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隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして  作者: 内村一樹
第5章 一片の氷心

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第49話 大人ぶって

「お邪魔じゃまでした?」

「いいや、そういうわけじゃないよ。それより、昨日きのうの続きを話しに来てくれたんだよね? 早速さっそく来てくれるとは、僕としてもありがたいよ」


 せっかくあんなに綺麗きれいな女子と2人きりだったのに、邪魔じゃましちゃった。

 そんな、ちょっとした悪戯いたずらごころを込めた私の言葉ことばを、大塚おおつか先輩せんぱいかるくいなしてしまう。


 それはさっきの松本まつもと先輩せんぱいを全く意識いしきしていないというよりは、私の悪戯いたずらごころ見抜みぬいたがゆえ反応はんのうっぽかった。

 まぁ、うすわらっちゃったし、気づかれないわけないか。


 取りえず、とびらの前に突っ立ってるのもあれだから、私は一番いちばん近くにあった椅子いすこしを下ろす。

早速さっそくですけど、話を聞かせてもらえますか? 花楓かえで手助てだすけって、具体的ぐたいてきに何をするつもりなんです?」

単刀たんとう直入(ちょくにゅう)だね。まぁ、まどろっこしくなくて、僕もたすかるけど。具体的ぐたいてきに言うとすれば、僕らが黒光くろみつさんと一緒いっしょごす時間じかん意識的いしきてきやすってところかな」

「えっと……それのどこが手助てだすけなんですか?」

「君も知ってるんだよね? ……彼女の力が引き起こす現象げんしょうのことを」


 一度いちど言葉ことばを切った後、周囲しゅうい視線しせんげた彼は、少しひかえめな声量せいりょうで続けた。

 もちろん、彼の言いたいことは、私にも伝わってる。

 感情かんじょう暴走ぼうそうする、っていう厄介やっかい現象げんしょう

 どうやら、大塚おおつか先輩も、その現象げんしょうのことを知ってるらしい。

 それをあらためて頭にきざみ込みながら、私は彼に続きをうながした。


「知っているていで続けさせてもらうけど。そういった彼女の事情じじょうくわしい人が近くにいるって言うのは、それだけで単純たんじゅん手助てだすけになると、僕は思うんだ」

「まぁ、そうですね」

「分かってくれてうれしいよ。だからこそ、彼女には生徒会せいとかいに入ってもらって、学校でもなるべく一緒いっしょるべきだと思ってたんだけどね。どうにも、僕は彼女かのじょけられてるみたいだから」

「なるほど、それで勧誘かんゆうしてたんですね。やっと納得なっとくしました。でも、1つ聞いても良いですか? さっき言ってた、『意識的いしきてきに』って言うのは、どのレベルを想定そうていしているんです?」


 そんな私のいに、大塚おおつか先輩せんぱいは少しだけ目をじて考え出した。

「そうだね、理想りそうを言えば、彼女かのじょが他の人のこころを読むひまもないくらい、つねに一緒にれればいいと思うけど、そんなことは無理むりだよね。だから、現実的げんじつてきな落としどころとして、同じコミュニティに所属しょぞくしてたりすればいいのかなって思うよ」

「さすがに理想りそうが高すぎやしないですか?」

「ははは、まぁ、これはあくまでも理想りそうだからね。ぼくも、そんなことはできないってことくらいは知ってるよ」


 かるく笑って見せる大塚おおつか先輩だけど、彼の言うとしどころは、どこか変だと私は思う。

 そもそも、先輩せんぱいかかげた理想りそうって、高いんじゃなくて方向ほうこうがズレてる気がするんだけど、上手うまく言葉にして説明せつめいできないなぁ。

 この何とも言えない違和感いわかん、何だろう?


たか理想りそうかかげるのは、わるいことじゃないだろう?」

「まぁ、わるいことじゃないですけど」

「できれば、彼女の友人ゆうじんである大心池おごろちさんからも、彼女に生徒会せいとかいに入るように説得せっとくして見て欲しいんだ。あ、でも、無理むりいとかはする必要ないからね」


 そう言いながら、大塚おおつか先輩はすっくと立ちあがったかと思うと、1枚のかみを私に手渡てわたしてきた。

「これは……?」

生徒会せいとかい選挙せんきょ立候補りっこうほ用紙ようしだよ。ちょうど来月らいげつまつに、生徒会せいとかい選挙せんきょがある。その選挙せんきょに、彼女にも出て欲しいんだけど。その説得せっとくをお願いできないかな?」


 名前なまえとか所属しょぞくクラスとか、そう言った情報じょうほう記入きにゅうするための用紙ようし

 その用紙ようしながめた後、私はすぐそばに立ってる大塚おおつか先輩せんぱいを見上げた。


 全く悪気わるぎなんてなさそうな、おだやかな表情ひょうじょう先輩せんぱい

 そんな彼を見ているうちに、私はさっき感じた違和感いわかん正体しょうたいが、少しずつ分かり始める。


 理由りゆうが分かってすっきりするかと思ってたけど、、なんだか彼の笑顔がしゃくさわって来たな。

 そう思った私は、手にしていた用紙ようしを彼にかえしながら、意地悪いじわるを言ってみることにした。


「すみません。私に出来できることはなさそうです」

「ん? 何か分からないところでもあったのかな? それとも、手伝えない理由があったり……」

「いや、そういうわけじゃ……このさいなんではっきり言いますけど、手伝いたくないなって思ったので」

「っ!? そ、それはどういう?」

言葉ことばのままです。それじゃあ、私はそろそろかえります」

「ちょ、ちょっと待ってくれないかな? ちゃんと僕の話が伝わっていないような気がするんだけど」

「そうですか? すごく分かりやすい話だったと思いますけど」

「いやいや……あぁ、そうか。もしかして、彼女が誰かのこころを読むたびに、その相手の感情かんじょうから影響えいきょうを受けるってことを知らないんじゃ?」

「知ってますよ?」

「そ、そうなのか。それじゃあ、誰かが彼女に対して関心かんしんを持てば持つほど、彼女も相手に対して関心かんしんを持ってしまうから、より感情かんじょう暴走ぼうそうしやすくなるって話は」

「なるほど、それは考えたことなかったですけど、確かに、理屈りくつとしては成り立ちそうですね」


 ってことは、服部はっとり先輩もそのパターンかもしれないってことかな?

 頭の中でそう思いながらも、口には出さない。

 少なくとも、今、目の前にいる大塚おおつか先輩に、花楓かえでのやろうとしてることを察知さっちさせるのはやめた方が良さそうだし。


 結局けっきょく大塚おおつか先輩にとっての花楓かえでは、保護ほご対象たいしょうでしかないんだから。


 花楓かえでは言ってた、大塚おおつか先輩は良い人だって。

 その言葉の意味いみを、私は今、ぼんやりと理解りかいできた気がする。

 多分たぶん、彼は本心ほんしんから花楓かえでのことを心配しんぱいしてて、たすけるために、まもるために、保護ほごしようとしてる。


 そんな彼の行動こうどうに、花楓かえで意思いし介在かいざいしていない。


 それって、ただただ過保護かほごなだけで、対等たいとう関係かんけいじゃないよね?

 まるで、子離こばなれできない親みたいじゃん。

 まぁ、まだ成人せいじんしてない高校生こうこうせいえらそうに言えることじゃないと思うけど、だけど、少なくとも私達は、そんな過保護かほご人物じんぶつあまつづけて良いわけじゃないと私は思う。

 未熟みじゅくだからこそ、大人おとなぶる意味があるんだし。


 なんて、色々(いろいろ)と考えながらも、私は大塚おおつか先輩せんぱい制止せいしり切って生徒会室せいとかいしつから出てきた。

 思ってたことを全部ぜんぶぶちまければ良かったかな?

 いいや、それじゃダメだよね。


 私だって、この考えに辿たどり着くために、花楓かえでとの関係性かんけいせいとか色々(いろいろ)考えたんだし。

 先輩だけがヒントをもらうんじゃ、ホントに大事なことに気づけないかもしれないじゃん。


 そんなことを考えている私も、今まさに大人ぶってるってことになるのかな。

 自嘲じちょう気味ぎみに笑いながら教室に向かった私は、すでに全員が帰宅きたくしているのを確認かくにんした後、自宅を目指すことにする。

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