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隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして  作者: 内村一樹
第6章 黄色い水仙

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第57話 その先にあるモノ

 生徒会せいとかいに入ることになった私達3人は、新年度しんねんどに向けた準備としょうして、召集しょうしゅうされることになった。

 3月5日の今日がその初日で、来週らいしゅう木曜日もくようびにも、集まらないといけないらしい。


 やることと言えば、放課後ほうかご生徒会室せいとかいしつに集まって、前任者ぜんにんしゃから引継ひきつぎを受けることくらい。

 書記補しょきほの私は、会議中かいぎちゅう板書ばんしょ筆頭ひっとうに、会議かいぎ議事録ぎじろく作成さくせいとか、書類しょるい管理かんりまかされることになるらしい。


面倒めんどうそうだとは思ってたけど、予想よそう以上いじょうですね」

「ははは……まぁ、書記しょきってこんなもんだと、俺は思うけどね」

 そう言って私のとなり苦笑にがわらいを浮かべているのは、選挙せんきょ書記しょき当選とうせんした先輩せんぱい古川ふるかわ直哉なおやだ。


 なんていうか、本当に平凡へいぼんな男子生徒って印象いんしょうしかいだけない、普通ふつうの男子。

 いや、失礼しつれいなこと言ってるのは分かるけど、でも、それ以上の印象いんしょう正直しょうじきかんでこないんだよね。

 まぁ、書記しょきって役職やくしょく適任てきにんだとは思うけど。


古川ふるかわ先輩せんぱいは去年、書記補しょきほだったんですか?」

「そうだよ。本当なら例年れいねん、2年生で書記補しょきほ経験けいけんした生徒が、次の年に書記しょき立候補りっこうほするからね」

「なるほど、だから今年の選挙せんきょでも、書記しょき立候補りっこうほしてた人は古川ふるかわ先輩だけだったんですね。あれ? でも、大塚おおつか先輩って確か、2年生で書記しょきでしたよね?」

大塚おおつか君はまぁ、特例とくれいだよ。彼は普通ふつうじゃない」

「そうなんですか」

「そうなんだよ」


 まぁたしかに、通例つうれいなら書記補しょきほから書記しょきになるはずなのに、全く未経験みけいけんの2年生がいきなり書記しょき立候補りっこうほしたってことだよね?

 それは確かに、普通ふつうじゃない気がする。

 って言うか、良くそれで当選とうせんしたなぁ。


 なんてことを古川ふるかわ先輩に言うのもあれだから、私は話をらすことにした。

「てっきり、書記しょきなんて誰もなりたくないからかと思ってました」

「あはは、大心池おごろちさんは手厳てきびしいなぁ。まぁ、その可能性かのうせい否定ひていできないけどね。実際じっさい面倒めんどうでしょ? このファイルを管理かんりするの」

「まだ何もしてないですけど、面倒めんどうそうだってことは分かります」

面倒めんどうだけどぉ、大事だいじなお仕事しごとなのよぉ~」


 つくえの上の分厚ぶあついファイルをペラペラとめくりながらしゃべってた私と古川ふるかわ先輩の間に、松本まつもと先輩がり込んでくる。

 そんな彼女の後ろについて回るように、会計かいけいのトモミンも私達の所にやって来た。


会計かいけい引継ひきつぎは終わった? トモミン」

「うん。一通ひととおりは松本まつもと先輩に教えてもらったよ」

「あらぁ? もしかして、みなみさん、トモミンって呼ばれてるのぉ?」

「あ、はい。あだ名です」

「良いわねぇ~。それじゃあ今日から、私もトモミンって呼ぼうかなぁ~」

「ふぇ!? あ、えっと、ありがとうございます」

「どうしておれいするのぉ?」

「いえ、別にそんな深い意味いみはないですよ!?」


 松本まつもと先輩は、なぜかれてるトモミンの様子を楽しんでるみたい。

 気持ちは分かるけど、なんかズルいな。

 なんてことを考えてると、古川ふるかわ先輩が感心かんしんしたようにつぶやいた。


「さすが松本まつもとだな。もう後輩こうはい仲良なかよくなってるし」

「ふふふ。そんなすごいことじゃないと思うけど。みんない子だから、普通ふつうせっしてるだけで仲良なかよくなれるのよぉ」

「それは松本まつもとだからだろ? 俺が同じようにしても、そんなすぐには仲良なかよくなれないし」

「そうかしらぁ? ねぇ須美すみちゃん。どう思う?」


 不意ふいに渡された松本まつもと先輩からのパス。

 なぜ私に投げた? って疑問ぎもんげ返そうとした私は、彼女の目が悪戯いたずらっぽく笑ってるのを見て取った。

「そうですね、同じようにって言うなら、古川ふるかわ先輩にはおっとり具合ぐあいが足りないと思います」

「おっとり具合ぐあい……って、なんだ?」

松本まつもと先輩みたいに、おっとりとした雰囲気ふんいきを出すんですよ。そしたらきっと、相手も安心して心を開いてくれると思いますよ」

「ど、どうやったら出来るんだよ、そんなこと」

「もっと、こう、語尾ごびを伸ばす感じ?」

「こ、こんな感じかぁ~? って、何やらせてんだよ!」

「上手よぉ、古川ふるかわ君」


 しくも松本まつもと先輩のマネをしてしまった古川ふるかわ先輩が、ずかしそうな表情ひょうじょうを浮かべてる。

 そんな様子ようす面白おもしろくないワケが無いよね。

 思わず笑ってしまった私と松本まつもと先輩、そしてトモミンを見比べて、古川ふるかわ先輩が苦笑にがわらいをしながらつぶやいた。

「完全にからかってるよな? これ」

「そんなこと、無いですって」


 引継ひきつぎの後に、そんなくだらない雑談ざつだんわした私達は、もう下校げこう時間が近いとのことで生徒会室せいとかいしつを出た。

 大塚おおつか先輩がとびらかぎを閉めるのを待ちながら、そう言えば花楓かえでがやけに大人しいことに気が付く。


 なんとなく彼女の様子を横目よこめで見て見ると、何やらノートに書き込んだ内容ないようをじっくりと見てるみたい。

 っと、様子をうかがってる私に気が付いたのか、花楓かえでがすぐに顔を上げて、声を掛けてきた。


「どうかしたスーミィ?」

「いや、引継ひきつぎは上手く行ったのかなって思って」

「うん。大丈夫だよ。まぁ、文化祭ぶんかさいはまだまだ先だから、あせる必要はないんだけどね。色々(いろいろ)とやってみたいことがあるから。ちょっと考えてただけだよ」


 満面まんめんの笑みでそう言う花楓かえで

 彼女が文化ぶんか委員長いいんちょうになったと言うことは、来年らいねん文化祭ぶんかさいは、きっと前よりも楽しくなる気がする。

 だって、昨年きょねん文化祭ぶんかさいをしゃぶり尽くすぐらい楽しんでたワケだし。

 そんな委員長いいんちょう運営うんえいする文化祭ぶんかさいが、つまらないわけないよね。


 なんとなく、この先の行事ぎょうじ期待きたいいだき始めてた私が、かたけたかばんをかけ直したその時。

 とびらかぎえた大塚おおつか先輩が、不意ふいに口を開いた。


「あれ……? それは」


 そうつぶやいて足を止めた大塚おおつか先輩。

 当然とうぜん、私をふくめた生徒会せいとかいメンバーの全員が、彼に視線しせんそそぐ。


 その状況じょうきょうに気が付いてわれに返ったのか、何でも無いとだけげた彼は、そのまま職員室しょくいんしつに向かって歩き出した。

 私達も、とく追及ついきゅうすることもなく彼の後について歩く。


 だけどこの時、私は少しだけ小さな違和感いわかんを持ったんだ。


 みんな視線しせんそそがれながら、大塚おおつか先輩せんぱい視線しせんそそいでいた物。

 正確せいかくに彼が何を見てたのかは分からない。

 だけど、なんでか私の方に向けられてたように思った。


 もっと言えば、私のかばんを、彼は見ていた気がする。


 気のせいだよね?

 彼が私のかばんを見ていたとしても、それは別に悪いことじゃないし。

 たまたま、視線しせんかさなってただけなのかもしれない。


 実際じっさい、そうなんだ。

 彼は私のかばんについてたストラップを見て、その先にあるモノを見てたんだから。


 その先にあるモノ。

 それは、過去カコ

 彼の持ってたはずの過去カコ記憶きおくを、この時の彼は、見ようとしてたんだ。

 このことに私が気が付くのは、少し後のことになる。

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