1章 弟子 出会い
「えー!じゃあ私今クエスト受注できないんですか!!?」
昼夜問わず騒がしいギルドの中で、一際大きな声が響く。
人族、獣人族、エルフ族、ドワーフ族、多種多様な種族で溢れ、喧騒としたギルドが一瞬の内に静寂に包みこまれた。
皆の視線は、その声を上げた主へと集まる。
「アナさんっっ声が大きいですよっっ、皆さんが一斉にアナさんの方を見てますよっっ」
綺麗な亜麻色の髪を1つに結んだ女性、ギルドの受付嬢のリーナが、慌てて彼女の口に手を当て、声の入り口を塞ぐ。
んー!んー!と抵抗する彼女だったが、すぐに自分がギルド中の視線を集めていたことに気づいた。
するとすぐに、その顔が羞恥の色に染まった。
獣人族特有の犬の様な可愛らしい耳が、上下左右ピクピクと動く。
「ごめんなさいぃ、、、」
ギルド中の視線を集めた獣人の少女、アナはみるみる内に小さくなっている。
シュンとしているアナを見て、リーナはほっと肩を撫で下ろした。
「もう一度説明しますから、よく聞いてください。
私たちのギルド永遠の光では、新人冒険者は、許可なく1人でクエストに行く事を禁じてます。
慣れない土地や環境で、あなた方、新人冒険者が命を無くす事は少なくありません。
これはギルドの方針、決定になります。
これに従えない方はクエストを受理致しません。
並びに納得できない様でしたら、ギルドは脱退となります。」
淡々とされど丁寧に、リーナは彼女の仕事を全うする。
「でも、私村から出てきたばかりで、組んでくれる人なんていませんよ、、せっかく村から出て、憧れのギルドに入れたのに。。」
どんどん小さくなるアナには、獣人族の威厳が全く感じられない。
そんな哀れな子犬を見かねて、
「私の方から、ちゃんとした人に声をかけますよ。
その為の受付嬢でもあるんですから。」
受付嬢の話の途中から、アナの耳はビンビンに立っている。
「あっ、アッシュさーん!!今いいですか!?」
呼ばれた茶髪の青年は、小走りでリカの元に駆け寄る。腰には片手剣が携わっている。
「どうしたのリーナちゃん?
俺に何か用?」
気さくな青年アッシュは自分が呼ばれた理由を尋ねる。
「アッシュさん、この子は新しくギルドに入ったアナさんです。
彼女はまだ新人で、1人でクエストに行かせられないのですが、アッシュさんにご同行願えないかと思いまして。
ご都合はいかがですか?」
受付嬢は事情を説明した。
ただ、アッシュは困ったなぁ、と言った表情を見せながら苦笑いをしている。
「俺これから他の奴とクエスト行くんだわ。
申し訳ないけど同行は難しいね。。
ごめんね、リカちゃん。」
「そうでしたか、なら仕方ないです。
他の人を当たります。お気をつけて。」
Bランク冒険者かつ、人あたりの良い性格のアッシュなら任せられる、そう思った上の人選だった。
「アナちゃんもごめんね、、
初めまして俺の名前はアッシュ。これからなにか困った時には声かけてね。」
置いてきぼりだったアナは、話しかけられる心の準備をしていなかったらしく、慌てふためく。
「い、いえ、こちらこそ。お忙しい中ごめんなさいでした!
アナです!!よろしくお願いします!」
微笑ましい少女を見て、アッシュの口元が自然と緩む。
すると、アッシュは何か閃いた様子でポンっと両の手から音を出す。
「そういえば、そろそろユキが帰ってくるんじゃないかな。
あいつに話したクエストは、最近のやつだし。
あっほら、噂をすればなんとやら」
彼はギルドの出入り口の人影を指差した。
「おかえりー、ユキ。ちょうど良かった。ちょっと頼みたいことがあって、こちら新人の、ぐはぁっっ」
アナを紹介しようと、目を逸らした瞬間。
最後まで言い終わる事なく、アッシュは何やら衝撃に襲われ、吹っ飛ばされるた。
倒れる、彼の近くには木材が散らばっている。
アッシュは何が起きたのか理解できないまま、困惑の表情を浮かべていた。
「ユキさん、おかえりなさい。
あと、イスはギルドの備品です。
投げないでください。あとで請求書送りますね。」
受付嬢は、いつも通り労いの言葉をかける。
「ただいま。請求書の宛名はアッシュで頼む。」
すらっとした背丈。腰には、一本の刀。
人族では珍しい漆黒の髪を持つ青年ユキは、いけしゃあしゃあと返答する。
「ふざけんなユキっ!イスをぶん投げたお前だろ!
何が起こったのか、わかんなかったぞ!!」
被害者の青年はご立腹の様子だ。
「何が起こったのか、わからない様だから、俺が説明してやるよ。」
「俺の目にはイスめがけて、お前が勝手に吹っ飛んだ様にしか見えなったぞ。
奇行か?最近よく寝れてないんじゃないのか。??」
周りの目からは、彼がわざと挑発している様にしか見えない。
だが、茶髪の青年と黒髪の青年の言い合いはこのギルドでは日常茶飯事である。
誰も彼らを気に留めていない。
1人の新米冒険者を除いて。
ぴきぴきとアッシュの額から、血管が浮き出る。
「てめー、さてはあれだろ、。
今回も、ハズレだったんだろ。それで情報提供者の俺に八つ当たりをしてっっ、ぐはっ!」
やれやれ、といったポーズでユキから目を離した瞬間。
またも、謎の衝撃がアッシュを襲う。
「ユキさん、机の請求書も送りますね。」
受付嬢は淡々と述べる。
「ああ、宛先はアッシュでな。」
ユキも淡々と返す。
アナはそんな様子を傍観することしかできない。
1人被害者のアッシュの方からぶちっと、人から鳴ってはいけない音が鳴る。
「てめー!ユキ!
表でろ!ぶっ飛ばしてやる!!!」
「やめとけよ、椅子も机も避けられないお前じゃ相手にならん。鈍ったんじゃないか?」
アッシュの顔が赤く染まる。
すっかり冷静さを欠いたアッシュが手を腰の片手剣に伸ばす。
それを見たユキも、いつでも抜刀できる姿勢をとる。
「時雨、特殊武装かいほ」
「偽剣、特殊武装かいほ」
2人の声が重なるその刹那。
先ほどのギルドに響いた大きな声がまたも轟く。
「「喧嘩はだめです!!!」」
またも彼女はギルド中の視線を集める。
皆の視線の先には、獣人族の少女が拳を握り、ふるふると震えていた。
数秒後、自分が、1番の注目の的になってしまったことを自覚する。
アナは、羞恥のあまり、みるみる内に赤面、頭を抱えてうずくまってしまった。
アッシュもユキも、そんな彼女を見て、
バツの悪さを感じたのか、無言で各々武器を元にあった場所へ納めた。
「「ユキとアッシュの喧嘩を止めるなんて、やるじゃねぇか嬢ちゃん!!!」」
どこからともなくそんな声が通る。
「「俺らでもそうそうできないぞ!」」
「「そうだ、そうだ」」
ギルドのお調子者共は、2人の喧嘩を止めたアナに称賛の声を送る。
そんな称賛を受けるアナの表情は確認できないが、
どんどん心なしか彼女に背中は丸くなっている。
「なんか変に傷を負った気分だ。
それでアッシュ、頼みたいことってのはなんだったんだよ、、」
はぁ、ユキの口からため息が漏れる。
「全部お前のせいだわ。全く。
今絶賛、羞恥心に駆られているあの子。アナちゃんって言うんだけど、新人だからまだ、1人でクエストいけないから、ユキに同行してもらおうと思って。」
「私からもお願いします。」
リーナも同意する様に頷く。
「「え、嫌だけど。」」
彼は、普通に断った。
初めての執筆作品になります!!
ぜひ温かい目で読んでいただければ幸いです!!
皆さんのコメント等あれば嬉しいです!
よろしくお願いします!




