表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして  作者: 内村一樹
第3章 塔

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/63

第25話 文化祭

「ふっふっふ、スーミィ、トモミン、おくれずにワタシについて来られるかな!? 時間は限られてるからね、急いで全部の出し物を見て回るよ!」

「ちょっと、全部回るって本気ほんき? 一応いちおう、私達もふくめて全員がクラスのシフトに入ってるんだからね?」

「だから急ぐんじゃん! ちゃんと計画的けいかくてきに回らないとね。演劇系えんげきけいとかの上映時間じょうえいじかんが決まってるのは、ねらちで行こう!」

「あの……全部回るってことは食べ物も全部買うんですか? 私、食べきれる気がしません……」

「むむっ!? それは確かに……でもあきらめたく無いなぁ。そうだ、食べきれなかったら山田やまだ君に渡せばいいんだよ!」

「その山田やまだから、たこ焼きをおごってもらうつもりじゃなかったっけ? それも3食分」

「だから、そのお返しとして、渡すんだよ」

「食べ残しを? 行儀ぎょうぎ悪いなぁ」

「とりあえずは、お腹と相談そうだんしながら、都度つど都度(つど)考えよう!」

「……計画的けいかくてきにって言ってませんでしたっけ?」


 文化祭ぶんかさいが始まると同時に、今にもけ出して行きそうな花楓かえでに、私とみなみは必死に食らいつく。

 山田やまだ文化祭ぶんかさいが始まってすぐがシフトだったはずだから、もう教室に向かったみたい。


 それにしても、花楓かえでは本当に文化祭ぶんかさいが楽しみだったんだなぁ。

 まるで、初めての文化祭ぶんかさいとでも言うようにはしゃいでる彼女の様子ようすは、はたから見てても微笑ほほえましいよね。

 私ですら、文化祭ぶんかさい日常(にちじょう)(かん)に少し浮足うきあし()ってるんだから。

 ……って言うか、私が感じてるこの高揚感こうようかんって、多分、花楓かえでの力で引っ張り出されたものな気がするんだけど。

 まぁ、不快ふかいな物でもないし、別にいいか。

 引っ張り出されたってことは、まぎれもなく、私の感情ってことだもんね。


 花楓かえでを追いかけながら、みなみと顔を見合わせた私は、小さな苦笑にがわらいを浮かべる。

 かく言うみなみも、いやがってる素振そぶりは無い。むしろ、少し楽しそうに私には見えた。


 そんな私達がまず初めに向かったのは、3年3組の演劇えんげき演目えんもくはオズの魔法まほう使い。

 教室きょうしつし切って上演じょうえんされたげきは、ありがちではあったけど、かなり作りこまれてた。

 とくに、魔法まほう演出えんしゅつ工夫くふうがこなされてて、見ごたえがあったと思う。周囲もどよめいてたから、やっぱりすごかったみたい。

 えんじてた魔法まほう使つかやくの人もおどろいてたように見えたけど。あれ、どうやってたのかな?

 ……まさか、花楓かえでが見せた幻覚げんかく、とかじゃないよね?

 なんて考えながら拍手はくしゅしてると、となりに座ってた花楓かえでが立ち上がって声をり上げる。


感動かんどうしました! アンコール! アンコール!」

「ちょっと!? 演劇えんげきでアンコールにこたえるわけないでしょ!? って言うか、アンコール見てたら時間が足りないじゃん!」

「あはは……」


 周囲しゅういから注がれる苦笑にがわらいからのがれるため、私とみなみ花楓かえでを引っ張って教室きょうしつを出た。

 ずかしいったらないんだけど。ちょっと今日の花楓かえではハシャギすぎじゃない?

 なんていう私の脳内のうない抗議こうぎにもかまわず、花楓かえでは次の出し物に突き進んでいく。


 お化け屋敷やしきでは、こわがるみなみをお化けと一緒になっておどろかせ。

 生徒せいと手製(てせい)のイライラぼうでは何度も失敗しっぱいしたすえに私に泣きつき。

 ボーリングでは、見事みごとにストライクを決めて盛大せいだいなガッツポーズを披露ひろうして見せた。


 それはもう、見事みごと文化祭ぶんかさいを楽しんでる彼女の姿すがたが、私にはまぶしく見える。

 まぁ、今日くらいは別にいいよね?

 クラスのゴタゴタとか、なやみ事とか、そんなこと全部ぜんぶわすれられるのが、まつりってものでしょ?

 次第しだいにそんな考えに頭の中がまっていったのは、仕方ないよね?

 一緒いっしょに回ってるみなみも、わらい声が少しずつ大きくなっていってる気がする。


 そうこうしてると、すぐに私達3人のシフトの時間がやってきて、渋々(しぶしぶ)、教室に向かった。

 シフトをほったらかして、3人で他の出し物を回ってたいけど、まあ、そう言うわけにもいかないよね。

 教室に向かう途中とちゅうに買ったフランクフルトを頬張ほおばりながら、私達は教室に到着とうちゃくする。


 客の対応たいおうをしてたクラスメイトから引きいで、接客せっきゃく担当たんとうするのは花楓かえで

 受付うけつけでスタンプラリーを押したりするのが、みなみ

 そして私は、射的しゃてき景品けいひんならべたりバルーンプールの風船ふうせん補充ほじゅうしたりする雑用ざつよう(やく)

 私達3人の他にも、あと2人男子がいるけど、全然話したことないからよく知らない。


 そんなメンバーで約1時間、仕事をしなくちゃいけない。

 正直しょうじきに言えば、少し不安もあったけど、思ってたより何事なにごとも無く時間は過ぎてった。

 いつも破天荒はてんこうな様子しか見てないから忘れてたけど、根本的こんぽんてき花楓かえでは人付き合いがうまいんだよね。

 それは初対面しょたいめんに対しても発揮はっきされる長所ちょうしょだから、接客せっきゃくにはうってつけらしい。


 そんな調子ちょうし接客せっきゃくをしていると、山田やまだ教室きょうしつにやって来た。

 一緒いっしょに回ってるのは野球部やきゅうぶ部員ぶいんかな?

 孤立こりつしてたのが友人ゆうじんが出来るまでなったなら、大丈夫そうだね。


 両手りょうてにたこ焼きを持った彼を観察かんさつしていると、顔を引きつらせた山田がたこ焼きのパックを渡してくる。

「これ、約束やくそくのたこ焼きだ」

律儀りちぎだなぁ」

「お! たこ焼きの良いにおい! 山田やまだ君、約束やくそくを守ってくれたんだね。ありがとう!」

 においをぎつけて、ってくる花楓かえでに、山田やまだは何も言わずにたこ焼きをわたす。

 そうして、おもむろにみなみの元に歩み寄った山田やまだは、最後に持ってたたこ焼きを彼女に渡した。


「こ、これ、出来できてって言ってたから、火傷やけどに気を付けて食えよ」

「あ、ありがとうございます。山田やまだ君は食べないんですか?」

「お、俺はもう食ったから、それじゃ。シフト、頑張がんばってな」


 なんか、私と花楓かえでに対する態度たいどと、明らかに違うよね?

 むねか? むねのチカラか?

 教室きょうしつから去っていく山田やまだが、部員ぶいん達に茶化ちゃかされている背中せなか見送みおくりながら、私がそんなことを考えてると、そばに寄って来た花楓かえで小声こごえで言った。

「違うよスーミィ、あれはきっとあいのチカラなのだよ」

「あ~、なるほど」

黒光くろみつさん!? 大心池おごろちさん!? な、なにを言ってるんですか!?」

「べっつにぃ~? ね、スーミィ」

「そうそう、青春せいしゅんしてるんだなぁって、話してただけだから、気にしないで」


 みなみがどれだけ否定ひていしても、花楓かえでの前じゃそんなものは通用つうようしないからね。

 って言うか、なんとなく山田やまだがそんな雰囲気ふんいきを出してる気はしてたけど、意外いがいみなみ満更まんざらじゃなさそうに見えるのは気のせいかな?


 なんてことがあってからというもの、赤面せきめんしたままのみなみをからかってたら、私達の教室に珍客ちんきゃくがやって来た。

 私がそれに気が付いたのは、見た事のある女子生徒の姿を目にしたから。

 佐藤さとう亜美あみ

 そう言えば文化祭ぶんかさいの間、全然ぜんぜん姿(すがた)を見ないと思ってたけど、彼女は彼女で回ってたらしい。


 とはいえ、1人で回ってたわけじゃなさそう。

 って言うのも、佐藤さとうは1人の男子だんし生徒せいと一緒いっしょに教室にやって来たんだ。

「ちょっと先輩せんぱい……どうしてここに来る必要ひつようがあるんですか? ウチ、早く別の出し物を見に行きたいんですけど」

「まぁまぁ、ぼく亜美あみちゃんのクラスの出し物に興味きょうみがあるから。せっかくだから、見て行こうよ」


 そう言って、さわやかなスマイルをみなみに向けた後、スタンプカードを差し出した男子だんし生徒せいと

 清潔感せいけつかんただよわせるサラサラの髪型かみがたと、ととのった顔立ち、そしてキラキラとした目を持ったかれのことを、私はどこかで見たことがある気がする。

 彼のスマイルに動揺どうようしたのか、手をふるわせながらスタンプを押したみなみに、佐藤さとうが目をほそめる。

「こんにちは、ここが亜美あみちゃんのクラスの出し物ですね、えっと、縁日えんにちか。楽しそうだ」


 自分の背後はいごで放たれてる佐藤さとうするど眼光がんこうに気づくことなく、男子だんし生徒は教室きょうしつに入ってきた。

 そして、まっすぐに花楓かえでの元に向かったかと思うと、再びさわやかな笑顔えがおを彼女に向ける。


「やぁ、久しぶりですね、黒光くろみつ花楓かえでさん」

大塚おおつか先輩せんぱい。お久しぶりです。文化祭ぶんかさい準備じゅんび運営うんえい、お疲れ様です」

 どうやら、花楓かえではこの男子生徒だんしせいとのことを知ってるらしい。


 何で知ってるんだろう?

 そんなことを考えた私は、ふと、彼の横顔よこがおを見て思い出した。

 見たことがある。そう思ったのは当然とうぜんだ。

 だって、今日の文化祭ぶんかさい開会式かいかいしきで、私達わたしたち一般生徒(いっぱんせいと)とは別に体育館たいいくかんの前に並んで立ってたんだから。

 あそこにいたってことは、多分たぶん彼は生徒会せいとかい役員やくいんってことだよね。


 そんな彼のことを花楓かえでが知ってるのは納得なっとくできる。

 だけど、彼が花楓かえでのことを知ってるのはなんでだろう?

 そんな私の疑問ぎもんを知ってか知らずか、大塚おおつか先輩(せんぱい)自身が、答えを告げてくれたのだった。


「ところで、黒光くろみつ花楓かえでさん。生徒会せいとかいに入って欲しいって話、考えてくれましたか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ