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隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして  作者: 内村一樹
第3章 塔

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第24話 高揚感の源は

 結果けっかから言うと、その日以降(いこう)佐藤さとうは、なしくずし的にい出しはんのメンバーとしてあつかわれるようになった。

 だんボールの収集しゅうしゅうとか、消耗品しょうもうひんの買い出しとか、4人じゃ少し人手ひとでが足りないとも思ってたから、普通ふつうたすけられたと思う。


 そんな私達に影響えいきょうされたのか、教室きょうしつ作業さぎょうをするクラスメイト達にも変化へんかが現れたみたい。

 花楓かえでに聞いたところだと、佐藤さとうが買い出しはん吸収きゅうしゅうされてからというもの、祇園寺ぎおんじりをひそめたおかげで、作業さぎょうが一気に進み始めたらしい。


 それはつまり、クラスの気まずい雰囲気ふんいきまれることなく、ちゃんと文化祭ぶんかさいを楽しみたいって考えてる生徒せいとるってことだよね。

 そういう意味いみでは、3つ目の派閥はばつが一番大きいって佐藤さとうの言葉は、あながち間違まちがいじゃなかったのかな。


 1週間(しゅうかん)かけて、出しもの仕上しあげていった私達のクラスは、初めのおくれを取り戻し、無事ぶじ準備(じゅんび)を終えることができた。

 そして文化祭ぶんかさい当日とうじつの今日、まだあさはやくから教室きょうしつに来てしまった私は、同じく早い時間じかん教室きょうしつにやって来たみなみと2人で、ボーっとしてる。


 い出しはんだった私達も、準備じゅんび終盤しゅうばんは買い物に行くよりも教室きょうしつ作業さぎょうを手伝うことが多かった。

 おかげで、教室きょうしつかべり付けられてる装飾そうしょく(るい)のうち、どれが私の作ったものか、ある程度ていど見分けられるようになってる。

 まぁ、そんなこと分かっても何の意味いみも無いんだけどね。


大心池おごろちさんって、手先てさき器用きようですよね……」

「そう? まぁ、こまかい作業さぎょうは好きだけど。そういうみなみさんの方が、多芸たげいだと思うんだけど」

 すっかりとなりにいることが多くなったみなみ智美(ともみ)

 彼女かのじょにそう言った私は、射的しゃてきのコーナーに目を向けた。


 文化祭ぶんかさいあそびに来るきゃくの中には、おさなもいる。

 そんな子どもたちにもたのしんでもらえるようにと、私達のもの随所ずいしょには、彼女が作った可愛かわいらしいねこのキャラクターがあしらわれてる。

 デザインもイラストも、全部ぜんぶ(みなみ)手掛てがけたもの。

 素直すなおにすごいと思う。

 って言うか、うらやましいんだけど。その才能さいのう、少しだけでも分けてもらえたら、もの上手うまくなれるんだろうな。


「私なんか全然ぜんぜん……くようになったのも、家ですることないから、家事かじ合間あいまに楽しんでただけなので」

「どんな理由りゆうだって、楽しめてたんならそれでいいと私は思うけどな。しかも、それで上手じょうずになったんでしょ? だとしたら、それはまぎれもなくみなみさんの特技とくぎだよ」

「そ、そうでしょうか……」

「私が適当てきとう言ってるとでも?」

「そ、そんなつもりは!」

冗談じょうだんだって」


 こうしてみなみと2人で会話かいわするようになるなんて、1か月前の私は想像そうぞうもしなかったな。

 そもそも、彼女のことを何も知らなかったし。

 いやまぁ? 今もくわしく知ってるワケじゃないけど、少しだけ、彼女との話し方くらいは分かってきたかもしれない。


 冗談じょうだんだという私の言葉を聞いて、ホッとむねで下ろすみなみ

 そんな彼女に、私は1つ質問しつもんしたくなった。

「そういえばさ、みなみさんにとって、祇園寺ぎおんじってどんな奴に見えてるの?」

「え? 祇園寺ぎおんじ君、ですか?」

 不思議ふしぎそうな表情ひょうじょうで首をかしげる彼女に、私はうなずいて返事をする。


「……あんまり話したことないので、良く知らないですけど、正直しょうじき、ちょっとこわいです」

「どうしてこわいの?」

「どうして……なんでしょうか。なんていうか、祇園寺ぎおんじ君って、何をやらせても上手うまくこなしちゃう、すごい人って印象いんしょうが強いんです」

「ふーん。そうなんだ? 私はそんな風に思ったことないけどなぁ」

大心池おごろちさんも、私から見れば何でもこなしてしまいそうに見えますよ?」

「え? それじゃあ、私のこともこわいの?」

「……本音ほんねを言えば、少しこわかったです」

「へ~」

「で、でも、話してみたらこわくなかったですし! 思ってたよりも話しやすかったので、その……あ、何でもないです」

「なに? そこまで言うなら最後さいごまで聞かせて欲しいんだけど?」

「そ、それは、ずかしいのでダメです」

「まぁいっか。で、何でもこなすのが、どうしてこわいの?」

「……うまく言えてるのか分からないですけど、祇園寺ぎおんじ君が出来ることを私が出来なかったら、なんて言われるんだろう、って。思っちゃうんです」


 なるほど、みなみの言いたいことはなんとなく分かった。

 こわいっていうより、みなみ自信じしんが無さすぎるだけな気もするけど、祇園寺ぎおんじ特徴とくちょうを現す一つの見方としては、面白いかもしれない。

 そんなことを考えてると、不意ふいに教室のとびらけて山田やまだが入って来た。


「2人ともはやいな」

「おはようございます。山田やまだ君もはやいですね」

「俺はまぁ、ちょっと走り込んで来ただけだから」

文化祭ぶんかさい当日とうじつあさはしり込みって……もの好きにもほどがあるでしょ」

「いいだろべつに」

わるいとは言ってない。むしろめたつもりだけど」

「え? めてたんですか?」

みなみ大心池おごろち感覚かんかくがズレてるだけだ。無視むししといたほうが良いぞ」


 かたからげてたかばんを、教室きょうしつすみいた山田やまだは、その辺にあった椅子いすこしを下ろす。

 そんな彼をにらんでた私は、1つ息をくとともに気をゆるめて、口を開く。


「ところで、山田やまだにとって祇園寺ぎおんじってどんな生徒に見えてるの?」

「急になんだよ?」

「ちょっと気になっただけ。で、どうなの?」

「変な奴だなぁ……祇園寺ぎおんじか。まぁ、そうだな。バスケにかんしてはかなりストイックだって話なら聞いたことがある」

「そうなんだ?」

「らしい。聞いた話だけどな。でもま、確かに練習れんしゅうはしっかりこなしてるみたいだぞ?」


 そう言った後、大きな欠伸あくびをする山田やまだの言葉を引きぐように、みなみが小さな口を開いた。

「そう言えば、夏休なつやすみ前に、佐藤さとうさんがいつも愚痴ぐちを言ってたのを覚えてます」

愚痴ぐち?」

「はい、全然ぜんぜんかまってくれないって」

「あぁ、なるほどね」

案外あんがい、そういったすれちがいが原因げんいんで、あの2人はわかれたのかもな」


 まさに他人事たにんごとと言わんばかりに、大きな背伸せのびをしながらつぶや山田やまだ

 彼のその言葉ことばに、なんて反応はんのうすればいいのか、少しなやんでたところで、廊下ろうかからパタパタという軽快けいかい足音あしおとひびいて来る。

 その足音あしおとだけで、私達わたしたち3人はだれがこの教室きょうしつに向かって来てるのか、さっすることができたらしい。


 たがいに顔を見合わせて苦笑にがわらいをかべた後、全員ぜんいんとびら視線しせんを向ける。

 直後ちょくご、ガラガラッというとびらひらく音と共に、花楓かえで姿すがたを現した。


「おっはよ~う! ついに文化祭ぶんかさいだね!! って、買い出しはんしか集まって無いジャン!!」

「まだ朝早いですし……」

「そうだな。それに、佐藤さとうは来てないぞ……って、そう言えばあいつは買い出しはんってわけでも無いのか」

「あ、山田やまだ君! 佐藤さとうさんをけ者にするつもりなのかな!?」

「そう言うわけじゃないけど」

山田やまだ君、チクられたくなかったら、私達3人にたこ焼きをおごってください!」

「それくらいなら別におごるけど」

「やったぁ! それじゃあ、その場で食べる分と、持ちかえり分として翌日よくじつの朝とお昼の分までおごってもらおうかな」

おごるか!! って言うか、どんだけう気だよ!?」

「ふふふ……」


 花楓かえでが来るだけで、しずかな教室きょうしつにぎやかになっていく。

 そんな3人をながめながらも、私は今しがた2人から聞いた話を頭の中で整理せいりしてた。

 そうすれば、花楓かえでも内容を把握はあくできるはずだし、きっと、それが何かの役に立つはずだから。


「スーミィ? 何を考えてるのかな?」

「別に? って言うか、花楓かえで相変あいかわらずあさでもテンションたかいよね」

「朝早くから教室で待機たいきしてるスーミィに言われたくないなぁ」

 それを言われたら、ぐうの音も出ない……。


 それからしばらく、4人で談笑だんしょうしていると、少しずつクラスメイト達が教室きょうしつに顔を出し始めた。

 それに合わせるように、学校がっこう全体(ぜんたい)にぎやかになっていく。

 ほどなくして、校内放送こうないほうそう体育館たいいくかんに集められた私達は、開会式かいかいしきに参列した。


 1か月間準備(じゅんび)すすめて来た文化祭ぶんかさいが、ついに開幕かいまくする。

 高校こうこうで初めての文化祭ぶんかさい

 際限さいげんなくき出して来る、この高揚感こうようかんみなもとはどこなんだろう?

 なんとなく花楓かえで視線しせんを向けた私は、いつにもしてにこやかな彼女の表情ひょうじょうに、こたえを見た気がしたのだった。

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