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隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして  作者: 内村一樹
第6章 黄色い水仙

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第58話 込められた意味

 5日の会議かいぎから1週間しゅうかん()の今日、3月12日にあらためて生徒会室せいとかいしつに集められた私達は、新生徒会しんせいとかいとして初めに行う仕事について説明を受けた。

 具体的ぐたいてきに言えば、卒業式そつぎょうしきについてだね。


 私にとっては、えん所縁ゆかりもない先輩せんぱい達の卒業そつぎょうだから、正直、あんまり興味きょうみないけどね。

 でも、2年後の私も同じように卒業そつぎょうすることになるんだと思うと、他人事ひとごとってワケにもいかないのかな?


 そんな卒業式そつぎょうしき説明せつめいと一緒に、新1年生の入学式にゅうがくしき新年度しんねんど早々(そうそう)予定よていされてる全校ぜんこう集会(しゅうかい)についても、軽く説明せつめいを受けた。


 ホント、生徒会せいとかいっていそがしいんだね。

 授業じゅぎょう明けの放課後ほうかごに、延々(えんえん)事務的じむてき説明せつめいを受けなくちゃいけないのは、かなりしんどい。

 でもまぁ、引き受けたからにはサボる訳にもいかないし。

 そんなことを考えながらも、私は会議中かいぎちゅう古川ふるかわ先輩が板書ばんしょした内容ないようを、ことこまかにノートに書きうつしていく。


 もうスマホで写真しゃしんって、その画像がぞうデータを管理かんりするんじゃだめなワケ?

「スーミィ、おつかれ様! どう? 書記しょきのお仕事、大変たいへん?」

「見て分かるでしょ? かなり大変たいへん。なんだったら、手伝ってくれてもいいんだけど?」

「えぇ~? ワタシとスーミィでバラバラにノートとっても、あんまり意味いみなくない? それに、スーミィって情報じょうほう整理せいりするの得意とくいだし、適任てきにんだと思うんだよねぇ」

他人事ひとごとだと思って……」

「そんなことないよぉ~。ほら、スーミィちゃん。これは私達からのし入れ。これからもよろしくねぇ」


 私が花楓かえでに対する愚痴ぐちつぶやいたその時、花楓かえでうしろからニコニコと歩いてきた松本まつもと先輩が、抹茶まっちゃオレを差し出してきた。

「あ、ありがとうございます」

「良いのよぉ。実際じっさい書記しょきって大変たいへんそうだものねぇ。あ、みんなの分もあるから、安心してねぇ」


 そう言って、かばんの中から次々(つぎつぎ)と飲み物を取り出す松本まつもと先輩。

 会議かいぎが終わってすぐに、かばんを持って生徒会室せいとかいしつを出て行ったと思ってたけど、そういうコトだったんだ。


 みんな各々(おのおの)で飲み物をえらび始めたのを横目よこめに、私は渡された抹茶まっちゃオレを口にする。

 口中に広がった甘味あまみのおかげかな、ちょっとだけ元気が出たような気がした。

「よし、あと少し頑張るかなぁ」


 自分を鼓舞こぶするために小さくつぶやいてみた私のとなりに、リンゴジュースを手にしたトモミンがやってくる。

「スーミィ。何か手伝おうか?」

「ううん。大丈夫だよ。板書ばんしょを書きうつすだけだから、人数いてもあんまり意味ないしね」

「そっか」

「うん。だから、先に帰ってても良いよ。山田が待ってるでしょ?」

「そ、そう、だね」


 一瞬いっしゅんで顔を赤らめるトモミンは、かばんを手にしてゆっくりと立ち上がった。

 そんな様子を見てたのかは分からないけど、私の対面たいめんすわってスマホをいじってた大内おおうちが、すっくと立ちあがる。


「それじゃ俺、部活ぶかつあるんで帰りますね」

「うん、おつかれ様ぁ~」

 体育たいいく委員長いいんちょう大内おおうちは、あまり周りの生徒会せいとかいメンバーと話をしてるところを見ない。

 たまに見るのは、真面目まじめ副会長ふくかいちょう樋口ひぐち先輩と話してるところくらいかな。


 あれ? そう言えば、樋口ひぐち先輩がいないな。

 いつの間にか帰っちゃったみたいだね。

 板書ばんしょを書き写すことに集中しゅうちゅうしてたせいで、見落としてたみたい。

 そういえば、樋口ひぐち先輩ともあんまり話したことないなぁ。

 気のせいかもしれないけど、この2人とそれ以外のメンバーの間には、ちょっとしたみぞがあるような気がする。

 決定的けっていてき亀裂きれつって程じゃないけど、相容あいいれないって感じかな。


 まぁ、何かマズいことがあれば花楓かえでが教えてくれるよね。

 それ以外の、単純たんじゅん人間にんげん関係かんけいのトラブルとかなら、無理むりかかわる必要ないと思うし。


 大内おおうち生徒会室せいとかいしつを出て行って、それに続くようにトモミンも部屋へやを後にした。

 わざわざ深々(ふかぶか)と頭を下げて退室たいしつするところが、トモミンらしいよね。


 そうして、生徒会室せいとかいしつに残ってるのは、私と花楓かえで松本まつもと先輩と古川ふるかわ先輩、そして大塚おおつか先輩だけになった。

 と、そんなタイミングを見計らってたかのように、大塚おおつか先輩が口を開く。

「少し気になっただけなんだけど、黒光くろみつさんと大心池おごろちさん、それにみなみさんのかばんについてるそのストラップ、もしかしておそろいなのかい?」


 何の脈絡みゃくらくもなく問いかけられた私達は、少しほうけた後、かお見合みあわせる。

 と、私達が返事へんじをするよりも先に、松本まつもと先輩が両手をむねの前で合わせながら告げた。

「あぁ~、それ、私も気になってたぁ。おそろいだよねぇ。可愛かわいお花のストラップ」

「あ、言われてみれば確かにおそろいですね。気づきませんでした」


 なぜかうれしそうな松本まつもと先輩と、気づいてなかったらしい古川ふるかわ先輩。

 まさかめられるなんて思ってなかったから、ちょっとれるね。

 なんて考えてたら、花楓かえで自慢じまんするようにちょっとむねりながら言った。


「このストラップは、スーミィの自信じしん作なんですよ?」

「ちょ、花楓かえで?」

「まぁまぁ、スーミィちゃん、ストラップを作れるのぉ?」

「へぇ、それはすごいなぁ」

「いや、まぁ、そんなすごいことじゃないですよ」

「このお花のデザインって、自分で考えたの?」

「え? まぁ、ネットで写真しゃしんさがして、良いかんじに作ってみただけですよ」


 思ったよりもこの話題わだいに食いついてきた松本まつもと先輩が、私のかばんについてるストラップをマジマジと見つめ始めた。

「これって、水仙すいせんだよねぇ? 私も結構けっこう好きなんだぁ」

「そうなんですね。まぁ、確かに。私も写真しゃしんを見て良いと思ったから、作ったんですけどね」

水仙すいせんか……花言葉はなことばとかあるのかな?」


 私が松本まつもと先輩に圧倒あっとうされてる間に、古川ふるかわ先輩が水仙すいせん花言葉はなことば調しらべ始めた。

 正直、花言葉はなことば意味いみを調べるなんて、して欲しくないな。


 だって、まるで私が、何か意味を込めておくったみたいに思われちゃう気がしない?

 まぁ、あながち間違まちがっても無いんだけどさ。

 わざわざおくり物に思いを込めてるってことは、言葉で伝えることができなかった思いが込められてるってコトなのに。

 あばかれるのはなんか、ちょっといやだな。


 そこまで考えた私は、ふと思った。


 あばかれるのがいや

 それってつまり、何かをかくそうとしてたってコト?


 それはきっと、小さな違和感いわかん

 だけど、その違和感いわかんは私の喉元のどもとくすぶって、居心地いごこちわるさを与えてくる。


 得体えたいのしれない居心地いごこちわるさに、私が大きくいきみこんだ時。

 検索けんさくを終えたらしい古川ふるかわ先輩が、スマホの画面がめんを読み上げ始める。

「えっと、黄色きいろ水仙すいせん花言葉はなことばは、『私のもとへ帰って』とか『もう一度(あい)して欲しい』って意味があるらしいよ」

「ロマンティックねぇ~。素敵すてきだわ」

「いや、別にそういう意味いみを込めたわけじゃ……」


 無いですからね。

 そう言おうとした私の言葉ことばは、突然とつぜん部屋の中にひびいた音にかき消された。


 いきおいよく立ち上がった大塚おおつか先輩。

 そのせいでゆかたおれた椅子いすが、かわいたおとらしたんだ。


 何事なにごとかと、彼に視線しせんを向けた私達に対して、大塚おおつか先輩はうつむいたまま小さく告げた。

「すまない。今日はもう帰る。戸締とじまりだけ、ちゃんとしておいてくれないかな」


 それだけ言った彼は、私達の返事へんじなんて聞かずに、け足で生徒会室せいとかいしつから出て行ってしまった。

 明らかに様子がおかしいよね。

 唖然あぜんとしてる古川ふるかわ先輩と、心配しんぱいそうな松本まつもと先輩。

 そんな2人を横目よこめに、花楓かえで事情じじょうたずねようとした私は、彼女の様子を見てさらおどろいてしまった。


 さっきまで楽しそうにしてた花楓かえでが、何かに打ちのめされてしまったように、あおざめてる。

 しまいには、なみだまでながし始めた彼女かのじょの様子に、流石さすが古川ふるかわ先輩たちも異変いへんに気づくよね。


 心配しんぱいする松本まつもと先輩と古川ふるかわ先輩に、何も答えなかった花楓かえでは、小さくポツリと体調たいちょうわるいとだけげ、そのまま帰宅きたくしてしまう。

 そんな彼女を、私はただ見送みおくるしかできなかった。

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