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隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして  作者: 内村一樹
第3章 塔

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第16話 それがウチの戦略

 ウチにとって、学校がっこうは楽しい場所だった。

 小学校から中学校まで、なかのいい子とつるんで、笑ってごしてた覚えしかないから。

 だから、高校こうこう生活(せいかつ)たのしくなるんだと思ってたのに、実際じっさいはそう上手うまく行かないってコトなんだろうね。


 そうなった理由は、だれかに教えてもらうまでもなく、分かりきってる。

 公開こうかい処刑(しょけい)なんて、ふざけた呼び方が定着ていちゃくしてしまったあの日の出来事。

 今となっては、ウチはあの時までの自分の考えにうんざりしちゃう。

 裏切うらぎった男を信じようなんて、どうかしてる。


 だけど、今こうしてウチがそう思えているのは、あの日を何事も無く終えることができたおかげ。

 本当なら、多分ウチはとんでもないことをしでかして、学校にられなくなってたはず。

 それはただの推測すいそくとかじゃなくて、確かな実感じっかんともなったウチの感想かんそう。今でも、あの時考えてたことを想像するだけで、手がふるえだすのが分かるくらい。


 全てのきっかけは、差出人さしだしにん不明(ふめい)のチャットだった。

 同じタイミングで、クラスメイト全員に送付そうふされたそのチャットには、公開こうかい処刑(しょけい)疑念ぎねんげかけるような写真がられてた。


 助けられた。

 内心ホッとしたウチは、同時に大きな疑念ぎねんを持ってしまった。

 このチャットの差出人さしだしにんは、どうしてこの写真をってたの?

 公開こうかい処刑(しょけい)翌日よくじつ、ショックで学校を休んだウチは、1日中そのことについて考えた。

 結論けつろん、ウチが思いつくような疑念ぎねんを、他のクラスメイト達が思いつかないはずがない。

 そう判断はんだんしたウチは、学校に行きたくないっていう願望がんぼうに負けることなく、登校した。


 あんじょう、学校ではクラスメイト全員に送られたチャットと公開こうかい処刑(しょけい)についてのうわさが広まってて、好奇こうき視線しせんり注いで来る。

 そんな中、1週間(しゅうかん)かけてれ聞こえて来たうわさを精査したウチは、そのうわさの中に興味きょうみ(ぶか)いものがあることを知る。

 そのうわさ真偽しんぎを確かめたいけど、中々(なかなか)自分から動(うご)勇気ゆうきが出てこずに、今日まで時間じかんが流れてしまった。


 今日は、あの男の自宅じたく謹慎(きんしん)が終わる日。


 まだ人がまばらな教室の中、自分の席について指先ゆびさき視線しせんを落としてるウチは、視界のはしの扉に意識いしきを集中していた。

 そうやって、あの2人が教室に来るのを待ってるんだ。

 ほどなくして、目当ての2人が並んで教室に入ってくる様子を見たウチは、1つ大きな深呼吸しんこきゅうをする。


「大丈夫。きっと、大丈夫だから」

 誰にも聞かれないように小声こごえで、そうつぶやいたウチは、ゆっくりと立ち上がると、せきすわって談笑だんしょうを始めてる黒光くろみつ大心池おごろちの元に歩み寄った。

 そして、座ったままウチを見上げて来る2人に声を掛ける。


「ね、ねぇ、2人に聞きたいことがあるんだけど」

「およ? おはよう佐藤さとうちゃん。ワタシ達に聞きたいことって何かな?」

「……」

「ここじゃあれだから、あとで話したいなぁ、なんて……」

 好奇心こうきしんちたキラキラとした目の黒光くろみつにそう言ったウチは、彼女のとなりだまったままするど視線しせんを向けて来る大心池おごろちに小さく会釈えしゃくした。

 大心池おごろちがウチにつめたい目を向けてくるのは前からの話。絶対にきらわれてるな。まぁ、ウチもどちらかと言うときらいなタイプだけど。

 気まずさから、ウチの手が自然しぜん首元くびもとに上がって、かみの毛をいじりだす。


 そんなウチにうなずいて見せた黒光くろみつは、どこか楽しそうに口を開いた。

「ワタシは別に良いよ。スーミィも良いよね?」

「まぁ、別にかまわないけど」

「おぉ、スーミィが意外いがい素直すなお

余計よけいなこと言わないでくれる?」

「良いジャン良いジャン。あ、そうだ。せっかくならさ、話しながら3人でお昼ご飯食べようよ」

「なんでそうなるワケ?」

一緒いっしょに食事をると、親睦しんぼくを深めやすくなるらしいよ? だから」

「別に親睦しんぼくを深める必要はなくない? 私、彼女からは嫌われてると思うんだけど」

「嫌い合う子が、かかわりをることで少しずつ仲良しになっていくのって、良いよね。ワタシ、そう言うタイプのお話、スキなんだ」

完全かんぜん部外者ぶがいしゃ発想はっそうじゃん、それ」

「そんなことないよ! 私はねぇ。う~ん、そうだ、恋のキューピッド役だから!!」

「恋じゃないし!!」

「ナイスツッコミだね、スーミィ」


 このくだらないやり取りはいつまで聞かされるんだろう。

 なんてことを考えてたウチの耳に、扉が開く音が飛び込んできた。

 咄嗟とっさに音のした方を見たウチは、教室にあの男が入って来るのを目の当たりにする。


 一瞬いっしゅん、ウチの方をにらみ付けて来た祇園寺ぎおんじ壮馬そうまにらみ返す。

 明らかに空気の悪くなった教室の中で、祇園寺ぎおんじせきに座るのを待ったウチは、あらためて黒光くろみつ大心池おごろちに声を掛けた。

「じゃ、そう言うことだから」

「うん。分かった。昼休みにワタシから声を掛けるね」

「うん」


 みじかこたえてからきびすを返したウチは、自分の席に戻る。

 やつの席はウチの少し右後みぎうしろ。つまり、座ってしまえば視界しかいに入ることは無い。

 ずっと背後はいごから見られてるというのも居心地いごこちわるいけど、視界しかいに入り続けるよりは精神せいしん衛生上えいせいじょうマシだ。


 すっかりピリついてしまった教室の空気くうき無視むししたウチは、これからのことを考える。

 まず初めにウチがするべきことは、仲間を作るコト。

 祇園寺ぎおんじ壮馬そうまがやったことがおおやけに出たとはいえ、ウチの立場たちば盤石ばんじゃくってわけじゃない。

 だから、あの騒動そうどうの時に味方みかたをしてくれた人物を引き入れるくらいしか、残された道はないワケで。


 打算的ださんてきな考え。それこそが、ウチの戦略せんりゃく

 不本意ふほんいな面もあるけど、はらえられない。

 時間をかけてでも、体勢たいせいととのえ直す必要がある。

 そんなことを考えながら、ウチは昼休みまで大人しくしていることにした。

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