月と地球
ありふれた絶望の中で夢をみる
それは何処か儚げで寂しい真夜中の世界
そっと息を深く吸い込み、ゆっくりと吐き出す
瞼の裏の暗闇が気がつくと色鮮やかな青空を
目一杯両手を広げて飛翔する
山も谷も川もない空は自由である
自由であるが、絶望が空を覆う
真っ暗な虚構の世界の檻の中で与えられた自由を楽しむ
そんな私をポツンと、檻の外で佇む幼子が見つめる
痛々しい痣が全身に散りばめられていても
その瞳はキラキラと輝く
その幼子は永遠にも近い時を絶望の中で旅をする
例え青い瞳の青年が檻の中にいたとしても
幼子は羨ましいのである
とてものんびりとした瞬きを繰り返しながら
夜の世界を幼子は見つめる
じっと目をまん丸にして森の木陰に淡い色を添える
瞳を閉じる夜は風の音に耳を澄ませる
空を超えた届かない世界にいる幼子を青年は羨ましく思い
幼子は色鮮やかな瞳を持つ青年に憧れる
決して交わることの無い2人を見えない糸が繋ぎ止める
幼子は青年の瞳が段々と黒く滲む姿にそっと寄り添う
時々泣き崩れる青年に声を掛けたくても
檻の中に幼子の声は届かない
やっと笑う顔が見れたと思ったら
次の日には爪が割れて血が滲む
檻の外をぐるぐると心配そうに駆け回る幼子の足音が青年に勇気を与える。ありふれた絶望の中で夢をみる