。


武勇伝を見てみれば目の前にいる神に夢中になるは自然の摂理だった。


『猿投伝承記』は大碓小碓の双子はこの神殿で生活をしてしまう。


『古事記』にある大和奈良の都は行かないことになっている。『古事記』や『日本書記』と異なる神話が残ってしまう。


逆に『古事記』には猿投は話題にもされていない。


大活躍した武尊は愛知県の近くは熱田の尾張国造まで来ている。


だがそこから名古屋-豊田と猿投グリーンロードは通ってない!


「だから円盤を使ってビューンと大和と猿投を行き来したのね。円盤は記述されないくらい速く移動してしまった」


アッハハ!


神を前にして高笑い。久子はひとり納得する。


空飛ぶ円盤があったとしたら御船石(着陸地点)は今でも残っている。


「噂の円盤に乗ってみたいなあ」


久子は事情を知るとパクパクと宴の料理を口に入れながら円盤を夢見る。


宴の後で"小碓の王子"が浮洲の近くに寄ってきた。


「余は浮洲重紀を知るぞよ。そちの祖父なりし人ぞ」

なんとなんと!


野球人の祖父は日本武尊にまで名が轟いていた。


じいさんは古代人まで有名であったのか。


じいさんを知るとは日本武尊は中日ファンだったのか?


"イクサ"も静岡の草薙球場近くで派手にやっている。

「中日を知ってるか聞いてみたいぞ。でも『古事記』だと神さまは大和奈良の神殿育ちだけどなあ」


名古屋も豊田も無関係。


小碓(日本武尊)は浮洲の先祖イカダ作りの職人時代から付き合っていると言う。

「イカダのウキスは余の征伐に必ずお供なんぞ」


あらまっ!


草薙球場!に一緒に行っているなあ。


イカダのウキス職人さんは本当に浮洲の先祖なのか。

「浮洲くんて歴史のある家系なのね。見直しちゃった」


久子はゆくゆくはそんな家にお嫁に行くのかなあとちょっと思った。


チラッと浮洲の顔を見る。

「いゃ~ん」


浮洲いきなり久子に言われてわけがわからない。


「イカダのウキス家が川の生活をしてそのまま船大工さんになるのは不自然ではないけどね。しかし古い話だから調べたくても調べられないや。弥生時代だからなあ」


浮洲は先祖を神に褒められまんざらでもない顔になる。


なんせ古代天皇さまに従った家系と言われて!


こそばいような


くすぐったいような


ついでに久子には


「いゃーん」


日本武尊の小碓はさらに面白い話をした。


「余はそなたの祖父を知るぞよ」


祖父の重紀が赤ちゃんとして生まれた時に猿投にきたことを知ってると言う。


「余は猿投神体ゆえ浮洲の祈りを聞き成長をしかとみておるぞよ」


浮洲の家系は男の子が生まれたら猿投神社に無事な成長を祈り神に手助けを願ってきた。


小碓は言った。


この儀式は昔から続く伝統のようだった。


浮洲は重ね重ね神に頭を下げた。浮洲家を見守るお礼に…。

「そちが野球なりし?余は現代の"ヤキュー"がわかりもうすぞ」


チャンスあらば球を投げたかぞ


ハッ?


浮洲は我が耳を疑う。


小碓がボールを


神さまが投げる


野球をやりたい?


「ちょっと待ってくださいな。なんで『古事記』にいる日本武尊命が。スポーツの野球をやるんですか?」

小碓スクッと立ち上がり合点を打つ。


やにわに振りかぶり投手の真似をしてみせる。


アチャア~


浮洲はシロウト丸出しに目を覆う。


みちゃあいられない!


目を隠して"やっちゃあいられない"


態度で不味さを示した。


それを見た景行天皇は横からじろじろ。


チラッ!


「小碓なにをしている」


投手もどき。


腕を振り上げた小碓は不思議な格好である。


「これはこれは父上さま。ワラワはこのウキスに現代の"イクサなるもの"を伝授したもうでございます」


景行天皇は(イクサ)と聞きウグッと身を乗り出す。

天皇が大君・大王と呼ばれた時代の話である。


日本列島全体を征伐することが景行や先代の天皇の夢であったはずである。


「かようなイクサとは。いかなる戦法か?確実な勝ちなりしものか」


小碓は"野球"を飛び道具を使う"イクサ"として伝えていく。


「なぜ点があるのじゃ。バット?力いっぱいブン殴るものか」


武将のイクサと野球話は噛み合わない。


景行天皇も勇ましきものではないかと乗り気になる。

「新しいイクサとな?詳しく知りたいのう」


面白いとフムフムと聞いてきた。宴の時は流れ料理はすっかり片付けられる。


御陵の回りにはキャッチボールができるスペースが設けられていく。


「ああん?神さまが野球をやるの。どこの史記にやるなんて書いてあるんだ」


元来はアメリカからのベースボールなんだぞ


小碓王子は景行天皇にヤキューを教えたくなり手短かな果物を手に取る。


「父上さま見てくださいな。余は投手なり。浮洲構えよ。余の速球を受けるぞよ」


腕を振り上げてオーバーハンドである。


ヒュー!


キャッチボールの果物はなんと回転のよく掛った速球に見えてきた。


小碓の投げた果物は浮洲の前に勢いよく飛んでくる。

神のなせる業は違っていた。


あっ!危ない


浮洲はとっさに手を出して受け止めようとした。浮洲の捕球が下手だったのか果物はその手で止まらず。


顔面にヒットしてしまう。

「イタア~」


見事にオデコを直撃してしまい気絶をする。


ガッツン!


正面衝突を見た久子は浮洲の腫れたデコ顔をあらあらっと心配し撫で撫でする。

「大丈夫?痛いの。大丈夫?しっかりしてね」


さらりっと自らの衣服をはだけ胸を浮洲の顔に当てさせた。


母親が授乳するような形で看病したのだ。


「浮洲くん、浮洲くん!しっかりして。私がついているから大丈夫よ」


久子の胸の中でムニャムニャ


朦朧とした意識の中で柔らかい胸を感じていく


回りの雪は次第に降りやんでくる。


「ねぇ浮洲くん起きて。目を醒ましてちょうだい」


雪のやむのを浮洲と久子は待ち眠ってしまった。


「ふたりで抱き合いながら雪のやむのを待っていたの。ロマンチックな恋する二人ですものね。えへへッ、白い恋人さんね」


ロマンチックな思いをした久子が最初に目を覚ました。


浮洲にオッパイをムギュと力揉まれ痛くて目が開いたのだ。


「痛ぁ~い!もうっなにするの!おいたしたらいけません」


メッ!


バシッ!


胸の痛みから平手でホッペを叩いてしまった。


驚いたのはネボケマナコな浮洲である。


ハッとして我に返える。


「いきなりなにするんだぁ~痛いなあ」


ヒリヒリするホッペを擦りながら久子を睨むのであった。


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