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隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして  作者: 内村一樹
第6章 黄色い水仙

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第56話 いつもとちょっと違う

文化ぶんか委員長いいんちょうかぁ」

 教室きょうしつから下駄箱げたばこまでの廊下ろうかで、花楓かえでが小さな声をこぼす。

 内容ないようからさっするに、さっきの話についてなやんでるみたい。


 正直しょうじき、話を聞く前までは、なやんだりするまでもなくことわるものだと思ってたから、意外いがいだよね。

 それだけ大塚おおつか先輩せんぱいの切りふだいたってコトかな。


花楓かえでちゃん、引き受けないの?」

「う~ん、なやましいよね。現状は、引き受けるか引き受けないか半々(はんはん)ってところかな」

 ちょっとひかえめに問いかけたトモミンに対して、肩をすくめながらこたえる花楓かえで

 トモミンは、どう考えてるのかな?

 松本まつもと先輩せんぱいの話を聞いてた時、ちょっと興味きょうみがありそうに見えたけど。

 もしかしたら、結構けっこう乗り気だったりする?


 だとしたら、私とは違う考えってことになるかもね。


 私も松本まつもと先輩せんぱいの話を聞いて楽しそうだと思った。

 だけど、その話は理想りそうでしょ? とも思う。

 生徒会せいとかいには大塚おおつか先輩がるワケで、彼は花楓かえで保護ほごしようと動くはず。

 まぁ、それに関しては、花楓かえで本人とか私が保護ほごされることを拒否きょひすれば良いだけだけど、一緒いっしょ活動かつどうしていく関係かんけいきずいたまま、それをするのはむずかしい気がする。

 ようは、しがらみが出来ちゃうよね。


 それだけじゃなく、花楓かえでの力についても、色々(いろいろ)と考えなくちゃいけないことがえる可能性かのうせいは高いのは確実だ。

 事情じじょうを知ってる人が2人いるとはいえ、私達だけで完璧かんぺきにサポートできるとは思えないしね。


 なんて、私がどれだけ考えたところで、最終的さいしゅうてきさそいを受けるか決めるのは、花楓かえでだよね。

 多分だけどトモミンも、花楓かえでさそいをことわったら、同じようにことわるだろうし。


 考えながら歩いているうちに、いつの間に下駄箱げたばこ辿たどり着いた私達は、各々(おのおの)くつえる。

 そうして、昇降口しょうこうぐちから正門せいもんに向かって歩き出そうとしたところで、不意ふいに足を止めたトモミンが、背後はいごから声を掛けてくる。


「……私、花楓かえでちゃんとスーミィと一緒に、やってみたい!」


 そう言ったトモミンは、両手りょうてを強くにぎりしめたまま少しうつむいてる。

 きっと、こうして主張しゅちょうするために、廊下ろうかを歩きながら目一杯めいっぱい勇気ゆうきしぼったんだろうなぁ。


「スーミィ」

 意外いがい主張しゅちょうに私が目をうばわれてると、不意ふい花楓かえでが呼びかけてきた。

 花楓かえでからすれば、トモミンが勇気ゆうきを振りしぼ過程かていを、全部知ってるわけだもんね。

 それで、半々(はんはん)ってことなのかな?

 まぁ、そういうワケなら、私としても付き合うことに異論いろんはない。


「良いんじゃない? 色々(いろいろ)と大変そうではあるけど、楽しそうってのも事実じじつだし」

「そうだね。それじゃあ、満場一致まんじょういっちと言うことで、引き受けることにするよ!」

「ほ、ホント? 私の我儘わがままに合わせてるとかじゃ、ないよね?」

「考えすぎだって、トモミン」

「そうそう。ワタシは最初さいしょっからやってみたかったしね」

「さっき、半々(はんはん)とか言ってたくせに、良く言うよね」

「そ、それは、言葉のあやだよ」

「どこがよ!?」

「二人とも落ち着いて。それに、まだ確定かくていじゃないって、先輩せんぱいたちも言ってたし」

「それもそうだね。これで大塚おおつか先輩せんぱい落選らくせんしたら、かなり恥ずかしいよね」


 そんなことを言って笑ってた私達を余所よそに、時間じかんはどんどんと過ぎていく。

 選挙せんきょ期間きかんのこりが少なくなるにつれて、候補者こうほしゃたちの真剣しんけんさはしてるように見えた。


 そして、生徒会選挙の投票日がやってくる。


 結論けつろんから言ってしまえば、私達3人が先輩せんぱいたちの当選とうせんを心配するような事にはならなかった。

 大塚おおつか先輩も、松本まつもと先輩も、圧倒的あっとうてきひょう獲得かくとくして、それぞれが生徒会長せいとかいちょうふく生徒会長(せいとかいちょう)えらばれたんだ。


 それから、開票かいひょうが終わった後の放課後ほうかごに先生から呼び出された私達は、少し緊張きんちょうしながら職員室しょくいんしつよこ会議室かいぎしつに向かった。

「失礼します……」

 先頭せんとう切ってとびらを開けた花楓かえでに続き、私とトモミンも中に足をみ入れる。


 会議室かいぎしつの中には、選挙せんきょ当選とうせんした先輩せんぱいがたと、2人の先生がこしかけてる。

 って言うか、先生の内の1人は、担任の田中先生だし。

 まるで、面接めんせつ会場かいじょうにでもやって来たような緊張感きんちょうかんの中、うながされた椅子いすこしを下ろした私達。


 そうこうしてると、もう一人、私の知らない男子だんし生徒せいと会議室かいぎしつに入ってきて、ようやくはなしが始まった。

「えっと、いそがしいなか集まってくださってありがとうございます。本日ほんじつ正式せいしき来年度らいねんど生徒会長せいとかいちょう就任しゅうにんが決まりました、大塚おおつかです。よろしくお願いします」


 そんな大塚おおつか先輩の挨拶あいさつから始まったこの会議かいぎは、ざっくり言うと、次のような内容だった。


 生徒会せいとかい構成こうせいするメンバーには、選挙せんきょ当選とうせんしたメンバー以外いがいに、生徒会せいとかい役員(やくいん)からの推薦すいせんで選ばれる役職やくしょくがある。

 ここに集まってもらったメンバーは、生徒会せいとかいから内々(ないない)推薦すいせんを投げていたメンバーだ。

 今日来てもらった理由りゆうは、推薦すいせんを受けてくれるかどうかの意思いし確認をしたい。

 ってコトらしい。


 まさか、こんな仰々(ぎょうぎょう)しく返事へんじを求められるなんて思ってなかったから、少しおどろいた。

 でも確かに、やると言ったけどやっぱりやめた、なんて私達が言ったら、生徒会せいとかいがわこまるよね。

 先生も立ち合いしておけば、そんなトラブルは未然みぜんふせげるってことか。

 ここで覚悟かくごを決めろってことなんだろうけど、さいわい、私達はすでに受けることを決めて来てる。


 ちょっと不安ふあんなのが、大塚おおつか先輩と松本まつもと先輩以外(いがい)の人のことを、私は全然ぜんぜん知らないってことくらいかな。

 あと、後から入って来た男子だんし生徒のことも、知らないし。


 ま、花楓かえでに聞けばいいか。


 なんてことを考えてると、真面目まじめそうな髪型かみがた先輩せんぱいが、眼鏡をクイッと上げながら口を開いた。

大内おおうち君。前に話してた通りだ。きみには体育たいいく委員長いいんちょうをお願いしたいと考えている。返事へんじを聞かせてもらっても良いだろうか?」


 口調くちょうかたいなぁ。まぁ、見た目通りのキャラって言えばその通りだけど。

 たしか、この真面目まじめそうな先輩せんぱいは、副会長ふくかいちょう当選とうせんした樋口ひぐち先輩だったはず。

 以前、松本まつもと先輩せんぱいから手渡てわたされたパンフレットでは、男子の副会長ふくかいちょうは2人の立候補者りっこうほしゃが出てたはずだから、彼が当選とうせんしたってことだね。


 そんな樋口ひぐち先輩せんぱいに話しかけられた大内おおうちって男子は、私達よりも後に会議室かいぎしつに入って来た生徒だった。

 少しくせのあるかみの毛と、そばかすが特徴的とくちょうてきな男子。

 彼は少しだけ言葉をよどませながら会議室かいぎしつの中を見渡した後、観念かんねんしたように口を開いた。


「えっと、まぁ、先輩せんぱいたちが俺で良いって言うなら、別にいいんですけど。ホントに俺なんかで良いんですか? もっと他にも居るような気がするんですけど。祇園寺ぎおんじとか」

「彼も候補こうほではあったが、素行そこうがな。最近さいきん大人しくなったとはいえ、過去かこが消えるわけでは無い。その点、大内おおうち君には実績じっせきもあるし、素行そこうも悪くない」

「そう言うもんですか。だったらいいですよ。俺、体育たいいく委員長いいんちょうやります」


 そんなやり取りで、あっさりと体育たいいく委員長いいんちょうが決定する。

 そうなると、次は文化ぶんか委員長いいんちょうかな。


 なんて考えてると、次は松本まつもと先輩せんぱいが口を開いた。

「それじゃあ、私からの推薦すいせんですねぇ。まず、書記補しょきほ大心池おごろち須美すみさん、会計かいけいみなみ智美ともみさん、そして文化ぶんか委員長いいんちょう黒光くろみつ花楓かえでさんを推薦すいせんします。引き受けてくれますかぁ?」


 丁寧ていねいなのか、いつも通りなのか、良く分からない口調くちょうでそう告げた松本まつもと先輩。

 彼女の言葉を聞いた私達は、一度いちどお互いの顔を見合って、小さくうなずき合った。

 書記補しょきほとか会計かいけいとか、聞いていなかった役職やくしょくが付いてるけど、まぁ、仕方がないよね。

 何の役職やくしょくも無い生徒を生徒会せいとかいに入れるなんて言えないだろうし。


 特に異論いろんはさまれることなく、私達3人は引き受けることに賛同さんどうする。

 当然、大塚おおつか先輩は少し意外いがいそうに目を開いた。

 対する松本まつもと先輩は、うれしそうに()()()()()あと、こちらに向かって小さく手をってきた。

 仕草しぐさがいちいち可愛かわいな。


 そうして、先生から生徒会せいとかい役員(やくいん)としての心構こころがまえなんかを説明せつめいされた後、私達は解放かいほうされる。

 すっかり日がれてしまった帰り道。

 うす(ぐら)いその家路いえじが、いつもとちょっと違う風に見えたのは、私だけかな?

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