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隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして  作者: 内村一樹
第3章 塔

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第21話 金魚の糞

 放課後ほうかごに何かがある。

 なんてことを考え続けてたせいで、私は今日、授業じゅぎょう集中しゅうちゅうできなかった。


 待っても待っても、時計とけいはりは進まない。

 しまいには、重力じゅうりょくに引きずられるような眠気ねむけと戦っているうちに、気が付けば放課後ほうかごだ。

 遅いのか早いのか。

 時間の流れがゆがんでいるように感じるのは、気のせいかな?

 これがぞくにいう、相対性そうたいせい理論りろん

 確かに、重力じゅうりょくのせいで時間がゆがんだよね。


科学者かがくしゃ達も、こうやって世界の神秘しんぴに気付いたのかな」

めずらしくバカなこと考えてるね、スーミィ」

わるい? って言うか、もとただせば花楓かえでのせいでしょ?」

 まだぼやけてる目をこすった私は、鞄を手に取って立ち上がる。


「で? 今日はどうするの?」

「うん、今日はね、だんボールを集めるように言われてるから、近くのスーパーに行こう。山田やまだ君とトモミン呼んで来るね」

 そう言って山田やまだの席に向かって行く花楓かえで見送みおくり、なんとなく教室きょうしつ見渡みわたしてみる。

 今のところは、何も起きる様子はない。


 すでつくえ移動いどうして、作業スペースを作り始めてるクラスメイト達。

 そんな彼らの中を、オドオドとしながら歩みって来たみなみが、小さな声を発した。

「お、大心池おごろちさん。今日も買い出し、行きますよね?」

「うん。今日は段ボールの収集しゅうしゅうに行くらしい。ちょっと大変かもね」

「そ、そうですか」

「前から思ってたけど、どうして敬語けいごなの?」

「え? あ、いえ、その……私は」

「こらぁ! スーミィ! トモミンをイジメないの!」

「いや、別にイジメてないし」

「く、黒光くろみつさん。別にイジメられてるワケじゃ、ないですよ」

「そう? だったらいいけど」


 いつものようににぎやかな様子で山田やまだを引き連れて来た花楓かえで

 彼女は私がみなみをイジメてないことなんか、絶対ぜったい分かってるはずだ。

 ん? でも、イジメって受け手側の認識にんしき重要じゅうようって言うよね?

 花楓かえでと話す時の空気感くうきかん質問しつもんしたけど、それが良くなかった可能性かのうせい排除はいじょできないよね。


みなみさん。ごめん、言い方きつかった?」

「え? いえ、そんなことは……私がダメなだけなので」

「なんでそうなるの」

「むぅ……なんか、あつかいの差をかんじるんだけど?」

「はいはい、それより、早く行こう。あまりおそくなるのも嫌だし」

「そうだな」


 私達の会話かいわ静観せいかんしてた山田やまだうなずく。

 そうしていつも通り、教室きょうしつを出る花楓かえでたち。

 彼女たちの後に続いて、教室きょうしつを出ようとした私は、チラッと横目よこめ佐藤さとうの様子をうかがった。


 元気げんきのない様子でつくえを運んでる佐藤さとう

 何か異変いへんを起こすにしては、大人おとなしすぎる気がする。

 だとしたら、異変いへんを起こすのは彼女かのじょ以外(いがい)人物じんぶつ

 それとも、人じゃない何か別の要因よういん


 私のこの考えも全部ぜんぶ読み取ってるはずの花楓かえでは、何も教えてくれない。

 本当に、何がしたいんだろう?

 ひとまずは、特別とくべつ指示しじもないワケだから、何事なにごとも無いように過ごすしかないよね。


 そう思い、花楓かえでから質問しつもんめに合ってる山田やまだうしろを、みなみと並んであるいていると。

 正門せいもん(あた)りで、不意ふいみなみが立ち止まった。

 そして、何かを探すようにかばんの中をあさり出す。


「あ、あれ……?」

「どうかした?」

「あ、はい。ちょっと、スマホを教室きょうしつに忘れてしまったみたいで……」

「ありゃりゃ~、それは大変たいへんだね。取りに戻る?」

 みなみ様子ようすに気が付いた花楓かえで山田やまだが、こっちをかえりながら立ち止まる。


「い、いえ、みなさんに悪いので、私だけで取りに戻ります」

「そう? でも、トモミンだけはぐれちゃったら、心配しんぱいだよ。ね? 山田やまだ君」

「え? まぁ、そうだな」

「なら、私が付いてくよ。花楓かえで山田やまだは先に行ってて」

 戸惑とまどいをかくせないみなみを見ながら、私は提案ていあんした。

 教室きょうしつに戻るだけなのに、何が心配しんぱいなのか。

 普通ふつうならそう思うけど、今日ばかりはそう言うわけにもいかない。

 って言うか、みなみがスマホを教室きょうしつわすれたってこと自体じたいが、なんかクサいんだよね。

 前にも同じようなことがあったわけだし。


 そう思って花楓かえで視線しせんを向けると、露骨ろこつに目をらされた。

「それじゃ、私達はあとからいかけるから、ほら、教室きょうしつに行こう」

「は、はい、すみません」

 そう言ってきびすかえした私とみなみは、花楓かえでたちとわかれて、教室きょうしつに戻る。

 予想よそうが正しければ、戻った先の教室きょうしつで何かが起きてるはず。


 そう思って1年2組の教室きょうしつ前の廊下ろうか辿たどいた私達は、1人の生徒せいととすれ違った。

 前に佐藤さとう亜美あみと言い合いをしてた吉田よしだだ。

 どこか怒気どきはらんだ表情ひょうじょうかべたまま、速足はやあし教室きょうしつから出て来た彼女は、廊下ろうかを歩いてくる。

 途中とちゅう、私達の姿すがたを見て目を見開みひらいたけど、無視むしするように立ち去って行った。


 もしかして、かえってる?

 ってことは、サボりってことかな?

 みなみ吉田よしだ帰宅きたくしてる様子に疑問ぎもんを持ったみたいだけど、何も言わずに教室きょうしつに向かって早歩はやあるきし始めた。

 そして、私より一足先にとびら辿たどり着いたみなみは、とびらを開けて硬直こうちょくする。

「あ……」


 小さな言葉ことばらした彼女の肩越かたごしに、教室きょうしつの中をのぞいて見ると、中にはクラスメイト達がた。

 まぁ、それだけならおどろくことは無いんだけどね。

 教室きょうしつ内の様子に動揺どうようして、茫然ぼうぜんとしてるみなみ

 そんな彼女を廊下ろうかの方に引きもどした私は、つくえの上にこしを下ろしてる祇園寺ぎおんじに向けて問いかける。


「何してんの?」

「あぁ? 誰かと思えば、金魚きんぎょふんじゃないか」

「だはは、金魚きんぎょふんって、きたねぇな!」

 祇園寺ぎおんじ言葉ことばに、周囲しゅういにいた生徒たちがゲラゲラと笑う。

 何が面白おもしろいのか良く分からないけど、まぁ、私と彼らとじゃあきらかに感性かんせいちがうんだろうな。


 なんて考えた私は、そう判断はんだんした要因よういんの一つに目をやった。

 教室きょうしつ一番いちばんうしろ、つくえが前にせられたことで出来上がってた作業さぎょうスペースの真ん中で、佐藤さとう亜美あみ羽交はがめにされてる。

 そんな彼女かのじょに向けて、祇園寺ぎおんじそばにいる生徒せいとたちが、手製てせいじゅうを向けているんだ。


 所々(ところどころ)佐藤さとう制服せいふくみだれが見えるのは、逃げようと藻掻もがいたあとなのかもしれない。

 状況じょうきょうだけ見れば、佐藤さとうがイジメられてる。


『できれば佐藤さとうちゃんをたすけてあげて欲しいな』


 あさに見た花楓かえでからのチャットを思い出し、私は教室きょうしつの中に1()み出す。

 途端とたん祇園寺ぎおんじが口を開いた。

勘違かんちがいするなよ? 俺達はちゃんと文化祭ぶんかさい準備じゅんびをしてたんだから。なぁ」

「そうだね、ちゃんとまとねらえるのか、たしかめなきゃだし」


 きのわらえない冗談じょうだんり上がる祇園寺ぎおんじたち。

 彼らを無視むしした私は、まっすぐに佐藤さとうへ目を向けた。

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