6話:黄金の悲鳴
2026.01.10 21:46〜
お話を少し書き直しました。
ミリアの問いに応えるかのように、突如、洞穴の地面が猛烈に波打った。
「っ!?」
轟音と共に、出口も岩壁も脆く崩れ落ちていく。土煙が晴れた先、そこにあったのは、もはや洞穴などという生易しい場所ではなかった。
そこは、不気味な輝きを放つ巨大な「施設」だった。
壁面を這い回るのは、無数の真鍮の配管と、拍動を繰り返す巨大な鉄塊。それは機械という単純な言葉では言い表せない。生き物の内臓を無理やり鉄で継ぎ接ぎ(つぎはぎ)したような、禍々しい「化け物」の姿をしていた。
ミリアはその圧倒的な醜悪さを目の当たりにし、腰を抜かして愕然とした。
「……私はラーム。かつて君たちが『神』と呼び、そして今や『燃料』として飼いならされている、残骸だ」
神? 燃料? 漆黒の青年が何を言っているのか、ミリアには理解できなかった。
すると次の瞬間、施設全体が悲鳴のような金属音を上げる。
配管が狂ったように波打ち、逃げ場を失った魂が叫んでいるような異音が鳴り響いた。刹那、ラームは肺を抉られたかのように胸を押さえ、その場に激しく倒れ込んだ。
「あ……っ、ああぁ……っ!!」
「危ない……!」
化け物だという恐怖も忘れ、ミリアは倒れ込む彼を夢中で抱き抱えた。
地面が激しく揺れるたびに、ラームは喉をかき毟り、苦悶に顔を歪める。彼の痛みと、この巨大な機械は完全にリンクしているようだった。
ラームは震える手で、ミリアの肩を必死に押し返した。
「逃げろ……っ! ミリア……。今夜、君に会えて、本当によかった……」
「え……? 何で、私の名を……」
ラームは苦しみに耐えながら、最後に一度だけ、慈しむように優しく微笑んだ。
次の瞬間、彼の手のひらから視界を焼き切るほどの純白の光が溢れ出す。暴力的なまでの奔流に包まれ、ミリアの意識は一瞬で白濁した。
遠のく意識の端で、重い鉄の扉が幾重にも閉ざされるような音が聞こえた気がした。
「……っ!!」
ミリアは跳ね起きるようにして目を開けた。
そこは、自分の部屋のベッドの上だった。窓の外では、夜明け前の薄暗い青が部屋を支配している。心臓が耳のすぐ横で鳴っているかのように、激しく打っている。
「……夢……?」
漆黒の青年。黄金の涙。そして、あの禍々しい機械の心臓。
全てがあまりに鮮明で、けれど到底信じたくない光景。
あれは、追い詰められた自分が見た最悪の悪夢だったのだ――。ミリアは震える手でシーツを握りしめ、自分に言い聞かせるように何度も呟いた。




