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010 初日の出

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします!

アベルの執務室からの景色はなかなかのものである。

涼は、けっこう気に入っている。


部屋の主は……そんな余裕もなさそうであるが。

いつものように、机で書類にまみれており、外の景色など見ていない……。


「アベルは、本当に大変そうです」

「んあ?」

「かつて、権力はそれを持たない者を消耗させる、と言った宰相がいましたが、権力者も消耗するみたいです。かわいそうですね」


涼は、心の底からそう思った。



その瞬間、窓から差し込んだ陽の光が部屋を照らした。

全ての真実を明らかにし、(よど)んだ空気も、睡魔すらも打ち払う太陽の光。


「本当に、朝日は気持ちのいいものです」

「うん、もう夕方だけどな」

「……わ、分かってますよ。別に誰かをだまそうと思って言ったわけではありませんから!」


涼はそう言うと、プイッとして外を見る。


そして言った。


「朝日が赤いのも、夕日が赤いのも、レイリー散乱(さんらん)のおかげです」

「は?」

「空が青いのも、レイリー散乱のおかげです」

「赤く見えるのも青く見えるのも、その何とか散乱のおかげ?」

「表裏一体ということです。雲が白く見えるミー散乱とペアにして、『レイリー散乱ミー散乱』とリズムに乗せて覚えておくといいです」

「いや……別に覚えていなくてもいいだろ……」

「アベルほどの地位に就く人は、教養がないと、それだけで馬鹿にされますよ? 『アベルの馬鹿!』とか言われる姿を見たくはないですからね」

「あ……はい……」


微妙に納得いかない部分を感じつつも、アベルは受け入れた。

確かに子供の頃、空が青かったり、夕日が赤かったり、あるいは雲が白かったりするのを不思議に思ったことはあったから……。

とはいえ、レイリー散乱ミー散乱が、どんな原理なのかは理解していない……。


まさに、暗記教育の弊害(へいがい)


本当は、原理を理解すべきなのだが、それが難しいことがある。

そう、原理が難しいから仕方なく、暗記するのだ。

決して、教える人間が、「教えるのめんどくさ~ 丸暗記しとけよ~」と思っているわけではない。

仕方のないことなのだ。


涼が、アベルに、波長の部分から説明しないのは、決して手を抜いているわけではない!



ふと、思いついて、涼は呟いた。

「赤き剣のアベル……青い水属性魔法使いの僕……なかなか面白いですね」

「赤と青が表裏一体か……」

涼の言葉に、アベルも小さく笑いながら答えた。


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