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隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして  作者: 内村一樹
第4章 マリアベール

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第38話 くだらないこと

 トモミンが姿を消してしまったのは、きっと花楓かえでの力によって引き出された感情かんじょう原因げんいんだと、私はそう思ってた。

 いいや、実際じっさいそうなんだと思う。

 どんな感情かんじょうかは分からないけど、表面化ひょうめんかした感情かんじょうがトモミンをおそって、どこかへとれ去られてしまった。

 もしくは、あのナンパ男みたいに感情かんじょう表面化ひょうめんかしてしまった何者かによって、れ去られてしまった。


 一般的いっぱんてき標準的ひょうじゅんてきな考え方。今の所、私はこの考え方を前提ぜんていに動いてる。


 だけど、その考え方は本当に間違まちがってないのかな?

 大塚おおつか先輩せんぱいの言う、見たい物とやらを信じるのなら、この前提ぜんていに大きなほころびが生まれるんじゃないかな?


 そもそも、一般的いっぱんてき標準的ひょうじゅんてきって何?

 私の思う『それ』は、あくまでも私にとっての『それ』で、トモミンにとっては全然ぜんぜん違うのかもしれない。

 少し考えれば当たり前で、だからこそ考える事すら忘れてた事実じじつに、私はいきどおりを感じた。


「おい、大心池おごろち! 何か分かったのか?」

「まだ何も! でも、1つだけ確認かくにんしたいことがある」

 速足はやあし廊下ろうかを進む私の後を、山田やまだが追いかけてくる。

 足のはやさなら絶対に私よりもすぐれてる彼が、私を追いして行かないのは、多分、行き先が分からないからかな。

 まぁ、それは仕方がないよね。

 私も、機会きかいが無かったら自分から行くことなんてなかったと思うし。

 だからこそ、私がその部屋へやの場所を知ったのは、つい最近だったりする。


 帰宅きたくしようと廊下ろうかを歩く生徒せいとたちの流れをかき分けて、目当ての部屋へやに向かう私達は、かなり目立ってるみたいだ。

 普段ならこんなことしないけど、今はそんなことにかまってる場合じゃないし、仕方ないよね。


 そうして、やっと目的の部屋が視界しかいに入ったところで、さっしたように山田がつぶやいた。

生徒会室せいとかいしつ? いや、流石さすがにここには居ないだろ」

「それくらい分かってる」

 彼の疑問ぎもん一蹴いっしゅうした私は、躊躇ためらうことなく生徒会室せいとかいしつとびらを開けた。


大塚おおつか先輩! いますか?」

 広々とした生徒会室せいとかいしつの中に呼びかけながらも、私は目当ての人物を目で探す。

 部屋の中に居た3人の生徒会せいとかい役員やくいんたちは、そんな私のことをジロジロと見てきた。


 そんな彼らの中にじって、雑談ざつだんしてたらしい大塚おおつか先輩せんぱいは、私を見るやいなや、すっくと椅子いすから立ち上がると、こちらに歩み寄って来た。

「どうしたんだい? 大心池おごろちさんの方から来るなんて、めずらしいね」

めずらしいって言うか、初めてですけどね。そんなことはどうでも良いんです。大塚おおつか先輩せんぱい、トモミン……みなみ智美ともみのこと、覚えてますよね?」

「うん? まぁ、覚えてるけど」

「じゃあ教えて下さい。先輩せんぱいから見たみなみさんは、どんな人物じんぶつですか?」

「それはまた、なんとも答えずらいことを聞くんだね。そうだな。正直しょうじきに言うけど、僕は彼女かのじょのことをほとんど知らないよ?」

「はい、だからこそ聞いてるんです」

「……なるほど。だからこそ、か」


 こんなざつ説明せつめいで本当に伝わったのか、うたがわしいけど、彼はたしかにトモミンの印象いんしょうを語り出してくれた。

「僕にとってみなみさんは、黒光くろみつさんと大心池おごろちさんの友人。くらいの印象いんしょうしかないかな」

「そうですか。ちなみに、先輩せんぱい以外の人から見た時、みなみさんはどういう風に見られてると思いますか?」

「またむずかしいことを。そうだね。変わったみ合わせだな。なんて思うかもしれない」

「変わったみ合わせ、ですか?」

「そうだね。だって、仲が良いグループってのは大抵たいてい、似た者同士(どうし)が集まるものだと思うから」

「私達が似てないと思ってるんですか?」

「……逆に、似てると思ってたのかな?」


 苦笑にがわらいを浮かべる大塚おおつか先輩せんぱいに、みじか感謝かんしゃべた私は、そのまま生徒会室せいとかいしつを後にした。

 とびらめて来た道を戻ってると、ずっと静かにしてた山田やまだが問いかけてくる。

「さっきのは何だったんだ? どうして大塚おおつか先輩せんぱいみなみのことを?」

警察署けいさつしょで話を聞いてたでしょ? 大塚おおつか先輩せんぱいは私達をたすけてくれた。つまり、トモミンのことを少しは知ってる。そんな先輩が、トモミンのことをどういう風に認識にんしきしてるのか、知りたかったの」

「どうして?」

「見たい物を見てたんだとしても、実際じっさいに見えてるものは確実かくじつに、その人の一部だと思うから」

「は?」


 事実じじつじゃなくても、見たい物を見てるんだとしても、表面ひょうめんに出て来てる何かがあったんだとしたら、それはきっと、その人物じんぶつかたちづくってる要素ようその一つだよね?

 私にとってのトモミンは、自信じしんが無くて、引っ込み思案じあんだけど、実は器用きような女の子。

 山田やまだにとっては、自罰的じばつてきに見えてたみたい。

 そして大塚おおつか先輩せんぱいから見た彼女は、私と花楓かえでとは似ていない女の子ってところかな。


 これだけで何がわかるのか、今の私には分からない。

 でも、こうやってトモミンのことを知って行けば、何か糸口いとぐちつかめるかもしれないよね。

 そう思いつつ、後ろをついて来る山田やまだへの説明せつめいに頭をなやませた私は、説明せつめい放棄ほうきすることにした。


「ごめん、上手うま説明せつめいできそうにない。でも、1つだけ分かったことがある。トモミンは、自分自身で身をかくすことを選んだのかもしれない」

「ちょ、それはどういう意味だよ?」

 少しだけおどろ山田やまだに続きを聞かせようと、り返りざまに口を開いた私は、誰かに声を掛けられて立ち止まる。


「ねぇ、あんた、1年の大心池おごろちだよね?」

 声のした正面しょうめんに向き直った私は、そこに先輩せんぱい女子じょし生徒が数人すうにん立っていることに気が付く。


「はい、そうですけど」

「ちょっと話があるんだけど、いて来て」

 先頭せんとうにいるのは、やたらと威圧的いあつてきな目つきの先輩せんぱい

 みじかめの茶髪ちゃぱつの彼女は、私に向かってそう言ったあと、うしろの山田やまだをギロッとにらんだ。


「そこの君は来なくていいから」

「あ、いや……」

 なさけない声をらす山田やまだは、ぞろぞろと私を取りかこみ始める女子の先輩せんぱいたちを前に、一歩いっぽ後退(あとずさ)る。

 そんな彼を横目よこめで見た後、私は正面の先輩せんぱいに向かって口を開いた。


「あの、何の用ですか? 私、今(いそ)しいので。急ぎじゃないならまた今度でお願いしたいんですけど」

「は? あんた、先輩せんぱいに向かって何? その態度たいどは」

 そうすごんでくるのは、私の右隣みぎどなりにいる黒髪くろかみ先輩せんぱい

 そんな先輩せんぱいの言葉に、一瞬いっしゅんちぢむけど、私はそれをグッとこらえて黒髪くろかみ先輩せんぱいにらかえした。


 その途端とたん、他の先輩せんぱいたちが一気に私にめ寄ってくる。

 流石さすがにやりすぎたかな?

 なんて、私が考えた時、廊下ろうかの先から見知った人がけて来た。


「ちょ、ちょっと、何をやってるんですか?」

 私にじゃなく、先輩せんぱいたちにそう声を掛けながら走って来たのは、佐藤さとう亜美あみ

 どうやら、この先輩せんぱいたちは佐藤さとうの知り合いみたいだね。


 なにやら私に聞こえないようにコソコソと話をする茶髪ちゃぱつ先輩せんぱい佐藤さとうは、しばらくしてから話をやめた。

 それと同時どうじに、茶髪ちゃぱつ先輩せんぱいとその取り巻きは、小さく舌打したうちをしながらどこかへと歩き去っていく。


 そうして取り残された私と山田やまだは、少しだけ顔を見合わせて、佐藤さとうを見た。

「どういうつもり?」

 思ったまま、そのままを言葉にすると、彼女は小さくかたすくめながら告げる。

「別に。ただアンタに借りを作ったままにしとくのがいやだっただけ」


 一瞬、佐藤さとうが何を言ってるのか分からなかったけど、少し考えて思い出した。

 そう言えば、文化祭ぶんかさい準備中じゅんびちゅうにいじめられてた彼女を、強引ごういん教室きょうしつから引っ張り出したことがあったっけ?

 多分、そのことを言ってるんだと思う。

 まぁ、余計よけいな時間を使わずにんだから、一応いちおう感謝しておいた方が良いよね。


 なんて思いつつ、お礼を口にするわけでも無い私は、代わりに1つ質問をした。

「あの先輩せんぱい達は知り合いなの?」

「ん? まぁ、ちょっとだけ」

「じゃあ、私がどうしてからまれたのか、知ってる?」

「は? そんなの、大塚おおつか先輩せんぱいがらみに決まってるじゃん」

「あぁ、そういうコトか。うわさ以上にこわいな……」

「その説明せつめいで、私が『あぁ、そうか~、納得なっとく』なんて言うと思った? 意味いみが分からないんだけど」

「はぁ……まぁ、分かってたけど別に私が親切しんせつに教える必要も無いよね?」


 私の追及ついきゅうをヒラリとかわして見せた佐藤さとうは、そのままどこかに歩いて行く。

 当然とうぜん、モヤモヤをかかえた私の視線しせんは、山田やまだに向かうワケで、ひたいあせを流してる彼は、簡単かんたん説明せつめいしてくれる。

「さっきの先輩せんぱいたちは、あれだ、大塚おおつか先輩せんぱいの追っかけみたいなものなんだよ」

「追っかけ? え? 大塚おおつか先輩せんぱいってアイドルなの?」

「マジで人に興味きょうみないよな、大心池おごろちって」


 彼の辛辣しんらつなコメントをえてスルーした私は、ふと気づく。

 大塚おおつか先輩せんぱいに追っかけがたってことは、今と同じようなことがトモミンの身にもりかかった可能性かのうせいがあるってコト?


 いやいや、まさかね。

 なんて、楽観的らっかんてきに考えようとしてみたけど、無理だ。

 もしかして、トモミンが行方ゆくえ不明ふめいになったのって、さっきのが原因げんいんだったりしないよね?

 そんなくだらないことで、姿を消したり……しないよね?

 そう思えば思うほど、いや予感よかんふくらんでいく気がした。

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