表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして  作者: 内村一樹
第4章 マリアベール

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/63

第40話 公開告白

 私の名前なまえみなみ智美ともみ

 ごく普通ふつう女子高生じょしこうせい

 ……なんて自分で思うのも、烏滸おこがましいくらい、特徴とくちょうのない人間。


 だけど、別にそれで良いんだ。

 私は私。

 それは私が一番よく知ってて、それなりに楽しくらせてるから。

 それに、最近さいきんは友達って言えるくらい仲のいいクラスメイトもできたし。

 私はとってもしあわせなんだ。


 きっかけは、高校こうこうで初めての文化祭ぶんかさい

 学校がっこう生活が始まって半年はんとしとうとしてたのに、まだクラスに馴染なじめてなかった私は、文化祭ぶんかさい役割やくわり決めの結果けっかを見て、ちょっと不安になった。

 だって、同じ買い出しはんのメンバーに、黒光くろみつ花楓かえでさんと大心池おごろち須美すみさんがいたから。


 2人はなんていうか、私のクラスでも雰囲気ふんいきちがう。

 周りの人たちはみんな、2人について『空気くうきめない』とか『いてる』とか言ってるみたいだけど、私はそうは思わなかった。


 めないんじゃなくて、自分で作り出してるんだ。

 いてるんじゃなくて、自分で飛んでるんだ。


 私には絶対ぜったいにできないことを、なんてことないような顔して、簡単かんたんにできちゃう。

 それがとてもかっこよく見えて、ひそかにあこがれてた。


 でも、だからこそ、私なんかが2人と一緒いっしょはんになっても良いのかな?


 私と2人が住んでる世界は、きっと違う。

 見えてるものも、聞こえてるものも、感じてるものも、全部。何もかも違うはず。

 そんな風に思ってた私に、買い出しはんの皆は親切しんせつせっしてくれた。

 そのころからかな、私は山田やまだ君と話すことがえた気がする。


 買い出しはんとして一緒いっしょ行動こうどうするときも、教室きょうしつでたまに声を掛けてくれる時も、彼は本当に私のことを気遣きづかってくれる。

 初めは、どうして私なんかを気遣きづかってくれるのか分からなかったけど、ある日花楓(かえで)ちゃんとスーミィにからかわれて、やっと気づいたんだ。


 もしかして、そういうコトなのかな、って。


 確信かくしんはなかったけど、そんな風に考えちゃったら意識いしきしちゃうよね。

 なにより、それが本当だったら、うれしいことだし……ちょっとだけれくさいけど。


 そんなうれしさを感じながらも、私はあらためて2人のすごさを実感じっかんした気がする。

 私よりも先に、私と山田やまだ君のことに気が付くんだなぁって。

 やっぱり、私とは見えてるものがちがうみたい。

 ううん。ちがうよね。きっと、私がちゃんと周りの皆のことを見れてないんだ。

 見て、気づいて、思ったことを伝える。

 それをやってないから、私は何も主張しゅちょうできないし、気づけないし、見えなくなってる。


 だから、もっと行動しようって、思ったんだ。


 文化祭ぶんかさいが終わった日、本当は買い出しはんみんなで打ち上げに行きたかった。

 その日じゃなくても、行けるなら、あそびに行きたかった。

 だけど、私がさそってもいいものなのか、なやみ続けた結果、結局けっきょくさそえたのは11月の中旬ちゅうじゅん


 おそすぎかな?

 みんな迷惑めいわくしてないかな?

 そんな私のなやみなんて吹き飛ばすみたいに、花楓かえでちゃんもスーミィも、賛成さんせいしてくれた。


 本当に、さそってよかった。

 そう思った私は、すぐにこころれそうになっちゃうんだよね。


 まず初めに、山田やまだ君にことわられたこと。

 これはまぁ、用事ようじがあるなら、来れないのも仕方がないよね。

 でも本当ほんとうは、一緒いっしょに打ち上げに行きたかったな。


 次に、街でナンパにあったこと。

 それだけなら、スーミィと花楓かえでちゃんがかばってくれたから、どうでもよかったけど。

 あんなことになっちゃったし。


 でも、そんなことで心をられるわけにはいかないよね。

 せっかくの打ち上げ。さそった私が楽しまないわけにはいかないし。

 これからも、友達として一緒いっしょに過ごしていきたいし。


 でも、私なんかがそんなことを思ったのが、多分たぶん間違(まちが)いだったんだよね。


調子ちょうしってんじゃねぇよ』

 そうだよね、私、調子ちょうしってた。

『お前なんか、相手にされるわけないだろ?』

 それくらい、私が一番いちばん分かってる。

『ちょっとかまわれただけで、勘違かんちがいするな』

 そうだった、全部ぜんぶ勘違かんちがいなんだよね。


 今も脳裏のうり反芻はんすうしてる彼女たちの言葉は、みょうに私を納得なっとくさせてくる。

 正直しょうじき、もう立ち直れそうになかったけど、私はおもたいあしうごかして家に帰った。

 だれにもばれないように、こっそり部屋に戻って、いつもみたいにまくらに顔をうずめる。

 泣いてるワケじゃない。

 ただ、さけび出しそうなのを我慢がまんしてるだけ。


 こうやって、押しころそう。


 目を閉じて、真っ暗闇くらやみの中でねんじ続ける。

 そうやって、ずっと私は生きて来たんだから。

 これからも、何事も無く平静へいせいたもったように、生きてくんだから。


 私には、空気を作り出すだけのつよさはない。

 私には、自分で飛べるだけのつばさは無い。


 だからこそ、私自身が空気になって、生きてくしかない。

 それくらい分かってるんだから。


 気が付いたらよるが明けてて、またいつもみたいに朝が来てた。

 空気くうきみたいに生きてく。

 だけど、花楓かえでちゃんとスーミィとは、友達でいたい。


 こういうとき、普通はどうするのかな?

 友達ともだち相談そうだんとか、するものなのかな?

 あさ支度したくをしながら、そんなことを考えてた私は、教室きょうしつについて花楓かえでちゃんを見つけた。


 いつものようににこやかな表情ひょうじょう花楓かえでちゃんが、すぐに私に笑顔えがおを向けてくる。

 次の瞬間しゅんかん、彼女の笑顔えがお一瞬いっしゅんで消え去った。

 どうしたのかな?

 そう思って声を掛けてみるけど、何も反応してくれない。

 同時どうじに、私は目の前の光景こうけいみょうかすれて見えるようになった。


 なにが起きたの?


 それから5日間、私は世界に無視むしされるようになった。

 私が見えなくなったことに、皆も気づいてるみたい。

 でも、誰も目の前にいる私に、気づいてくれないのは、どうして?


 そんなの、私にそんな価値かちが無いからに決まってる。

 だって、みんなが住んでる世界せかいと、私が住んでる世界セカイは違うんだから。


 随分ずいぶん長いこと、誰にも見られなくなったことで、私はそんなあきらめをいだき始めてた。

 このまま部屋へやで、命がきるのを待とうかな。

 なんてことまで考えてたけど、気が付けば私はいつも、教室に向かってた。


 ううん。違う。

 私の足が向かってたのは、教室なんかじゃない。

 山田やまだ君のそばだ。


 もしかしたら、このまま一生いっしょう誰にも見つけてもらえないのなら、なるべく長い間、彼と一緒に居たいって、無意識むいしきに思ってたのかもしれないね。

 だから私は、いま、目の前で山田やまだ君とスーミィが一緒に居る状況に、ちょっとだけ不満ふまんがある。


 何かを話してるけど、その声は私には聞こえない。

 多分、私なんかじゃ分からないことを、話してるんだ。


 そんなことを考えながら、山田やまだ君のうでれようとしたその時、不意ふいにスーミィの声が耳に入ってくる。


「なんだ、目の前にいるジャン」

「え!?」


 おどろきのあまり、手をひっこめた私は、すぐにスーミィを見つめる。

 だけど、彼女の視線しせんは私じゃなくて山田やまだ君にそそがれてた。


 どうして今だけ、彼女の声が聞こえたのか。

 良く分からない状況じょうきょうに私が混乱こんらんしてると、彼女は椅子いすから立ち上がって、教室のまど全開ぜんかいにし始める。


 何を始めるつもりなのかな?


 様子ようすうかがってると、スーミィは山田やまだ君に対して何かを話し始めた。

 対する山田やまだ君は目に見えておどろき、困惑こんわくを見せてる。

 それでもスーミィは引き下がらないみたいで、何かを彼に告げた。


 すると、山田やまだ君は一気に真剣しんけん表情ひょうじょうを浮かべて、まどの元に歩み寄る。

 そして、まどの外に向かってさけび声を上げた。


みなみ智美ともみ!!!!! 俺は!! 俺はお前のことが、スキだぁ!!!!!!」


 耳までっ赤にめ上げながらも、全力で、まどの外にさけ山田やまだ君。

 そんな彼の告白こくはくを聞いて、一瞬、ほうけた私の背中せなかに、つよかぜきつける。


 まるで、背中せなかを押すような、一陣いちじんの風。


 そんな風は、私の顔をおおってた何かをぎ取って、まどの外へと吹き飛ばしていった。

 それは、一枚のうすいベール。

 結婚式けっこんしき花嫁はなよめがしてるような、マリアベール。


 まどの外にまで巻き上げられていったそのうすいベールは、夕日ゆうひびて、キラキラとかがやいてる。


 そんな様子ようすを見て、山田やまだ君の言葉ことばを聞いて、私は思わず後退あとずさる。

 直後ちょくご、私はつくえにおしりをぶつけてしまって、教室きょうしつの中に音がひびいた。


 すると、咄嗟とっさにこちらを振り返った山田やまだ君が、おどろきで目を大きくしたと同時どうじに、私の方へけ寄って来る。


 一瞬いっしゅんで私の視界しかいおおくして来る山田やまだ君の制服せいふく

 彼のにおいと全身ぜんしんつつうで感触かんしょく動揺どうようした私は、脱力だつりょくする身体からだを彼にゆだねた。


みなみ、良かった……無事だな!?」

山田やまだ君……私、私」

 けられる声に何も返事できないまま、私は涙と嗚咽おえつこぼしちゃう。


 そんな私と山田やまだ君がわれに返るのに、それほど時間はらなかった。

 なぜなら、教室きょうしつの中に小さなシャッター音がひびいたから。


「お、おい、大心池おごろち! なにってんだよ!?」

「良いでしょ? 別に。一応いちおう花楓かえでにも報告ほうこくしときたいし。それより、トモミン、体調たいちょうは大丈夫?」

「え、あ、うん。大丈夫」

「なら、良かった」

 そう言って笑うスーミィの表情ひょうじょうは、今までに見たどんな表情ひょうじょうよりも、あたたかかったと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ