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不思議なエルフの村

作者: SS野郎

以前別の所で書いてたやつをリメイク。

私は今森の中をさまよっていた。半月ほど前、ある村で


「ここから西にある森の奥に変わったエルフ族が住んでいるらしい」


という話を聞き、好奇心に駆られて森の中へと入っていったせいだ。


何でもすごく変わった連中で、閉鎖的な性格で他所との交流が全くと言っていいほど無いらしい。

この大陸には他にもエルフは住んでおり、多少偉そうな感じで他種族に接するところはあるが、閉鎖的な所は全く無いのでそのエルフ族はかなり変わっているようだ。


こういう話を聞くと居ても立ってもいられなくなる性格なのが辛い。



今日もここで野宿するか…と思ったその時、森の奥の方から声が聞こえてきた。


「あら?旅のお方ですか?こんな森の奥まで珍しい」


声の主を見ると、美しいエルフ族の女性が立っていた。話に聞いていた変わったエルフ族だろうか…

彼女はニーナと名乗った。


ニーナの話によると少し進むと村らしい。

彼女に付いていくと小さな村へとたどり着いた。

理由は分からないが少し違和感を感じたものの、特におかしなところはない普通の村のようだ。


村の住人は私を見ると珍しそうに集まって来た。

どうやら村の外から人が来るのは50年ぶりぐらいらしい。


「旅の方、よろしければ外の話を聞かせてもらえないだろうか」


そういうわけで、村中の人が集まって宴会となった。


大人も子供も興味深そうに私の話を聞いている。よほど娯楽が無いらしい。


そして誰も彼も酒を飲みまくって陽気になっている。

子供も飲んでいるようだが、エルフ族なので見た目は子供でも年齢は私より上なんだろう。

かなり閉鎖的な村だと聞いていたがそんな事はなさそうだ。


そして夜も更け宴はお開きになった。

彼らに比べると少ない量しか飲んでいないが、私もかなり酔った。

ニーナの家へと案内され泊まる事になった。


…次の日の朝…


二日酔いのような状態ではあるが、腹が減ったのでカバンからパンを出して食べていると、ニーナが珍しそうに見ているのに気が付いた。


「変わった物を食べるんですね」

「パンって言うんだけど食べてみるか?」


彼女は恐々パンを口に入れたがむせて吐き出してしまった。


「すいません、せっかく頂いたのに…」


そんなニーナの様子を見ていて、昨日の宴会の席では村の人は皆酒だけ飲んでいたがおつまみなどは全く口にしていなかった事を思い出した。

そして彼女にそのことを聞くと、驚くべきことが判明した。


彼女たちの主食は酒なのだ。

というより、酒以外の物は全く口にできず、森にある木の実などを酒にしてそれを飲むこと以外では栄養を取れない体質らしい。

子供でも例外ではなく、そして彼女たちは全く酔わないそうだ。

私が昨日の宴会で酔ったのを見て不思議そうにしてたのはそれが理由だそうだ。


その話を聞いて、村に入った時の違和感の理由がわかった。

酒樽は異様に多いのに、それ以外の食料を保存している様子が全く無かったからだ。

どこの家にも小さな酒蔵並みの酒樽が置かれている一方、狩りで狩った動物などが一切なかった。


私が驚いて呆然としていると彼女は朝食を食べ始めた。

いや正確には飲み始めた、だが…


「朝はあまり飲めないんですよね…」


そう言う彼女はまるで水でも飲むかのようにすごい勢いで酒を飲んでいる。

酒に強く大好きなドワーフでもこんなペースでこの量は飲めまい…

もちろん人間である私はこんな飲み方をしたら1か月もせずに身体を壊すであろう。


「朝はみんなこれぐらい飲むの?」

「私は小食な方ですね…皆さんもっと飲みますよ」


ニーナは恐ろしい事を平然と言った。


その後村をうろうろしていると、皆あれだけ飲んでるのに全く酔わずに仕事しているのが見えた。

村の年寄りが酒の仕込み、若い者は森の中へと木の実を取りに行くのが主な仕事だ。


昼になると、皆で村の中央に集まって昼食だ。

ニーナが朝食で飲んでいたのよりはるかに多い量を皆すごいペースで飲んでいる…


「さてあまり飲むと昼からの仕事に差し障りあるからな。腹八分目だ」


あの量で八分目とかとても信じられない…



まだ村に来て1日だが、他の種族がこの村で生きていけない理由が分かった。


さらに彼らが村から出ない理由もわかった。

私がここに来るまでの感覚からするとまっすぐ来たとしても他の村まで10日以上かかるが、その間に飲む酒を持ち歩いてなど行けないからだ。

彼らの飲むペースからすると村にある樽20本ぐらいではとても足りない。当然抱えていける量ではない。

馬車で運ぼうにもこう木が密集している森では不可能だ。

彼らはここで酒を造り続けるしかないのだ…


仮に他の種族の住んでいる村に行けたとしても、食料になる酒の量が足りなさ過ぎる。

おそらく普通の規模の村にある酒など1週間もしないうちに飲みつくしてしまうだろう。


「閉鎖的にならざるを得ないのか…」


陽気で人懐っこく優しい村の人々を見ながら、私は村から出る事を決心した。



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