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隣の席の花楓さんは、世界の全てを見透かして  作者: 内村一樹
第2章 操り人形

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第15話 ちょっと心強いかも

 ベッドでスヤスヤとねむ花楓かえでを見ながら、私は頭をかかえた。

 彼女が私のベッドでてるってことは、私はどこでればいいの?

 お風呂ふろも入って、夕飯ゆうはんも食べて、後はもう寝るだけなんだけど、それが一番(むずか)しい。

 となり一緒いっしょに寝る?

 いや、それはやめておこう。

 体調たいちょうくずしてる花楓かえでねむりをさまたげちゃうかもしれないし、それに、目をました時がこわい。

 そう思いながら、私はニヤケる花楓かえで表情ひょうじょうを思い浮かべた。

『スーミィったら、ワタシと一緒に寝たかったのかなぁ? 可愛かわいいところあるじゃん』

 自分の想像そうぞうのはずなのに、腹が立つのはおかしいことかな?


 とはいえ、明日も学校があるワケだから、寝ないわけにはいかない。

布団ふとんってなかったかな?」

 こうなったら、床に布団ふとんでもいて寝るしかないよね。

 そうと決まればすぐに一階いっかいに降りて、和室わしつ納戸なんどから敷布団しきぶとん一式(いっしき)を引っ張り出してきた。


 る前にかるあせをかいてしまったけど、仕方ない。

 そのままつかれに身をゆだねて、私はねむりに落ちた。

 ここ最近、色々(いろいろ)ありすぎてねむりに落ちるが早くなった気がする。


 そうして、スマホのアラームで目をました私は、すぐ目の前に花楓かえでの顔があることに気が付いた。

 いまだにスヤスヤとねむってる様子ようす花楓かえでから、ほのかなあまかおりがただよってくる。

 そんな彼女のおでこにねらいをさだめて、デコピンを……。

「ちょっと!? み上がりの幼気いたいけ乙女おとめに何をしようとしてるの!?」

「やっぱり起きてた」


 おでこを押さえてガードしながら、布団ふとんから飛び出る花楓かえで

 いつもの様子ようすに戻ってる彼女にあきれつつ、私は上半身じょうはんしんを起こしてびをした。

「ぅん~……はぁ。おはよう。もう体調たいちょうは良さそうで安心したよ」

「むぅ~。もっと心配しんぱいしてくれても良いんじゃない?」

心配しんぱいしてたよ? どうせ分かってるでしょ?」

「分かってるから言ってるの! もう大丈夫だって、安心あんしんしきってるじゃん! まだぶりかえすかもしれないよ? ほら、もっと心配しんぱいして、いたわっても良いんだよ?」

「そんなことより、私は支度したくはじめるけど、アンタはどうするの? 今日は学校がっこう休む?」

心配しんぱいの仕方がざつだよ!!」


 文句もんくれ流す花楓かえでを置いて、部屋を出た私は、まっすぐに洗面所せんめんじょに向かった。

 顔をあらって口をすすぎ歯をみがく。

 それらを終えた私は、いつも通りリビングに向かった。


「うわ……どうしたの? これ」

 リビングに入って早々(そうそう)、私はそうつぶやいてしまった。

 だって、いつもは準備じゅんびされていないような朝食が、食卓しょくたくならんでいたから。

「どうしたのって、お客さん来てるのに変なもの出せないでしょ?」

 母さんは一瞬いっしゅんだけ私に目を向けた後、少しだけかたすくめながらそう言った。

 そんな見栄みえっても意味なんて無いんだよと教えてあげたいけど、今はだまっておこう。


 すぐに食卓しょくたくについた私は、手元てもとに置いてあるはしを手に取った。

 その直後ちょくご、リビングのとびらを開けて花楓かえでが入ってくる。

「おはようございま~す。うわぁ! 良いにおい!!」

 バタバタといつもの調子ちょうしで私のとなりけてきた彼女は、朝食ちょうしょくをマジマジとながめる。

「これ、須美すみちゃんのお母さんが作ったんですか? すごく美味おいしそうですね!」

「本当? ありがとう。それより花楓かえでちゃん、体調たいちょう大丈夫だいじょうぶ?」

「はい! もう元気になりました! 昨日はめて下さって、本当にありがとうございました」

「良いのよ。これからも須美すみと仲良くしてあげてね」

「えへへ。もちろんです! って言うか、ワタシの方が仲良くしてもらってる方で……って、すみません、ごはんが冷めちゃいますね!」


 そそくさと椅子いすすわった花楓かえでは、本当に美味おいしそうに朝食ちょうしょくを食べ始めた。

 ザ・日本の朝ご飯と呼ばれるような献立こんだての朝食を味わうのは、私も本当に久しぶりだな。

 そういう意味では、こうして花楓かえでまってくれたのは私にとっても良いことだったかもしれない。

美味おいしいね、スーミィ」

「うん。美味おいしい」


 しゃけの切り身を口に運びながらうなずいて見せた私は、視界しかいはし微笑ほほえんでいる母さんの笑顔に心をざわつかせる。

 そんな私の心境しんきょうも、花楓かえで全部ぜんぶ知ってるんだよね。

 こんな私達を見て、どう思うのかな? 後で聞いてみよう。


 ほどなくして、母さんは仕事に出かけて、私達は2人きりになる。

 少しだけ気まずい空気くうきが流れる中、取りえず着替きがえと片づけをませた私達は、家を出た。

 バスていに向かうまでの道中どうちゅうも、花楓かえでは少しだけ気まずそうな視線しせんを向けてくる。

 そんな視線しせんえ切れなくなった私は、ため息と共にき出すことにした。


「で、どう思ったの?」

直球ちょっきゅうすぎない!?」

変化球へんかきゅうを投げても、意味なんてないでしょ」

「まぁ……そうだけどさぁ」

「昨日もホントは、アンタをめるのにつよ反対はんたいしてきてたし。なんなら、その話をする前まで、2人で喧嘩けんかしてたし」

「ごめんね、ほんとに。迷惑めいわくかけちゃった」

「ウチの親がなか(わる)いのは、別にアンタのせいじゃないでしょ。家庭かてい問題もんだいはどこまで行っても家庭かてい問題もんだいだし。そういう意味で、全ての人の問題もんだい完全かんぜん把握はあくできてしまう花楓かえでが、どう思ったのかを聞きたいの」

「うん。分かってる。そうだね。正直しょうじきなことを言うと、ありがちだなぁと思ったよ」

「ありがちかぁ。そのこころは?」

こころも何も、良くある話だってことだよ?」

「へぇ。意外いがいと多いんだ」

「うん。だけど勘違かんちがいしないで欲しいんだけど。よくある話だからって、そのつらさとかかなしみが小さなものだって安心していいわけじゃないんだよ?」


 そこで言葉ことばを切った花楓かえでは、小さく続けた。

きずきずなんだよ」


 もし私が花楓かえで事情じじょうを知らなかったら、その言葉にいきどおりを覚えたかもしれない。

 だけど、今の私が彼女に対して『それ』を覚えることはできなかった。

きずきず、か」

「スーミィ……」

「そう言うなら、花楓かえでこそ自分のきずあまく見すぎなんじゃないの?」

「そう、かな? スーミィには、そう見える?」

「まぁ、少なくとも昨日のことだけで考えたら、そう思うよ」


 山田やまだかかえていた感情かんじょうを、体調たいちょうくずしてまで何とか処理しょりしようとした花楓かえで

 どうして、花楓かえでがそこまで身をけずって、対応たいおうしなくちゃいけないのか。

 それはひとえに、彼女かのじょが言ってた話につながるんだと思う。


『ワタシが人の感情かんじょうを引きずり出してしまってる』


 抹茶まっちゃオレを飲みながら聞いた説明せつめいを思い出した私は、あらためて彼女の状況じょうきょう認識にんしきした。

 人とかかわること自体じたいが、非常ひじょう危険きけんなリスクをともなってる。


 だったら、人とのかかわりを一切いっさいった方が良いんじゃないか。


 なんて言う人もいるかもしれないけど、花楓かえではそうは思ってないらしい。

 その代わり、なるべく人に迷惑めいわくを掛けないように、みずからのいのち危険きけんにさらしてまで、問題もんだい解決かいけつすることに専念せんねんしてるみたいだ。

 その決意けついは、素直すなおすごいと思う。

 だけど、どうして花楓かえでだけがそんな重荷おもに背負せおわなくちゃいけないの?

 こころめてしまうから?

 それはなんて言うか、理不尽りふじんだなと私は思った。

 彼女のことを、一瞬いっしゅんでもズルいなんて思ったのがずかしく感じる。


「スーミィって、やっぱり変わってるよね」

「悪い?」

「ううん。悪くないし、ちょっと心強いかも」

「そっか」


 そんなことを話しているうちにバスてい辿たどり着いた私達は、そのまま学校へと向かったのだった。

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