46 鬱陶しい天使様と俺は再び歩き出す。
「今日は転校生? いや留学生を紹介する。これから卒業までずっとこのクラスの予定だから、仲良くするんだぞー」
ざわつくホームルーム、主に騒いでいるのは男子の方。かわいい女子がいいなとか、眼鏡っ娘がいいなとか。本音というか性欲が駄々漏れであった。
「せんせー! 留学生って女子ですかー?」
「おう。女子だぞ。これでようやくこのクラスも男女同数になる」
別に興味なんて無い。留学までしてくるような学生なんて大抵陽キャを極めたような存在だ。俺には関係ないし、向こうもこっちと積極的に関わろうとするなんてことはあり得ない。
「そんじゃ、入ってこーい」
「はいっ!」
扉の外に待っていた留学生の声。鈴のように綺麗で、どうしようもないほどに無邪気で。間違いなく聞き覚えのある声で。
「イタリアから留学に来ました、十六夜エリです。これから約二年、よろしくお願いします」
二ヶ月前に別れを告げられたはずなのに。もう会えないと思っていたのに。
「空いてる席はっと。一番後ろの窓際の席とかどうだ?」
「わかりましたっ!」
俺の目には涙が浮かんでいて。それを誰にも見られないように窓の外を眺めて。震える唇を強く噛んで、ぎこちない笑顔を作る。
「これからよろしくね、天宮くん? それとも、初対面の女の子と下ネタで盛り上がる変態さんって呼んだ方がいいのかな?」
これからもの間違いだろう。あと俺は変態なんかじゃあないし、興奮していたのは天使様……じゃなくて十六夜エリの方だったはずだ。
「先に吹っ掛けて来たのはそっちだろうが。あとなんでイタリアなんだよ」
「カトリックの聖地だからかなぁ。で、花咲ちゃんからの答えは貰えたわけ?」
「……お前がいきなり編入とかしてこなければ、なんの問題もなく貰えたはずなんだけどな」
「おっと、それは悪いことをしちゃったかもね。あっ、スマホゲットしたからLIME交換しとく?」
陽キャというのはこうやってLIMEを交換するのか。勉強になったような、全く参考にならないような。
「大きなマッシュルームの画像とか送りつけたら即ブロックだからな」
「わかってるって」
そんなこんなで俺の残り一年半の青春がろくでもないことになるのは決定したのであった。
拝啓、未来の俺へ。
青春って混沌なんだなぁとしみじみ思う今日この頃。
未来の俺なら知っているとは思いますが、現在進行形で彼女と変態の板挟みにあっております。誰か、助けてください。マジで。
まぁ、天使様と花咲さんが数分で打ち解けてくれたのが唯一の救いでしたが。ここで喧嘩が始まったら俺にはどうしようもなかったと思います。
今までの俺の選択が合っていたかどうかは、大人になってみないとわかりません。あの時こうしていればという後悔は、今の俺にも数えきれないほどありますし。
でも一歩踏み出さないと。やらずに後悔するよりも、やって後悔した方がいいということ。それを天使様が教えてくれました。
つまり当たるまで砕けるかどうかわからないんです。一介の高校生がこんなこと書いちゃ駄目な気もするんですけどね。
追伸
はぁ。
マジで大学どうしよう。指定校推薦は無理っぽいし。センター対策頑張るかぁ。……頑張った所で平均しか取れないと思うけど。
(完)




