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009 能ある鷹は……

本日正午、「水属性の魔法使い」書籍第一巻の情報が開示されました!

あとがきに書いてありますので、ぜひ、あとがきまでお読みください。


また、イラストレーターさんの情報など、さらなる追加情報を、「活動報告」に書いてありますので、


ページ上部 作者:久宝 忠 

ページ下部 作者マイページ


どちらかをタップして、活動報告も読んでいただけると嬉しいです。

どちらも、同じページに飛びます。

そこは、いつものアベルの執務室。


涼は、ふと窓の外に意識を向けた。

最初は、なぜかは分からなかったのだが、すぐにその理由に気づいた。


「ヴァイオリンの音が聞こえてきます」

「ん? ああ、ほんとだな」

涼は窓の外から聞こえてくるヴァイオリンの音色に耳を傾けて呟き、アベルは一瞬だけ耳を傾けると、またすぐに書類に向かった。


「お偉いさんになろうという人が、学芸文化への理解がないとは……王国は文化後進国と言われますよ」

「いや、理解がないわけじゃないぞ。ただ単純に、書類仕事が忙しいだけで」

そう言いながら、アベルは書類をめくり、サインする手を止めない。



その間も、ヴァイオリンの音色が漂う。



「それにしても……この世界にもヴァイオリンがあるのですね」

「なんだそれは? ヴァイオリンって、あれだろ? 四本弦の、弓で弾くやつ」

「ま、まあ……合ってはいるのですが……多分」

アベルのあまりな説明に、小さく首を振りながら肯定する涼。


「リチャード王の時代に、中央諸国では広がったらしいぞ」

「リチャード王というと、中興の祖の人ですよね。なるほど……」

アベルの答えに、リョウは頭の中でいろいろ考える。


リチャード王は転生者で、彼自身が、この世界で再現したのではないかと。



「けっこう上手です」

「ああ、まあ、悪くないな」

涼の感想に、少しだけ顔を書類から離して音色に耳を傾けて感想を述べる剣士アベル。


「悪くないな、とは……なんという上から目線」

「いや、別にそういうわけでは」

「そういうセリフは、上手に演奏できる人が言うものです」


涼は、右手人差し指を一本立てて、チッチッチッといった感じで指を振りながら言っている。

すごく偉そうだ。



「……」

アベルはそれを見て、無言のまま小さくため息をついた。

そして卓上のベルを鳴らして侍従を呼んで命じた。


「コーヒーを二人分と、ヴァイオリンを持ってきてくれ」


「え?」

涼は、小さく呟いた。


コーヒーが届き、ヴァイオリンも届く。


アベルはヴァイオリンを持って、すっくと部屋の中央に立ち、構えて……弾き始めた。



涼は驚いた。



非常に美しいその音色に。



涼は見入った。



非常に美しいその姿に。



アベルの演奏は、素晴らしい。

そして、驚くほどの超絶技巧。


なぜ超絶技巧だとわかるのか?

それは、アベルが弾いている曲は、涼の知る曲だったから。

なぜ、この世界にあるのかは知らない……。



「パガニーニの『24の奇想曲』……第24番……」



これも、リチャード王が?



とにかく……地球にいた頃、映画で見たことがあった。

現代のパガニーニとも呼ばれる、若手イケメンヴァイオリニストが主役を務めた映画。

その演奏は、まさに極上。

その中でも、最も印象的なシーンが、この24の奇想曲……。



パガニーニというのは、史上最高のヴァイオリニストで、有名な作曲家であり、その作品は、リストやシューベルトなど多くの作曲家たちに、多大な影響を与えた。

『パガニーニの演奏技術は、悪魔に魂を売り渡した代償として手に入れたものだ』という噂すらまことしやかに語られた男だ。


読書家であれば、アイザック・アシモフは知っているであろう。

あまりにも偉大で巨大な作家であるために、ここでは多くを述べないが、彼は『アシモフの雑学コレクション』の中で、パガニーニについて述べている。

マルファン症候群であったからこそ可能になった超絶技巧と……。


努力は報われる。

だが、努力だけでは超えられない壁が存在するのも、否定できない事実なのかもしれない……。


しかしながら、映画の中で演奏していたヴァイオリニストはマルファン症候群ではない。

さらに、今、涼の前で演奏している剣士も、マルファン症候群ではない……多分。



努力することによって、さまざまな事が可能になるのも、否定できない事実なのだ。




「すごい……」

涼の口から思わず漏れる感嘆の言葉。


映画の、もちろんプロの中でも最高峰の一人の演奏と比べても遜色がない。

いや、目の前で、生で聴いている分、アベルの方が凄いかも……。



五分間の演奏が終わった。



漂う余韻。



そして……、

「素晴らしいです!」

ソファーから立ち上がり、拍手をする涼。

スタンディングオベーション。


それを受けて少し照れるアベル。


恥ずかしいのか、無言のままデスクに戻り、コーヒーを手に取って、一口飲んだ。



「まさかアベルにそんな才能があったなんて……」

「いや、昔、若い頃に習わされただけだ」

だんだんと顔が真っ赤になっていくアベル。

演奏直後よりも、さらに照れているらしい。


「いや、本当に素晴らしかったです。アベル、今からでも遅くありません。剣士は諦めて、ヴァイオリニストとして再起を図るべきです」

「いや、俺、剣士を廃業してないぞ。再起を図るって表現はおかしくないか?」

「もうすぐ廃業するに違いないので、今のうちに……」

「なんでだよ!」

「天才ヴァイオリニストとして各地を公演すればきっと儲かりますよ! あ、僕は儲けの半分をもらえば大丈夫ですから、残りはアベルにあげます」

「やらねえよ。公演はやらねえし、儲けても金はやらねえし」

「アベル、働かざるもの食うべからずですよ?」

「リョウに言われたくない!」



窓から出ていったアベルの音色に、多くの人が聞き惚れたのは言うまでもないことであった。

1.「水属性の魔法使い」第一巻の発売日が、2021年3月10日に決まりました!

2.「水属性の魔法使い」なろう版第二部の開始は、2021年4月1日21時です!


1について。

皆様のおかげで、第一巻の刊行にこぎつけることができました。本当にありがとうございます。

2021年3月10日に、TOブックス様から出版していただけます。


本日、2021年12月25日より、TOブックスでの予約が開始されました。

早めに予約しておくと、発売日当日(3月10日)に、「手元に」届きます。

配送会社が、「発売日当日に手元に」持ってきてくれます!



さて、「なろうで読んだし、本は買わなくていいや」とお思いの、そこのあなた!

もちろん、そう思っている方のために、書籍版には付録(外伝)があります。

「外伝 火属性の魔法使い」というものを準備してあるのです。

爆炎の魔法使い、オスカーが主人公で、彼の、6歳から18歳でルスカ男爵に叙されるまでの物語……全40話、12万字。

「水属性~」の第一巻巻末に、「火属性~」の第1話~第8話(2万4千字)が載っています。

「水属性~」の第二巻巻末に、「火属性~」の第9話~第16話(2万4千字程)が載ります。

そんな感じで、続きが載っていくわけですね。


「なろう」で本編を読んでいて、「オスカー強すぎ。なんでよ!」とか「オスカー、いばってるから好きじゃない」とか、思った方はいらっしゃるのではないでしょうか?

この外伝は、ぜひ、そんな方に読んでいただきたい!

もちろん、「オスカー好きだよ!」という方には、当然のようにお勧めします……。


この外伝は、インターネット上で公開する予定はありません。

お金を出して、書籍版を購入していただいた方のための『外伝』です。

紙でも、電子でも、予約でもそうでなくても、載っていますので、その辺りは安心してご購入ください。


ある程度、売れないと、打ち切りになっちゃいますからね。

筆者としては、それは嫌なので、買っていただくために、外伝をつけたわけです……。


この、オスカー外伝以外にも、特典SSになるはずだったけど、筆者が無理を言って本文に入れこむことに成功した「涼とアベルの干し肉づくり」(5千字超)など、色々追加しております。

逆に、最初の方、涼の修行パート部分は、圧縮したりくっつけたりして、多少読みやすくなったと思います……多分。


そんな第一巻ですが、二段組構成で、実に23万字の大容量!(大容量? 変な日本語? ページ数は400ページくらいです)

涼とあの人(悪……)とのバトルシーン(ボリュームアップ済み)まで入ってしまいました。

最初は、一段組で16万字(400ページくらいの分厚い大きめラノベがこの辺)くらいだったんです……でも、色々ありまして……増えました! あはははは……。



2について。

なろう版第二部の開始日を、2021年4月1日に決定いたしました!

第一部が開始されたのも、2020年4月1日だったので、ちょうど一年後ということで……。

いちおう、第一部同様、毎日21時投稿予定です。

筆者のモチベーションと体力が続く限りにおいて、ですが……。



あと、現在、第二巻の改稿を行っております(第二巻までは出版確約なので)。第二巻からは、最終章まで続く新たなエピソードが追加されているんです。さらに、なろう版だと第五部から登場予定だったキャラが早くも出てきます。早めに出して絡めた方が、面白くなりそうだな~と思ったので……。

一度、「なろう」で楽しんでいただけた方にも、再度、書籍版でも楽しんで欲しいですもんね。

あ、でも、何もかもが大きくがらりと変わるわけではありません、安心してください。

たとえるなら、なろう版が塩をまぶしたステーキなら、書籍版は塩もコショウもまぶしたステーキみたいなものです。

ステーキであることは変わりません、お肉は美味しいままです。お塩もそのままです、でもコショウが加わることによって、味わいも変わり、より確実に美味しくなるでしょう?

そんなイメージかなと思っています。


第一巻ですが、正式名称は、

「水属性の魔法使い 第一部 中央諸国編1」

です。

運が良ければ、長く続けられそうな題名です! 頑張ります!



第一巻、第二巻、そしてなろう版第二部、どうか楽しみに、お待ちください!

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