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隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして  作者: 内村一樹
第5章 一片の氷心

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第50話 火を消す方法

 昨日の空をおおくしてた雲がまぼろしだったとでも言うように、今日はんだ青空あおぞらが広がってる。

 そのおかげかな、昨晩さくばん悪夢あくむにうなされなかったし、寝癖ねぐせも無いし、もちろん、トーストも落とさなかった。


 これで天気が人の気分に影響えいきょうを与えるって、証明しょうめいできるよね。

 出来ないかな?

 少なくとも、空模様そらもよう気分きぶんに影響を与えるのは、なにも私だけに限った話じゃないみたい。


「どうしたの?」

「ううん。別に~。何でもないよぉ~」

 朝からニコニコと満面まんめんの笑みを浮かべた花楓かえでが、チラチラとこっちをぬすみ見てくる。

 何かいいことでもあったのかな?

 そんな彼女の様子ようすえかねて、私がそう思った瞬間しゅんかん花楓かえでの方から声を掛けて来た。


「なんでもないってば。ところでスーミィ、今日の夜、時間ある? たまにはごはん()べに行こうよ。なんだったら、ワタシがおごるからさぁ」

絶対ぜったい何かあったじゃん」

「どうだろうね」

おしえる気はないってコトね。まぁ、いいや。それじゃあ、お言葉ことばに甘えてご馳走ちそうしてもらおうかな」

「そうこなくっちゃ!」


 なんて言葉を交わしつつ、私は花楓かえで機嫌きげんがいい理由りゆうを考える。

 まぁ、昨日きのう今日きょうとであからさまに様子が違うってなれば、まず間違まちがいなく昨日の放課後ほうかごに理由があるよね。

 そして、なぜか私におごってくれるあたり、機嫌きげんがいいことの理由に私がからんでる可能性が高い。


 そうなると、考えられることは1つしかない。

 昨日、私と大塚おおつか先輩が交わした言葉の中に、彼女をよろこばせる何かがあったってコトかな。

 浮気うわきだなんだって言ってたワケだから、まぁ、あながち間違ってない気もする。

 なにはともあれ、花楓かえでが自分からおごってくれると言ってるわけだし、ここはあまんじて受けておこう。


 そんなことを考えてた午前中ごぜんちゅうの私は、その日のよる大変たいへんな目に合うコトなんて、知るよしも無かった。


 授業じゅぎょうも終わって、山田やまだとデートに行くというトモミンを送り出した私達は、2人で電車でんしゃに乗ってる。

 行き先は、服部はっとり先輩が最寄もよえきとして使ってる小さなえきだ。

 小さいとは言っても、まわりにはそれなりに店がならんでて、さびれてるワケじゃないみたい。


 だからと言って、花楓かえでがこのえき周辺(しゅうへん)の店を選んだのは偶然ぐうぜんだなんて、私が思うわけないよね?

 なんなら、ご飯を食べに行こうとさそわれた時点じてんで、ちょっとだけ予想よそうしてたワケだけど。

 やっぱり、花楓かえでは今日、服部はっとり先輩の件を解決かいけつするつもりみたいだね。


「それで? 解決かいけつ算段さんだんはついたんでしょ? これから私はどうすれば良い?」

 すっかりとくらくなったまどそと横目よこめで見ながら、私は対面たいめん椅子いすすわってる花楓かえでに問いかけた。

 彼女はというと、満足まんぞくそうな表情ひょうじょうでおなかさすりながら、あたたかいおちゃすすってる。


「まぁまぁ、そんなにあわてることないよ、スーミィ」

「いや、あわてるなって言われてもね。正直しょうじき、こんなにのんびりしてて良いのかな、ちょっと心配しんぱいなんだけど」


 一昨日おととい見た服部はっとり先輩の家庭かてい環境かんきょう

 あの環境かんきょうは、とてもいい状況じょうきょうとは言えないよね。

 正直しょうじきなことを言えば、私はそれほど、服部はっとり先輩に対して好感こうかんを持ってない。

 そんな私ですら、ちょっとだけ同情どうじょうしちゃうくらいの状況じょうきょうだったと思う。


 だから、はやく助けに行こう。

 なんて言うつもりはないけど、そんな気持ちが皆無かいむなのかと聞かれたら、完全かんぜん否定ひていはできないかな。


「それは、スーミィが彼女の状況じょうきょうを知っちゃったからだよね? 本来ほんらいなら、服部はっとり先輩せんぱい家庭かていのことを知る事なんて、まずなかったはずだし」

「……その通りだと思うけど」


 思うけど。

 その先の言葉ことばを、私は飲み込むしかなかった。

 だってそうでしょ?

 めていけば、私をふくおおくのひとは、他人たにん人生じんせいくびを突っ込まずに生きてるんだ。

 そうすることで、ある意味、適度てきど距離きょりたもちつつ生活せいかつできてる。


 だけど、花楓かえでは違う。

 一方的いっぽうてきに人の人生じんせい垣間かいま()て、ひそかに影響えいきょうを受けて生活してるんだ。

 それが彼女の人生じんせい


 そんな彼女に対して、同じ世界せかい共有きょうゆうしてしいとねがった私だからこそ、彼女は一昨日おととい、あの光景こうけいを私に見せたんじゃないかな。


 そして、その光景こうけいを見たうえで、花楓かえであわてる必要ひつようないと言う。


「なんていうか、あたま理解りかいしてても、感情かんじょうが付いて来ないな」

「それは仕方ないよ。人間にんげんって矛盾むじゅんばっかりな生き物だしね」

花楓かえでが言うと、説得力せっとくりょくすごいな」

「あれ? それってめてる?」

「さぁ? どっちでもないかも」


 私の言葉に小さくかたすくめて見せた花楓かえでは、ほぅっと息をく。

「さて、それじゃあ少しお話をしておこうかな」

 どこか仰々(ぎょうぎょう)しく切り出す花楓かえでに、私は先をうながす。


「スーミィも見たはずだから分かると思うんだけど、今回の感情かんじょうはズバリ、いかりだね」

「ん。まぁ、違和感いわかんはないね」

 花楓かえで断言だんげんするまでもなく、父親ちちおやに対するいかりってことだよね。

 それはまぁ、だれでもわかるだろうし、理解りかいもできる話だと思う。


 問題もんだいは、そのいかりを、いかにしてしずめるのか、ということ。


「そうだね、彼女の場合、見えてる以上にふかいかりをかかえてるから、しずめるのはとてもむずかしそう」

「だとしたらどうするの? この間は、先輩せんぱいのお父さんに何か仕掛しかけてたみたいだけど」

「あれはね、応急処置(おうきゅうしょち)でしかないんだよ。彼の中にあった衝動しょうどうを、おさえ込んだだけ。抑圧よくあつされた衝動しょうどうってのは、いつか必ずかえってくるから。簡単に言えば、時間じかんかせぎをしただけかな」

「でも、その時間じかんかせぎが必要ひつようだったんでしょ?」

「うん。そういうこと」


 大きくうなずいた花楓かえでは、さらに言葉を続けた。

服部はっとり先輩の中でくすぶってたいかりが、もうそろそろえきれずに爆発ばくはつしそうになってる。もし、何も対処たいしょせずに爆発ばくはつしちゃったら、最悪さいあく、大きなほのおになって現れるかもしれないね」

「え? それって、火事かじになるってコト!?」

場合ばあいによっては」

「それって、かなりマズいじゃん」

「うん。だから、私達はそのほのおを消してあげなくちゃいけない」

ほのおを消す?」

「そうだよ。ねぇスーミィ、を消す場合、スーミィならどうやって消す?」

「そんなの、水をかけるんじゃない?」

「そうだね。普通ふつうなら、そうするかも。でも、今話してるのは感情かんじょうの話なんだ。それをまえて、スーミィならどうするかな?」


 なんというか、まわりくどいき方をしてくるなぁ。

 ようは自分で考えて答えをみちびき出せってことなのかな?

 あれ? これってもしかして、私が大塚おおつか先輩に対してやった意地悪いじわると一緒?

 そう考えると、われながら意地いじの悪いことしてる。まぁ、意地悪いじわるなんだから当然とうぜんか。


 そんなことより、今はこのなぞなぞの答えを考える方が先決せんけつだよね。

 す。感情かんじょうす。

 言葉にするのは簡単かんたんだけど、私は普段ふだんどうやって自分のいかりをしずめてるのかな?

 まして、人のいかりをしずめるなんて、出来る自信じしんがないけど。


 でも多分、一番(はじ)めにするべきことは、冷静れいせいになることだよね。

 火事かじ現場げんばあわてるなんてもってのほかだし。

 感情かんじょうしずめるのにも、冷静れいせいになるのは大事だいじなことだと思う。


 冷静れいせい……。

 やす?

 そう言えば、方法ほうほうの中に、ねつうばうってものがあったような?

 もう一つ、空気をうばうってのもあったっけ?

 でも、空気くうきうばわれたら、いきまってくるしいだけだよね。


 って言うことは、やすってのが正解せいかいなのかな?

「さすがスーミィ。理解りかいはやくてたすかるよ」

「そうかな? でも、具体的ぐたいてきやすってどうやるワケ? 自慢じまんじゃないけど私、人をおこらせることは得意とくだけど、冷静れいせいにさせるのは得意とくいじゃないよ? さむいギャグでも言う?」

「それじゃ感情かんじょうさかなでしちゃうよね。そんな方法よりも、もっと簡単かんたんやしてあげることはできるから」


 そう言って一度口をつぐんだ花楓かえでは、悪戯いたずらっぽいみを浮かべながら言った。

「スーミィだって経験けいけんしたことあるでしょ? きもやすとか、あたまやすとか。ようは、強制的きょうせいてき冷静れいせいあたまにしてあげればいいんだよ」

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