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隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして  作者: 内村一樹
第5章 一片の氷心

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第43話 私の本意

 冬ってさむいよね。

 とく今年ことしの冬は、例年れいねんよりもさむいような気がしてる。

 外を歩くだけで指先ゆびさき筆頭ひっとうに、鼻先はなさきとかみみとかが冷たくなっていくし。

 ついさっきまで出来立てだったはずのコーヒーも、あっという間にぬるくなっちゃう。

 あれ? もしかして、例年れいねんと同じかな? まぁいいや。


 リビングのコタツに足をっ込んだまま、ぬるくなったコーヒーをすすった私は、一つため息をこぼした。

 出来でき立てが美味おいしいのになぁ。もう一回レンジであたため直そうかな。

 なんて考えてると、不意ふいにインターホンがる。


「あれ? もう時間だっけ?」

 咄嗟とっさにテレビのすみに表示されてる時間を見た私は、約束やくそくしてた時間まで30分近く余裕よゆうがあるのを確認した。

 流石さすがに早いよなぁ。なんて思いながらも、誰であれさむなか外で待たせるのも申し訳ないから、取りえず玄関げんかんに向かおう。

 家にはいま私しかいないから、ちょっと早くても上げちゃって良いはずだしね。


 誰も気にしないだろう言いわけを考えながら玄関げんかんを開けた私は、そこに花楓かえでとトモミン、そして山田やまだが立っているのを目にする。


「お、スーミィ! あけましておめでとうございまぁす! 今年もよろしくね!」

 真っ先に目に入って来たのは、オレンジ色のダウンジャケットと黄色きいろいニットぼうをかぶった花楓かえで

 挨拶あいさつをしながらも元気げんきに手を彼女かのじょは、年が明けても相変あいかわらずみたいだね。


「あけましておめでとうございます。こ、今年もよろしくお願いします!」

 白くてふわふわとしたダウンコートが特徴的とくちょうてきなのは、トモミンだ。

 彼女はみょうかしこまってるのか、深々(ふかぶか)とお辞儀じぎをしながら挨拶あいさつを口にする。


「あけおめことよろ」

 最後にぶっきらぼうに挨拶あいさつを口にしたのは、山田やまだだ。

 黒のシュッとしたコートに身をつつんでる彼の姿は、少しだけ大人っぽく見える。


 そんな三者三様さんしゃさんよう挨拶あいさつを前に、私は思わず笑みをこぼしながら、挨拶あいさつを返した。

「あけましておめでとう。今年もよろしく」

 そう言った私は、玄関先げんかんさきに立ってる3人にあらためて謝罪しゃざいすることにした。


「ごめん、まさか30分もはやく来るなんて思ってなかったから、まだ出る準備じゅんびできてない」

大丈夫だいじょうぶ大丈夫だいじょうぶ! 私達は大人おとなしくコタツで待っておくから!」

「どんだけ図々(ずうずう)しいんだよ」

「良いでしょ!? さむいんだし!! 嫌なら山田やまだ君は一人で外で待ってれば?」

「まぁまぁ、ウチは別に大丈夫だから、取りえず入って」


 正月しょうがつ早々(そうそう)、家の前で喧嘩けんかはじめられるのは困る。

 山田やまだの言い分がもっともなのは分かってるけど、今回は花楓かえでが正しい。と言うことにしておこう。


 3人を家に上げてリビングに通した私は、灰色のコートとマフラーを準備じゅんびして、コタツに逃げ込んだ。

 それから十数分、テレビを見ながら体をあたためた私達は、予定していたより少し早めに家を出る。


 正月しょうがつ早々(そうそう)に行く場所なんか、初詣はつもうでに決まってるよね。

 世の中には、初日はつひの出を見に行くって人もいるらしいけど、生憎あいにく、私達にそんな元気はない。

 いや、花楓かえでなら行きたがりそうだけど、多分トモミンは苦手にがてなんじゃないかな?

 朝とか弱そうだし。


 そんなこんなで私たちが向かったのは、学校の近くにある神社じんじゃだ。

 それなりに有名ゆうめいらしいこの神社じんじゃには、私が想像そうぞうしてた以上の人だかりができてる。


 去年きょねんまでは、こうして友達と初詣はつもうでに行くなんてしなかったから、こんなにも混雑こんざつするなんて知らなかったなぁ。

 本音ほんねを言えば、花楓かえでとトモミンにさそわれなかったら、絶対ぜったいに来てないと思う。寒いし。


 取りえず参拝さんぱいするためのれつならんで、おまいりを済ませた私達は、少しだけ神社じんじゃの中を歩いてみることにした。

 って言っても、神社じんじゃの中に見てまわれるような物はそんなに多くないワケで、最終的さいしゅうてきにお守り売り場に行きつく。


 去年きょねんの私がお守りを買いに来てたとするなら、受験じゅけんもあったことだし、学業がくぎょう系のヤツを買うんだろうな。

 でもまぁ、今年はこれと言って欲しいものは特にない。

 皆は何か買うのかな?


 そう思った私は、ふと、となりでお守りをマジマジと見ているトモミンを見た。

 視線しせんの先にあるのは……交通こうつう安全あんぜん

 いや、流石さすがに違うよね。だとしたら、そのとなりの……。

「トモミン、何か欲しいおまもりでもあるの?」

「う~ん、健康けんこう祈願きがんとか、気になってます」

 よっぽど真剣しんけんに選んでるのか、トモミンは少し遠い声でこええる。

 仕掛しかけるなら今だね。


「それってもしかして、山田やまだに渡すの?」

「うん……って、スーミィ!? べ、別にそんなんじゃ」

かく必要ひつようないジャン。彼氏かれしには健康けんこうでいて欲しいもんね」

「っ~~。そうだけど、そうだけどぉ!!」


 かおを赤くめながらそう言ったトモミンは、少しはなれた場所で何やらお守りを買ってる山田やまだをチラッと見た。

 それにしても、あわててるトモミンって可愛いなぁ。

 こういう所に山田やまだれたのかな?


 なんて考えてると、となりにいたトモミンが「あれ?」とつぶやいた。

「どうしたの?」

「あそこ、大塚おおつか先輩せんぱい

 トモミンのゆびさした方を見ると、確かに大塚おおつか先輩せんぱいがお守りを吟味ぎんみしてる。

 でもまぁ、学校近くの神社じんじゃだし、彼が居ること自体じたいは変じゃないよね。


 そんなことを考えてると、山田やまだ花楓かえでがそれぞれ小さな紙袋かみぶくろを手にしながら、私達の所にやってくる。

「スーミィとトモミンはお守り買った? って、どうしたの?」

「いや、大塚おおつか先輩せんぱいがいるって話をしてただけ」

 そう言って、私は花楓かえで達に視線しせんで説明した。

 すぐに理解りかいしたらしい2人は、だけど、あんまり興味きょうみは無かったみたい。

 まぁ、私もそれほど強い関心かんしんがあるワケじゃないんだけどね。


 取りえず、もうそろそろさむさで身体からだふるえそうだし、適当てきとうにお守りを買って帰ろう。

 たくさんならんでるお守りの中から、金運きんうん上昇じょうしょうのお守りを手に取った私は、巫女みこさんにそれを手渡てわたす。


 会計かいけいを終えて、小さな紙袋かみぶくろのお守りを受け取った私が、そのまま花楓かえでたちの元に戻ろうとした時。

 不意ふい大塚おおつか先輩せんぱいの声が耳に入ってきた。

「あ、2つはそれぞれ別々(べつべつ)ふくろにお願いします」


 きっと、だれかにわたす分も買ったんだろうな。

 背後はいご大塚おおつか先輩せんぱいの方をり返るまでもなく、予想よそうできること。

 それはとくに変な話じゃないよね。

 だけど、そんな何気ないことが、私の中で何かに引っ掛かった。


 同時どうじに、クリスマスイブに見た大塚おおつか先輩せんぱいのことが頭をよぎる。

 無性むしょうに気になってしまった私は、帰り道の途中とちゅう我慢がまんできずに、花楓かえでに問いかけてみた。


「ねぇ、花楓かえで大塚おおつか先輩せんぱいって彼女かのじょでもいるのかな?」

「え? さぁ、ワタシは知らないなぁ」

 今は話すつもりが無いのか、花楓かえではそう言ってとぼける。


 当然とうぜん、そんな彼女の答えに私が納得なっとくできずにいると、トモミンが少しだけ息をみながら告げた。

「スーミィ、もしかして、大塚おおつか先輩せんぱいのことが気になってる?」

「いや、そんなんじゃないよ、トモミン」

 すぐに否定したけど、トモミンと山田に私の本意は伝わらなかったみたい。

 失敗したなぁ。

 なんて思ってみるけど、それはちょっと遅いよね。

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