004.5 仕事が片付いて、ちょっと疲れたから甘い物が欲しいと思ってケーキを頼もうとしたけど、もう遅い! ここのケーキは、全部が全部、涼のお腹におさまった……
最近の流行り、「もう遅い」系に乗ってみました!
「ふぅ……」
今日もアベルは、いつものように、書類仕事をしている。
だが、さすがに疲れを感じていた。
時間は午後三時。
机の上の呼び鈴を鳴らす。
そして、やってきた侍従長に言った。
「ケーキとコーヒーを頼む」
それを聞いて、侍従長は、ちらりと涼の方を一瞥し、そして申し訳なさそうな顔で答えた。
「申し訳ございません。先ほど、料理長が、ケーキは切れているので、今しばらくお待ちいただきたいということでした。あと……三十分ほどでできあがるかと思います」
「そうなのか?」
アベルは首を傾げて時計を見る。
午後三時だ。
これが、夜ならわからないでもない……。
売り切れもあり得るだろう。
もちろん、これまでそんな経験はないが、可能性としてはあり得るだろう。
だが、こんな早い時間に……それも、おやつの時間真っただ中に、ケーキが、もうない?
「コーヒーをお持ちいたします」
侍従長は、涼をチラリと見てから、アベルにそう言った。
「ああ、頼む」
アベルは、コーヒーを頼んだ。
アベルと侍従長との会話の間も、涼はいつも通りソファーにぬべ~っと寝転んで、錬金術関連の本を読んでいる。
いつも以上に、集中しているらしく、二人の会話も、全く耳に入っていないようだ。
いつも以上に、脳に糖分が回って、頭が働いているのかもしれない。
「まさか……」
アベルは、そんな涼を訝しげに見る。
そして、ある種、恐る恐るといった感じで、問う。
「リョウ……」
「ん? アベル、呼びましたか?」
ようやく、涼は顔を上げてアベルを見る。
もちろん、口の端に生クリームなどはついていない……。
「まさかとは思うが、食堂のケーキを食べつくしたなどと言うことは……ないよな?」
アベルは、さすがにそんなはずはないと思いながら……いや、思いたいという希望を込めながら、涼に問う。
「な、なななななな何を言っているのですか。そんなわけないでしょう」
アベルの希望は、無残にも打ち砕かれた。
涼が、食べたらしい……。
すぐに、アベルに気づかれたことを悟る涼。
「ぼ、僕はやめた方がいいと言ったんですよ? でも、リンとリーヒャとウォーレンにそそのかされて……」
「……ウォーレンは、言わんだろう?」
「う……ウォーレンは、確かに何も言いませんでしたけど……リンとリーヒャがケーキパーティーを始めたんです……」
「ケーキパーティー……」
「だから、僕が食べたのは、五個とか六個程度ですよ? 大丈夫です、晩御飯までには消化できますよ?」
「うん、そこは誰も心配していない」
アベルは小さく首を振った。
そして、ケーキ無しで運ばれてきたコーヒーを飲むのであった……。
ケーキがおさまった先は、涼のお腹だけではなかった……。
筆者には無理でした……。
そもそも、サブタイトルでネタバレをしているのに……いったいどんな内容を書けというのでしょうか。
タイトルやサブタイトルに、がっつり内容を書いているのに、本編を書ける作者の方々を尊敬してしまいます……。
その昔に読んだ、森博嗣先生の『すべてがFになる』みたいなものです……ミステリーなのに、このタイトルが答えそのものという……ありえない!
あのシリーズは、『有限と微小のパン』まで一気に読んだ記憶があります……懐かしいです。
まあ、とにかく、頑張って「もう遅い」系を書いてみましたよ!
え? 「もう遅い」系って、こんなんじゃない?
あれ? あれれ?
そんな馬鹿な……。