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003 ベルニーニとベルヌーイとベルリーニ

ある日、涼がアベルの執務室に戻ってくると、部屋の主は固まっていた。

別に、涼が氷漬けにして固めたわけではない。


だが、涼からすれば不思議であった。

以前、閃きやすい状況は教えてあげたはずなのである。

だから、いいアイデアが出てこないで固まっている、などという状況には陥らないはずなのだ。

だが、アベルは何事か考えている様子で、固まっている。



まるで、彫刻のように。



「ベルニーニとベルヌーイとベルリーニは、別々の人物です」

「……あ? ああ、リョウいたのか。ベルなんとかが何だって?」

「アベルが、まるで彫刻のように固まっていたので言っただけです。ベルニーニは史上最高の彫刻家で、ベルヌーイは空を飛べる理論の人で、ベルリーニは作曲家です」

「よくわからんが……空を飛べる奴は、風属性の魔法使いか何かか?」

「な、なるほど……。その可能性は考えたことがありませんでした。ベルヌーイが風属性魔法使い……。アベルにしては面白い発想じゃないですか!」

「お、おう……」


飛行機が空を飛ぶ理屈として有名な『ベルヌーイの定理』は、ダニエル・ベルヌーイによって発表されたものだ。


発表は、彼が三十八歳の時であるが、研究そのものはサンクトペテルブルクにいた、二十五歳からのものと言われている。

ちなみに、アインシュタインが特殊相対性理論を発表したのは二十六歳。

ニュートンが、いわゆる三大業績と呼ばれるものを成し遂げたのは、二十五歳。



天才と呼ばれる人たちは、二十代半ばには優れた業績をあげているものらしい。

しかして、現在、涼の目の前にいる剣士は、確か二十六歳である。

はたして彼は……。


「リョウ、何か俺を馬鹿にするようなことを考えているだろう」

「な、何を言っているのですかな……」


さすがはA級冒険者の剣士アベル。

C級の水属性魔法使いの考えなどお見通しである。

指摘され、声が裏返り、視線が泳いでいるのを見れば、A級じゃなくてもわかるだろうが……。



そんな涼の泳いだ視線が向かった先は、アベルが執務をしているデスク。

そこには、いつものことだが、大量の『未決済』の書類が置かれてある。



頑張っているアベルに感謝することによって、ごまかそう!



「今日もお仕事ごくろうさまです」

「お、おう……」

突然の涼の感謝の言葉にちょっと照れるアベル。


ちょろい!


こうして、涼は一つ胸をなでおろしたのであった。



だが、風向きは突然変わるものだ。



「今日は、ケーキ、半分な」

「アベルの馬鹿! 権力者の横暴を許すな!」



今日も、アベルの執務室は平和だ……。


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