007 世界史受験テクニック
「シュメール……」
「シュメール アッカド アムル、ヒッタイト ミタンニ カッシート、アラム フェニキア ヘブライ、アッシリア 四王国 アケメネス!」
そこまで一気に言い切って、涼は満足した表情となった。
もちろん、涼を見るアベルは訝しげである。
「なんだそれは?」
「アベルがシュメールと言ったから、条件反射で答えただけです」
「いや、シュメールは、領軍の補給責任者で、この書類の作成者なだけだ」
アベルはそう言うと、今読んでいた書類をつまんで、ちょっと傾け、涼に見せた。
ここは、いつものアベルの執務室。
アベルは、いつも通り書類を決裁している。
涼も、いつも通り借りてきた錬金術の本を読んでいる。
ソファーにぬべ~っと寝転がりながら。
「で、さっきの呪文みたいなのは何だ?」
「ああ、あれは、僕の故郷の歴史です。歴史の流れを、リズムにして覚えたのですよ」
シュメール文明は、地球における最も古い文明の一つと言われている。
そこから始まり、最後のアケメネス朝ペルシアまでを、三つずつ組にして、リズムに乗せて覚える……大学受験のための、世界史暗記テクニックの一つだ。
ちなみにアケメネス朝ペルシアの後は、ギリシャ、ローマという中学校の歴史の授業にも出てくる、もう一般的な知識の範囲であるため、暗記する必要などはない。
そこから先の世界史は、完全に物語であり、面白い小説を読むようなものだから、暗記などせずとも記憶に残る。
素晴らしい!
「リョウは時々、変な知識を持っているよな」
「変とはなんですか変とは。生きるために必要な知識です。たった一点が合否を分ける、シビアな世界がこの世には存在するのです。ぬくぬくと育ってきたアベルにわからないでしょうけどね!」
「いや、それほどぬくぬくと育ってきたとは思わんのだが……」
「日々の食事にも事欠き、あらゆるものを口にして飢えをしのいだ人々に比べれば、アベルはなんて恵まれているのでしょうか!」
「お、おう……」
その時、二人の元に、ケーキとコーヒーが届いた。
もちろん、涼は美味しそうに食べ、飲む。
食べ終えると、再び口を開いた。
「世界には、日々の食事にも事欠く人々がいるのです」
「そうだな。だが、今、リョウの口からその言葉が出ても、全く説得力はないな」
何かを主張するときは、相手からどう見えているのかも考慮したほうがいいらしい……。
受験の季節がやってきますね。
今年は特に、色々と大変だと思いますが、受験生の皆さん、力を出し切れるように祈っております……。