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017 難しい内容を分かりやすく説明できる人は、とっても優秀です

「アベル、難しい内容を、難しい言葉を使って説明するようでは、評論家としてまだまだです」

「うん?」

「難しい内容を、誰にでもわかる言葉で、誰にでもわかるように説明してこそ、評論家として、また表現者としても優秀だと言えるのです。それこそが、人の知性なのです」

「あ……うん……なんで、それを俺に言ったんだ?」

「アベルが書類を読んで、理解できていない顔をしていたからです。その書類を作成した人は、もっと努力しなければいけないということです」

「あ、ああ……まあ……」

「読んでる人が、専門用語を理解できない人なのだということを理解しているのなら、もう少し分かりやすく書くべきでした。あるいは、想定以上に、読む人の理解力が低かったのかもしれません……それは、本当に、ご愁傷様でした」

「微妙に……俺を馬鹿にしていないか?」


アベルは、ジト目で涼を見る。


「何を言っているのですか。相手に伝わらなければ、文を書いても意味がないのです。つまり、伝わっていないその書類は、意味のない書類ということになってしまいます。たとえ、読む人の理解力が低いのだとしても、分かるように書かなければ、その文章が存在する意味がないということなのです!」

「うん……まあ、相手に伝わるようには、書いて欲しいな……」

「きちんと、相手に伝わるような文章にできる、というのは、それだけで非常に知性の高い行動だと思うのです」

「確かに、な……」


そこで、アベルは、言葉を切った。


そして、再び言葉を続けた。

「なあ、リョウ」

「なんですか?」

「今、リョウが、モンブランが食べたいというのは伝わった……」

「おぉ! よかったです。そう、それこそが、伝わる文章です」

「文章じゃなくて、目の前に、大きな氷製のモンブランを作られたからな……」

「文章とは、必ずしも文字だけとは限らないのです。そんな、字義的に狭い意味だけに囚われていては、真理には辿り着けませんよ!」

「真理ってなんだ……」

「食糧問題の解決こそが、世界平和への道……それが真理です」

「そ、そうか……」



衣食足りて礼節を知る、とか……貧すれば鈍する、とか……空腹では隣人を愛せない、とか……食の重要性を表すことわざや名言は、古来より数多くある。


バーナード・ショーは言った。

「食べ物に対する愛より誠実な愛はない」



まさに至言!



そんな言葉を思い浮かべながら、涼は、出てきたモンブランとコーヒーを、今日もいただく。


飢える心配がなければ、人は平和に生きられるものなのだ。

なぜかそれを理解していない政治家や官吏が多い……涼は小さく首を振る。


願わくは、目の前にいる剣士が、そのことを理解し、民を幸せにしてくれればと……。


民に反乱を起こされ、断頭台の露と消える姿は見たくないものだ。


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