表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして  作者: 内村一樹
第3章 塔

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/63

第22話 熱い視線

 祇園寺ぎおんじたちが笑い、取巻とりまきが笑い、そのさまを見て佐藤さとういしばる。

 よっぽどくやしいのか、そしてずかしいのか、彼女はかたくなに私と視線しせんわそうとしない。


 まぁ、べつにいいけど。

 もし今の彼女かのじょからたすけをもとめられても、私にできることはかぎられてるワケだし。

 それだったら、私の勝手かって独断どくだんってことにしてもらった方が、後々(あとあと)都合(つごう)が良い気がするしね。


 背後はいご気配けはいを消すことに専念せんねんしてるみなみに、かる視線しせんげた私は、まっすぐ祇園寺ぎおんじに向かって歩きだす。

 もちろん、教室中きょうしつじゅう視線しせんそそがれるけど、そんなのどうだっていい。


 ほんの数秒すうびょうで、祇園寺ぎおんじの目の前に到達とうたつした私は、そのまま彼のわきを通りぎて、最前列さいぜんれつつくえに向かう。

 そのつくえこそが、みなみ智美(ともみ)せきだったはず。

 教卓きょうたくのすぐ目の前という、なんとも可哀かわいそうな座席ざせき


 ひっくり返された椅子いすの乗せられたつくえを少しだけずらした私は、引き出しの中にあったスマホを手に取ると、きびすを返してとびらに向かった。

 そんな間も、多くの視線しせんが向けられてくる。

 ここまで、一連いちれんの動きを見てきたクラスメイト達は、ここでようやく私達が戻って来た理由りゆうを知ったみたい。


 何をするでもなく歩いた経路けいろを戻った私は、とびらもとで立ちくしてるみなみにスマホをわたした。

「はい、これでしょ?」

「ぁ……は、はい。ありがとうございます」

「そう言えば、連絡先れんらくさき登録とうろくしてなかったよね。ついでだから、しておこうよ」

「え? はい。分かりました」


 なんでこの状況じょうきょうで?

 って言いたそうな表情ひょうじょうを浮かべたみなみ無視むしして、私は彼女と連絡先れんらくさき交換こうかんを終わらせる。


 そんな私達を見て、教室きょうしつの中の空気くうきゆるはじめた瞬間しゅんかん

 私はすかさず、佐藤さとうに声をける。


「そう言えば佐藤さとうさん。さっき田中たなか先生が呼んでたよ。なんか、中間ちゅうかんテストについて話があるって。で、私達さ、佐藤さとうさんをれて職員室しょくいんしつに戻りますって言っちゃったんだけど、少し時間じかん良いかな?」

「……」


 ゆるみかけてた空気くうきが、もう一度張りつめる。

 まぁ、クラスメイト達が緊張きんちょうするのも無理むりはないと思う。

 だって、私の言葉が気にわなかったらしい祇園寺ぎおんじが、怒気どきはらんだいきいたからね。


「そんなうそつうじると思ってるのか?」

「ん? アンタに対して話したつもりは無いんだけど?」

「……」

佐藤さとうさん。あんまり先生を待たせるのも悪いから、早く決めてくれない? バックレる? それとも、一緒に行く?」

「なるほどなぁ、そうやってまた先生にチクるってワケだ」


 小さく笑った祇園寺ぎおんじは、机の上からりて私のほうに1()()み出してきた。

 ポケットに手を入れて私を見下ろして来る彼の姿には、それなりに威圧感いあつかんを覚えてしまう。

 私と彼とじゃ体格たいかくちがうし、仕方ない。

 そういう意味では、彼をこれ以上刺激(しげき)しない方が良い気がする。


 それに、花楓かえでもチャットで言ってた。

 佐藤さとうを助けて欲しい。

 彼女の言うとおり、今は祇園寺ぎおんじと言いあらそうよりも、優先ゆうせんするべきコトがあるよね。

 そんなことは分かってるけど、祇園寺ぎおんじの方はっかかってくる気満々(まんまん)みたい。


「なんか勘違かんちがいしてるみたいだけど、別に私は佐藤さとうを助けようなんて思ってないよ。別に仲が良いわけでも無いし、むしろきらわれてるみたいだし。助けても良いことないじゃん」

 取りえず、さりげないフォローを入れてみる。

 だけど、そんな私のフォローは1言で一蹴いっしゅうされてしまった。


「口では何とでも言えるよな?」

「それを言い出したら、アンタがまだ佐藤さとうに対して未練みれんタラタラだってことも言えるよね?」

「んでそうなるんだよ!?」

「だってそうでしょ? 気になる相手だから、ちょっかい掛けてるんじゃないの?」

「はぁ? んなワケねぇだろ! 気にわねぇから―――」

「口では何とでも言えるよね?」


 明らかに祇園寺ぎおんじいかりのバロメーターが上がってる。

 まるで猛獣もうじゅうのようなするど眼光がんこうが、私をつらぬいた。

 眼光がんこう貫通かんつうしたせいかな? うしろにいるみなみが小さな悲鳴ひめいを上げて、後退あとずさる。


 多分たぶん、彼女の反応はんのう普通ふつうなんだろうけど、不思議ふしぎなことに、私は目の前にまでやって来た祇園寺ぎおんじ恐怖きょうふかんじなかった。

 なんでかな?

 もしかしたら、野球部やきゅうぶ部室ぶしつでの出来事できごとのせいで、感覚かんかくがマヒしてるのかもしれない。


「女だからって容赦ようしゃしねぇぞ?」

「まさか、暴力ぼうりょくはたらくつもり? せっかく自分で手を下さずに佐藤さとうさんを羽交はがめにしてるのに、それじゃ本末転倒ほんまつてんとうじゃない?」

 私の言葉を聞いて、ようやく自分たちのしていることを理解りかいしたのか、佐藤さとう羽交はがめにしていた男子たちが手をはなした。


「おい! なんで放してんだよ!」

「で、でも、俺ら」

「まだ騒動そうどうを大きくするつもり? 流石さすがにそろそろ状況じょうきょうに気が付いたほうが良いんじゃない?」

 弁明べんめいしようとする男子たちの言葉をさえぎって、私は祇園寺ぎおんじ視線しせん廊下ろうかの外に誘導ゆうどうした。


 教室きょうしつとびらを開けたまま会話かいわをしてるんだから、祇園寺ぎおんじ怒鳴どなり声とかがとなり教室きょうしつに聞こえていてもおかしくはないよね?

 あんじょう、声を聞きつけた別のクラスの生徒たちが、とびらからチラチラと様子をうかがって来てる。

残念ざんねんだけど、このままじゃ数分すうふんもしないうちに先生を呼ばれるよ。でも、私達が佐藤さとうさんを田中先生のところれて行けば、すべて丸くおさまると思わない?」

「……そのままチクるつもりだろうが」

「そんなことはしないよ。だって、後の対応たいおう面倒めんどうになるの分かり切ってるし。やるなら誰か他の人にお願いしたいかな」


 意識的いしきてき声量せいりょうおさえた祇園寺ぎおんじに、私はえて大きな声で返答へんとうした。

 そんな私のねらいを知ってか、祇園寺ぎおんじ眉間みけんにしわをせる。

 これ以上話しても、さわぎが大きくなるだけって理解りかいしたみたい。


 忌々(いまいま)にらんでくる祇園寺ぎおんじを、あらためて無視むしした私は、とびらの外から佐藤さとうに呼びかける。

「ほら、佐藤さとうさん。早くこっちに来てくれない?」

「……分かったから、いちいち命令めいれいしないで」


 拘束こうそくかれてその場にすわり込んでた佐藤さとう亜美あみは、ゆっくり立ち上がると、トボトボととびらの元に歩いてきた。

 うつむいたまま、誰とも視線しせんを合わせないように歩く彼女を、祇園寺ぎおんじがジロジロとにらみ付けてる。


 そんなにあつ視線しせんおくるなんて、やっぱり好きなんじゃないの?

 なんて、花楓かえで相手(あいて)だったら、つい言ってしまいそうな言葉が、のどまで出かかる。

 すぐに言葉を飲み込んだ私は、息をんだままのみなみ佐藤さとうを引き連れて、教室きょうしつを後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ