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300時間のシンデレラ  作者: 小塚彩霧
4/50

第4話 珍しい顔触れ

 お昼休み。システム開発部の部屋から出て、マミさんとエレベーターホールに向かう。


「アスカちゃん、なんで、今日、急に??」

「私も何でこうなったのか……。昨日、終電逃しちゃって。たまたま残ってた徳永さんが車で家まで送ってくれたんです。」

「へぇ。なんか進展してんじゃん。お礼するの?」

「……いや、それが、『お礼のお礼』らしいんですけど。」

「は?」

「今朝、昨日のお礼に、栄養ドリンクとか差し入れしたんですけど。なぜか、そのお礼で徳永さんとワタナベとランチすることになって……。」

「訳わからん。」

「私も訳わかりません。何せ変な顔触れなので、変な噂になりそうで。」

「え、その変な顔触れに私も入れられるって、これ如何に?」

「すみません……。人数多い方が珍しいのが薄まるんじゃないかと思って。」

「まあ、ワタナベがいる時点で目立つか。他にもアスカちゃんの同期が居たら良かったんだけど、アイツら全員客先常駐だしな。」

「そうなんですよー。ほんとすみません。」

「たまにはいいよ。面白いモノが見れそうだし。」


 エレベーターを待っていると、営業企画部から徳永さんとワタナベがやって来た。


「お疲れさん。みんな、ペコリーノでいい?」


 徳永さんがそう呼び掛けると、みんな無言で頷いた。


◆◇◆


 会社近くのイタリアンのお店、ペコリーノに入る。五分ほど待って席に案内された。円卓に奥から徳永さん、渡辺、私、マミさんと座った。ピッツァやパスタのランチセットを頼み、料理が来るまで、他愛ない話をする。


「おマミ、一緒に飯なんか久々じゃない?旦那さんと飯に行かなくて良かったの?」

「え?邪魔って言いたいの?おごってくれるっていうから来たのにー。」

「えー。おごってやるのは笹本だけだよ。百歩譲って渡辺までだな。同期にゃおごらん。」

「はいはい。おごりじゃなくていいし。」


 マミさんがデキャンタからレモン水をコップに注ぎ、ゴクゴクと飲む。


「徳永さん、私もおごりじゃなくて構いませんよ?」

「笹本は後輩だからいいんだ。たまにゃおごられとけ。」

「徳永先輩、俺もおごりっスか?」

「渡辺はしょっちゅうおごってやってるだろが。」


 徳永さんは案外いじられキャラなのか、マミさんとワタナベが交互に徳永さんのコップにレモン水を注いで、溢れそうな状態になっている。


「あーもう、おマミも渡辺も!やめやめーい。飲むのが難しくなっちゃうだろー?」

「ガンバレ♪」

「俺も真似しちゃお。徳永先輩、ガンバレ♪」

「渡辺、あとで覚えとけ。」


 やり取りを見てたら、耐え切れなくてクスクス笑ってしまった。徳永さんが可愛すぎる。


「ほらー、笹本に笑われちゃったじゃん。」

「徳さん、からかったら面白いんだもん。同期の中でもマスコット的存在よね。」

「森先輩と徳永先輩って、同期なんですよね?徳永先輩もシステム開発部にいたんですか?」

「ん?同期だけど、徳さんはずっと営業企画部だよ。新入研修は一緒だったけどね。最初から営業志望だもんね?」

「うん。俺、プログラムとかあんまり。一応、研修でちょっとはできるようになったけど。」

「へえ!徳永さん、最初から営業企画部なんですね。ワタナベはシステム開発部から営業企画部へ異動したから、みんなそうなのかと思ってました。」

「まあ、うちの会社、システム屋だからね。営業企画部の方が人数少ないし。」

「徳さんなんか、メガネでおとなしめだから、絶対SEだと思ってたのに、見掛け倒しだもんなぁ!」

「こらこら。」


 マミさんと徳永さんは同期で、入社七年目。私とワタナベも同期で、入社五年目だ。うちの会社はベンチャーで、十五年前くらいに設立された。なので、社員の平均年齢は大手と比べるとかなり若いと思う。ちなみに、マミさんの旦那さんは山野辺さんといって、マミさんよりさらに三年先輩だ。システム開発部のエースで社内ベンチャーの事業部長をしてたりとか、会社の取締役をしていたりとかのスーパーマン。


「あはは。マミさんと徳永さん、仲良いですね。」

「そうか?お前らも仲良いじゃん。」

「え?そうかなぁ?腐れ縁ですよ!ねえ?」


 徳永さんは多分、私とワタナベの仲を勘違いしているような気がする。確かに仲は良い。でも、同期全員こんな感じだし、男女の仲ではなく、友人として同僚として仲が良いのだ。


「なあ。腐れ縁だよなぁ。コイツ、俺のことすぐパシリに使うんですよ?」

「ちょっと!人聞きの悪い!アレはアンタがコンビニ行くって言ったからついででしょ?それもその一回コッキリで!」

「ほら!」


 そこでオーダーしたものが運ばれてきて、わあっと声が上がる。それぞれ思い思いに料理を口に運び、舌鼓を打った。


「お、ぼちぼち昼休みが終わっちまう。落ち着いたら出ようか。」

「そうね。徳さん、ごちそうさま。」

「おい……。しゃあねぇな、全員おごってやるよ。」

「さすが!徳さん!」

「やった!徳永先輩、ごっつぁんです!」

「お言葉に甘えて、ごちそうさまでした。」

「おう、またみんなでランチ行こうな。」

「はい♪」


 徳永さんが私に向かって優しく微笑んだ。

 今日は徳永さんのお茶目なところをたくさん見られて幸せだった。


実はいじられキャラでした。

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