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隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして  作者: 内村一樹
第4章 マリアベール

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第37話 小さなギャップ

 登校拒否とうこうきょひ宣言(せんげん)の後、花楓かえでは本当に学校に来なくなった。

 同じく、トモミンも依然いぜん行方(ゆくえ)不明(ふめい)のまま、必然的ひつぜんてきに1年2組の教室きょうしつには2つの空白くうはくが生まれる。

 それがまるで、私への当てつけのように感じられるのは、考えすぎかな?


 そんなことを考えながら、私は放課後ほうかごに入ったばかりの教室で、一人の男子を見ていた。

 急ぎ足で歩くその男子は、山田やまだ


 今週こんしゅうの火曜日に智美ともみが姿を消した翌日よくじつから、彼は今日まで3日間、時間を見つけてはトモミンを探すために様々(さまざま)な場所に足を向けているみたい。

 昨日きのうに関しては、午後ごごから急に早退そうたいしてまで、探しに出てたらしい。

 流石さすがにそれは親におこられたのかな、今日は律儀りちぎ授業じゅぎょうを受けてたけど、正直、授業じゅぎょうに身が入ってるようには見えなかった。


 多分たぶん花楓かえで今頃いまごろ同じようにトモミンを探してるんだろうな。

 正直しょうじきに言えば、花楓かえでさがすなら、そこまで時間は掛からないと思ってたけど、そう簡単かんたんな状況じゃないみたいだね。


 ねがわくば、早く見つかって欲しい。


 そう思いつつ、私は今のこの状況じょうきょうに少しだけ満足感まんぞくかんおぼえてた。

 ホント、友達ともだち危険きけんな目に合ってるってのに、いやな女だよね。

 花楓かえでが一人で解決かいけつしてしまうことは、トモミンが危険きけんな目に合うコト以上に、気にわないと思ってしまってる。


 そう言う私も、今日まで何もしなかったわけじゃないよ。

 トモミンと一緒いっしょに歩いた道を何度も往復おうふくしてみたり、ネット上で何か情報じょうほうが無いか調べて見たり、自分に出来そうなことは全部やってみた。

 だけど、私にできる事なんてたかが知れてて、ほとんど何もできなかったと言ってもいい。


 やっぱり、彼女の力が無いと、ダメなのかな?


 ここまで時間が掛かってることと、花楓かえで単独たんどくで動いてる事実じじつから、まず間違いなく、トモミンが行方ゆくえ不明ふめいになったことに、例の件がからんでるはず。


 みなみ智美ともみ感情かんじょう


 それを知って初めて、私達は彼女を見つけることができるんじゃないかな?


 トモミンを見つけ出す方法ほうほうを考える中で、そんなかんがえにいたった結果、私はとても重大じゅうだいなことに気が付いた。

 トモミンのこと、私はどれだけ知ってるんだろう?

 文化祭ぶんかさいの買い出しはんとして一緒に行動するようになって、少しだけ仲良くなった気でいたけど、私は彼女が何を考えてるのか、全然知らない。


 ううん。違う。

 知らないんじゃなくて、知ろうとしてなかった。

 ただ一緒に居て、心地ここちよければそれで良いって、そんな風に考えてたのかもしれない。

 最低さいていだよね。


 だけど、さら最低さいていなことに、私は傲慢ごうまんにもこう思ったんだ。

 今更いまさらだけど、トモミンのことを知りたいって。


 こんなことを考えてるって知ったら、花楓かえではどう思うのかな?

 いいや、今は花楓かえでのことを考えるのはやめておこう。

 そう決意した私は、今まさに教室きょうしつから出て行った山田やまだ背中せなかを見て、席を立つ。

 そして、かばんを手にして、出て行った彼を追いかけた。


山田やまだ

 そう呼び掛けると、山田やまだ一瞬いっしゅんだけ私をかえって、そのまま歩き去ろうとする。

 そんな彼の右手みぎてを強くにぎって、私は強引ごういんに引き留めた。


「なんだよ」

「待って、山田やまだ。少しだけ話がしたいんだけど」

「悪いけど、そんな時間は無い」

「トモミンを探しに行くんでしょ? 知ってる。だけど、今のやり方じゃ見つからないと思う」

「は? なんだよそれ」


 今のまま、がむしゃらにさがしても、トモミンを見つけることはできない。

 だからこそ、まず私達は、トモミンのことを知らなくちゃダメなんだ。

 そして、山田やまだはきっと、私の知らない彼女のことを知ってるはず。

 少なくとも、彼にとってトモミンは、きっと、ただの友達ともだちじゃないんだから。


「お願い。少しだけ協力きょうりょくして。私も、アンタに協力きょうりょくするから」

「だったら止めるなよ」

 よっぽどあせりを感じてるのか、山田やまだは私の手をりほどいてでも先に進みたそうだ。

 だけど、私も簡単かんたんに引き下がるわけにはいかない。

 今ここで私のうでほねれたとしても、トモミンを探してる人たちの努力が無駄骨むだぼねになっちゃうようなことは、絶対ぜったいけなくちゃいけないからね。


 そんな決死けっし覚悟かくごで、私は山田やまだの手をつかみ、彼のひとみをしばらく見つめた。

 すると、どこか居心地いごこちの悪そうな表情ひょうじょうを浮かべながら、山田やまだは口を開く。

「なんなんだよ、一体」

「話がしたいの。トモミンのこと。山田やまだが知ってることをおしえて欲しい」

「知ってること? 行きそうな所とかか? だったらもう、俺が何度も見て回ったよ」

「そう? 具体的ぐたいてきにどこに行った?」


 そう問いかけると、山田やまだ憮然ぶぜんとした面持おももちで施設しせつなどの名前をげていく。

 駅前えきまえ本屋ほんやとか、画材がざいなどの雑貨ざっか店、質素しっそなカフェに、学校がっこう教室名きょうしつめいまで。

 自分とはば広く調しらべてたみたいだね。


 だけど、多分この情報じょうほうじゃトモミンは見つからない気がする。

 だって、花楓かえで間違まちがいなく、全部ぜんぶ調しらべてるはずだから。

 もっと、こう、花楓かえでも誰も知らないような情報……。

 って、そんなもの、私と山田やまだが知ってるワケもないよね。


 他に考えられることがあるとしたら?

 外的がいてき要因よういんとかかな?

 たとえば、トモミンの交友こうゆう関係。

「山田はさ、トモミンの友達って、誰がいるか知ってる?」

「行った場所の話は終わりかよ……友達ともだちって、お前と黒光くろみつじゃないのか?」

「他には?」

「いや、他に誰かと話してるところは見たことない……って言うか、文化祭ぶんかさい前まで、かかわりが無かったから、知らない」

「……」


 ダメだ、山田やまだ案外あんがいトモミンのことを知らないみたい。

「おい、なんだよその目」

「ううん、別に」

絶対ぜったい何かあるだろ!?」

「無いって。それじゃあ、トモミンのことをきらってそうな人とかは?」

「は? そんな奴いるのか?」

「それを知らないから聞いてるんだけど」

「いないんじゃないか?」

「そっか」


 誰にもきらわれない人って、存在するんだね。

 私は絶対に、大勢おおぜいきらわれてる自信じしんがあるけど。

 ま、私と比較ひかくするのはまた違う話かな。


 となれば、まだ手がかりが無いままだけど。

 他に聞けることって何かあるかな?


 私がそんなことを考えてると、ふと思い出したように山田やまだが告げる。

「そう言えば」

「何!?」

「食いつき良すぎだろ。いや、話は変わるんだけど、お前ら、ちゃんと仲直りしとけよ?」

「は? それはどういう?」

「いや、お前と黒光くろみつのことだよ。絶賛ぜっさん喧嘩中(けんかちゅう)なんだろ? それ、早く解消かいしょうしとけって言ってんの」

「なんであんたにそんなこと言われなくちゃいけないわけ?」

「いや、別に俺はどうでも良いんだけどさ」


 そこで気まずそうに言葉ことばを切った山田やまだは、右のほおをポリポリときながら、ボソッとこぼした。

みなみが、悲しむかなって。それだけだ」

「……え?」

「いやいや。なにほうけてんだよ。お前も知ってるだろ? みなみはそう言うの、気にするタイプだ」

「それはそうかもだけど」

「前に言ってたぞ。3人で居るのは本当に楽しいって。今の関係は、奇跡きせきみたいだって。めっちゃいい笑顔で、話してた」


 少しだけ気恥きはずかしそうにしてる山田やまだは、だからと前置まえおきをして、言葉を付けす。

「そんな関係かんけいが、自分のせいでこわれたって、みなみに思わせないでやってくれよ」

「ちょっと待って、別にそんなんじゃ」

「お前らがどう思おうと、みなみは多分、そう思うぞ。だってあいつは、異常いじょうなまでに自罰的じばつてきな考え方してるからな」


 異常いじょうなまでに自罰じばつてき


 トモミンはそんなに自罰じばつてきだったっけ?

 たしかに、引っ込み思案じあんな所があるとは思うけど、自罰的じばつてきってほどのものかな?


 きゅうに考え込み始めた私を見て、戸惑とまどいを見せる山田やまだ

 そんな彼を見ながら考えをめぐらせていた私は、小さなギャップに気が付いた。

 私と、山田やまだの間にある、ギャップ。


 それに気が付くと同時どうじに、私はつい先日せんじつ耳にした言葉を思い出したのだった。

『人ってさ、自分の見たいものを見るくせがあると思わないかい?』

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