表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして  作者: 内村一樹
第4章 マリアベール

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/63

第33話 面倒な女

 もうこれ以上は食べきれないってくらい、大量たいりょうのスイーツを堪能たんのうした私達は、駅まで歩いた。

 スイーツの力ですっかり元気を取り戻した花楓かえでが、もう少し遊びたそうにしてたけど、正直しょうじき無理むり

 甘いものは好きだけど、過剰かじょう摂取せっしゅはダメだね。ちょっと気分悪くなりそう。


 私のとなりで少し顔をあおざめてるトモミンも同じ気持ちだったらしく、全てをさっした花楓かえでが、意をんでくれたってワケ。

「それじゃあ、また明日学校でね!」

「はい。今日はありがとうございました」

「2人とも、もう暗いから気を付けて」

「はいよ~ スーミィもね!」


 最寄もより駅に辿たどり着いた私達は、そんな言葉を交わした後、それぞれの帰路きろについた。

 家に向かって歩きながら、私は今日あったことを振り返る。


 まず初めに思い返したのは、当然とうぜん、あのチャラ男の事。

 初めはただのナンパだって思ってたけど、私達がその場を去ろうとしたら、急におそって来たワケだけど。

 あれは何だったんだろう?


 なんとなく、その疑問ぎもんの答えに心当たりがないワケじゃない。

 だけどそれは、花楓かえでの力が関係かんけいしてそう、って言うボンヤリとしたもので、確信かくしんは全くと言って良いほど持てないし。

 かりに彼女の力が原因げんいんだとしたら、きっかけは何だったのかな?


 少なくとも、今までに私が見て来た異変いへんの中で、今日のは明らかに突発的とっぱつてきだった。

 なんてったって、花楓かえで自身(じしん)予期よきしてなかったし。

「明日、花楓かえで直接ちょくせつ聞くかなぁ」


 チャットで聞いても良いけど、おなかがいっぱいになりすぎてくるしいから、今日は早めに休みたい。

 花楓かえでとチャットし始めると、絶対ぜったいに長くなるし。なんだったら深夜しんやまで電話でんわしたがるし。

 もし花楓かえで彼氏かれしが出来たら、多分、面倒めんどうくさがられるタイプなんだろうな。

 そして、そんな彼氏かれしに対する不平ふへい不満(ふまん)を、深夜しんやまで電話してきそう……。


「なんか、普通ふつう想像そうぞうできるんだけど。出来る事なら、しばらくの間はひとり身で居て欲しいな」

 なんて、滅茶苦茶めちゃくちゃ失礼(しつれい)なことをつぶやいてみる。

「まぁ、一番いちばん面倒めんどうな女は、確実かくじつに私なんだろうけど。可愛かわいげもないしねぇ」


 少し冷え始めてる11月の夕方ゆうがた

 すっかり暗くなってる住宅街じゅうたくがいの道を歩く私は、多分すごく幸せなんだろうな。

 あと5か月もしたら私達3人は高校2年生になるワケで、そうしたら、クラスえではなばなれになるかもしれない。


 その先を言うなら、同じ学校で一緒に居れるのも、残り2年と半年も無いんだよね。


 こんなことを考えるなんて、われながらずかしい。

 だけど、そうやってずかしがってたら、せっかく一緒いっしょに居てくれてる貴重きちょう友達ともだちとの時間が、無くなっちゃうよね。

 花楓かえでとトモミンと、もっと沢山たくさん、話をしよう。

 まずは、明日あした学校がっこうに行って、しっかりと挨拶あいさつをする。

 まぁ、今までもしてたけど、やっぱり基本をおろそかにするわけにはいかないしね。


 そんなことを考えながら家に辿たどり着いた私は、お風呂と歯磨はみがきをして、すぐにベッドにもぐりこんだ。

 きっと、甘味かんみぎでふとるなぁ。

 布団ふとんの中でどうでも良いことを考えている間に、ねむりに落ちてた私は、いつものように目覚めざましにたたき起こされて、学校がっこうに向かう。

 心なしか、いつもよりも学校に向かう足がかるく感じられたのは、きっと楽しみだったからかな。


 だけど、その日の学校がっこうはいつも通りじゃなかった。

 私がそれに気が付いたのは、朝のHRが始まる少し前。

 花楓かえで普通ふつうに学校に来たし、クラスメイト達のギスギス感も健在けんざいだった。

 そんな中、教室きょうしつ最前列さいぜんれつにある1つのせきが、空白くうはくだったんだ。


「ん? みなみはどうした? 誰か、何か聞いてるか?」

 教卓きょうたくの目の前にある空白くうはくに、田中たなか先生が気づかないワケがない。

 首をかしげながらも、出欠簿しゅっけつぼに何やらメモする田中たなか先生を見た私は、すぐに花楓かえで視線しせんうつす。


「スーミィも、聞いてないの……?」

 ボソッとつぶやく彼女のひとみには、不安ふあんとも絶望ぜつぼうとも呼べる色が浮かんでる。

 いやいや、ただ昨日きのう食べ過ぎたせいで、体調たいちょうくずしただけかもしれないじゃん。


 なんて、楽観的らっかんてきに考えてみるけど、どうにもに落ちない自分がいる。

 どうして花楓かえでが、そんなに不安がってるワケ?

 そんな風に不安そうにされると、私まで不安になるじゃん。

 むねの内にき上がってくる不安は、強制的きょうせいてきに昨日の出来事できごとを思い起こさせる。


 私におそかって来たチャラ男のコト。

 そんな記憶きおくと同時に、今までに見て来た異変いへん数々(かずかず)と、ここ数か月で知識ちしきが、つながっていく。


 花楓かえでこころむということは、その人の心から感情かんじょうとかを引っ張り出してしまうおそれがあるというコト。

 あんまり考えないようにしてたけど、それってつまり、近くにればほど、その影響えいきょうを受けやすいってコト、だよね?


 当たり前だけど、少しだけこわ事実じじつ


 私がそんな考えにいたった瞬間しゅんかん

 花楓かえでがすっくと立ちあがった。

 そんな彼女を見て、私は自分がとんでもない失敗しっぱいおかしてしまったことに気が付く。

「ちがっ! 花楓かえで!!」


 昨日きのうと同じように、うつむきながら立ち上がった彼女かのじょは、私の方なんかまったく見向みむきもせずに教室きょうしつからけ出していく。

「お、おい! 黒光くろみつ!? どうしたんだ!?」

 田中たなか先生せんせいの呼びかけも、今の彼女には聞こえてないらしい。


 追いかけなくちゃ。

 はやる気持ちにき動かされて、立ち上がろうとした私は、直後ちょくご教室きょうしつ中の視線しせん集中しゅうちゅうしていることに気が付く。

「……大心池おごろち、どうした? 何があった?」

「あ、いや、その……」


 当然とうぜんだけど、全部ぜんぶありのままに説明せつめいするわけにはいかない。

 かといって、困惑こんわくしてる先生せんせいり切って追いかけても、私に何ができる?

 友達ともだちに対して、こわいなんて。

 そんなことを考えてしまった私に、何ができるの?


「何でも、ありません」

 それだけ言ってゆっくりとせきに座った私は、ただひたすらに居心地いごこちわる教室きょうしつつづけた。

 それが贖罪しょくざいになるとでも、思ってるのかな?

 こんなだから、また友達ともだちが去っていくんだろうな。


 延々(えんえん)と、授業じゅぎょうも聞かずにそんなことを考え続けていると、気が付けば昼休ひるやすみに入ってた。

 とくにおなかいたわけでも無いから、私はせきに座り続ける。


 もしかしたら、ここで待ってれば花楓かえでが戻ってくるかもしれないよね。

 そして、ほおふくらませながら、私に文句もんくを言うんだ。

 そしたら、私は彼女の文句もんくを甘んじて受けよう。

 きっと、それくらいしかできることは無いから。


大心池おごろちさん」

「……」

「あの、大心池おごろちさん。大丈夫かな?」

「……なんですか?」

 やけにしつこく声をけて来る声に、苛立いらだちをぶつけながらかおを上げた私は、相手が大塚おおつか先輩せんぱいだと気が付いた。


大塚おおつか先輩せんぱい?」

「ちょっと大丈夫かな? 少し話がしたいんだけど」

 彼はそう言うと、少しだけ居心地いごこちの悪そうな表情で周囲を見渡して、小さくかたすくめた。


 まぁ、これだけ注目されてれば、居心地いごこち悪いのもうなずけるよね。

 この場合、注目されてるのは先輩せんぱいかな? それとも私?


 どうでも良いことを考えるのは後にして、私はうながされるままに大塚おおつか先輩と教室きょうしつを出る。

 そうして、依然いぜんそそがれる視線しせんをかき分けるようにして、廊下ろうかを歩いたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ