隣の魔法学園 ライオンの歯
我が家の隣りには魔法学園がある。
波長の合う学生や物が、我がマクルシファー家にやって来る。
今日、やって来た学生は変わった杖を持っていた。
彼の才能に、杖の力が追いついていない。惜しい!
弄らせて貰おうと思っていたら、自力で調整してますね。ちょっと雑だけど・・・
あれじゃ、危ないからきれいにしましょうか。
マクルシファーさんから、アルバイトの依頼が来た。なんでも今回はたんぽぽの綿毛の収穫だそうだ。
実は、園芸部の温室が破れて綿毛がたくさん飛んだのだ。もしかしたらそれが、原因かも知れないが、綿毛は結構飛ぶから言い訳も出来る。
それより収穫って言う位、育ったのならこつを教えて貰いたいような・・・
ただ、不思議なことに条件がある。戦える者をと言う希望だ。
モグラでも出るのか?まぁいい!
それなら、アルバートだな。
アルバートを呼んで話をすると、隣りの庭を見てやりますと元気な返事が返って来た。
◇◇◇
僕は剣術道場の末っ子だ。才能は全部、上の子供が貰って僕にはなにも残ってなかった。
僕にあるのは劍術愛だ。なんの因果が僕は剣術が好きなのだ。好きなのに上達しない。弱い。
それがどういう理由か、王都の魔法学院からお誘いの手紙が来た。
父さんはそれを見て少しだけ悩んだ。もっと悩んで欲しかった。
それから僕を呼んで
「入学しろ」と言った。
僕は
「無理だろ。魔法なんて、この家でも親戚でも、そうだ。この町でも話題になったことがないんだよ。無理だ。全然知らない!」と言った。実際そうだよな!
そしたら、
「大丈夫だ。知らなくても魔法だから」って自信一杯の答えが返って来た。
「魔法だからってとか。そう言う問題じゃない!」と言うと
「そう、問題じゃない」と返って来た。
だからぁぁ無理だ。負けた。
父さんは笑って
「決まりだな」と言って首を傾げて何か考えた。
それからパンを手を叩いて
「魔法と言ったら杖だろう」と言って、傘立てに指してある練習用の木刀を一本取ると先っちょを切り落とした。
「これを杖にしてがんばれ」
父さんのこの言葉を聞いて、道場にいるものが拍手した。
僕は、町の駅まで馬車で送って貰い、そこから乗合馬車で学園に行った。
隣りの家庭菜園の話が決まった後、追加でこんな注意書きが来た。
【たんぽぽが群がって来ますので、玄関に回って挨拶するより、すぐに戦って下さい】
意味がまったくわからなかったが、僕はいつもの動きやすい服で門から、なかに入った。
「へ?」と間抜けな声が出た。
広大な平地が広がってなんて認識する前にたんぽぽが飛びかかって来た。歯がカチカチ鳴る音がした。
なんで、動くの? なんで歯? 葉だよね! ライオン? 爪? ウォーとか唸ってるし!
いろいろな思いが頭を行ったり来たりしたが、僕の杖はたんぽぽを倒して行った。
一度は杖の先をたんぽぽに噛まれた。噛み砕かれたのか、先がささくれだった。
後で綺麗に磨かなきゃ。
倒しても倒してもたんぽぽは減らない。だけどいつのまにか僕は足止めの魔法を使えるようになっていた。
気がついたのは二体同時にかかって来た時だ。一体を止めて一体を倒した。
そして残った一体を倒した。
門を入ってすぐに戦闘が始まったから、僕は門を背に戦っていた。だが、だんだん前に出てしまった。
気がついた時、すっかり囲まれていたが、なんとなく後ろの動きを感じ取れて、倒す順番がわかった。
僕は、余計なことが全部、頭から抜けてたんぽぽと僕だけの世界で杖を振るった。
世界に色が戻った。僕だけがいた。それと足元に綿毛が山盛りになった背負かごが二つ。
僕は一つを背負い、一つを抱えた。玄関に行って呼び鈴を鳴らした。
ドアが開いた。この変な依頼をした人って想像した人とは違うのが立っていた。
「学園から来ました。これが収穫したものです」と言うと
「あぁ、よくやってくれたのね」と僕が差し出した書類に署名したが、すごく速い。
返された書類をすぐに学園に送った。学園に戻ったら残高を確認だ。
その人、マクルシファーさんは僕の杖を見て
「おや、噛み付かれたね。それは危ない、ちょっといいかい」と手を振った。
僕が返事をする前に杖の先はきれいになった。
僕は、さっきまで戦っていた広い平地を見ながら門まで歩いた。
門を出る時に振り返った。
「あへ? これ・・・」となった。だって廊下の窓から見える家庭菜園がそこにあったから・・・
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