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20 能動的中二病の俺は乙女の秘密を知りたがる。

 というわけで隠れたのだが。


『街路樹の陰に隠れちゃうとか、ドラマの見すぎなんじゃないですかねぇ? これであんパンと牛乳でも持たせれば、割とそれっぽく見えるんじゃないの?』


 何度も言うようだが、俺がやっているのは迷惑行為(ストーカー)である。刑事や探偵のように誰かのためにやっているわけではなく、完全に自分の欲求を満たすためだけの行為。


 わかってるさ。そんな精神状態の人の見た目を本当にそれっぽくしてしまったら、やってることの善悪すらもわからなくなってしまう。


 というか実際に探偵という存在は、電柱の陰であんパンと牛乳を嗜んでいるものなのだろうか。スマートフォンを取り出して、大先生に聞いてみる。


「今調べんだけどな。実際の刑事さんもやってるらしいぞ、あれ。だって片手でさくっと食べられるだろ?」


『マ?』


「ま。知恵袋に書いてあった」


『それ大先生違くない?』


 確かに。知恵袋は天下の大先生が提供しているサービスではないと思う。あの先生が天下をとっているかというのは再考の余地がありそうだけれど、今考えるべきはそれではない。


「それはそうとして」


『いいのか、大先生の正体について考えなくて』


「世の中には知らない方が良いものの方が多い気がするし。ってわけでおい天使」


『なんだ人間。花咲ちゃんは進行形で階段のぼってるけど、用件はそれだけか?』


 こっちも読まれていたか。


「悪かったな、それだけで。あと……たい焼き結構美味しかった」


『ふふん。それを先に言えよな。こんなあたしだって乙女なんだから、褒められると好感度アップしちゃうんだぜ?』


「お前の好感度を上げてどうするんだ? 善行ポイントが貯まって来世でハーレムでも作れるようになるのか?」


 鶴の恩返しの神様版みたいな。こいつは神様じゃあなくて天使だけれど。それも結構有名な堕天使様だけれど。


『そーいうのはあたしの管轄じゃないからね、ばーか』


 なんか怒られてしまった。なんの苦労もなくハーレムを手に入れたかったわけではなかったから、別にいいのだけれど。でもとりあえず謝っておく。


「済まん」


『あたしが欲しいのは謝罪じゃないんだけどなぁ……まいっか。おしゃべりしてたら花咲ちゃん行っちゃうもんね』


 俺は慌てて出口を見る。良かった、まだ花咲さんはそこにいるみたいだ。片手にスマートフォン、もう片方の手には彼女の趣味が詰め込まれた袋。


「……追跡、だよな?」


 今からするべきこと。俺自身はこのまま天使とたい焼きを食べていてもいいと思っているが、天使様が()()を許してくれるとは思えない。


『モチのロン、このシチュエーションでそれ以外の選択肢はないはずだよん。まっ、あたしと一緒にたい焼き食べててもいいんだけどねっ!』


「いやいや。たとえ天使様とかお天道様とかが許しても、ここまで来ておいてなにもしないのは男としてアレだし」


『別に止めはしないけど。……本当はそっちの方があたし的にはうれしいけど、さ』


 このストーカー行為も、元々は天使様が勧めてきたことだ。つまり天使様は俺に合わせて無理をしているということなのだろう。本当は俺から花咲さんの恋を早く叶えてしまいたいはずなのに。


「天使……」


『おい人間、お前壮絶なる勘違いをしてはいないか? あたしはやりたいことをやっているだけだし、言いたいことを言っているだけだ』


 わかっているさ。これも俺のことを気遣って言っていることなのだろう。ありがたいことだ。でも俺は、今はそんなに弱くないから。天使様が側にいてくれるから。


『あたしはたい焼きを食べたかったから秋葉原まで来た。本当にそれだけだからな。そこに偶然花咲ちゃんがいたから追っかけただけだし』


「天使……もっとやりたいことやっていいんだからな……」


『ばーっかじゃないの! あたしは、たい焼きを食べたことで目的を達成したのさ。でさ、今やるべきなのはストーキングの続きでしょ。花咲ちゃん、次のお店入っちゃったからね』


 どこからツッコむべきなのか、それともノーコメントを貫くべきなのか。いや、そうじゃなくて。


「ほえっ?」


 いつの間にか花咲さんはいなくなっていること。考えればすぐにわかるのだが、世界は俺を中心に回っているわけではないのだ。


『いや、ガチだし。おしゃべりしてる内に行っちゃったじゃんか。案内するからちゃんとついてこいよな!』


「あ、ああ。せめてどういう店に入ったかだけ教えてくれないか?」


『フィギュアがメインのお店みたいだねぇ。ふんふん』


 いかがわしいお店ではないことに安心しつつ、彼女の()()について考える。ネットで調べて出てきた情報、そして今現在いるであろう場所のこと。


「……」


 これは俺が踏み込んでしまってもいいのだろうか。そんな不安が心を支配して、体の動きを鈍らせていく。なんというか、今さら罪悪感が湧いてきたみたいな。


『お前のその不安はもっともだけどさ。はぁ、知ろうとすることは悪いことじゃないんだけどなぁ。あとはそれとどう向き合うかーって問題でしょ? 結局はストーカーなんだけどね』

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