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300時間のシンデレラ  作者: 小塚彩霧
2/50

第2話 気まずい車中

 ビルを出たところでワタナベは自転車に跨がり、「お疲れ様です、また明日」と去っていった。

 徳永さんと二人きり。

 ビルの立体駐車場から車を出す。駅から少し離れた住宅地に会社のビルがある。機械の動く音だけが夜の闇に響く。


「笹本ん家、榎坂(えのきざか)ら辺だったっけ?俺ん家はその向こうの桜台なんだけど。」

「はい。」

「ちょっと散らかってるけど、乗って。」


 徳永さんが運転席に乗り込み、助手席の上着やらを後部座席に投げ込んだ。助手席のドアを開けて「お邪魔しまーす」と乗り込んだ。

 会社から私の家までは車で三十分くらい。運転する徳永さんの横顔を見たいけど、恥ずかしくて、見つめ続けていたら怒られそうだし、ずっと前を向いていた。


「笹本、彼氏とかいないの?」

「え?い、いないです、そんなの。」

「そっか。彼氏いたら、他の男の車なんかに乗って帰ってきたら怒られそうだもんな。」

「と、徳永さんこそ、彼女とかいないんですか?」

「残念ながらいないね。」


 話が途切れて、控えめな音量のカーステレオから音楽が流れているのが聞こえる。


「あのさ、笹本。」

「はい。」

「渡辺と仲良いけど、好きなの?」

「ええっ!?だ、だ、誰がそんなこと!そんなわけないです!」


 思いの外大きな声が出た。必死で否定してみたが、わかってくれただろうか?


「えー?益々アヤシイな。アイツ、良いヤツだし、付き合ってみたら良いのに。仲、取り持ってやるよ?」


 あわわわわ。マジで勘弁!

 私が好きなのは、アナタ!徳永さんなのに!!


「あはは、ワタナベはただの同期ですよ。それに、アイツ、社内の女の子達にめっちゃ人気あるじゃないですか。私なんて、とてもじゃないけどムリムリ。そもそも、タイプじゃないんで!」

「ふーん。ま、そういうことにしといてやるよ。」

「いや、ほんとに。ワタナベはそんなんじゃないです。」


 またもや沈黙。

 ほんとにわかってくれただろうか?

 いっそ、ここで告白してしまえば!なんて、そんな唐突なことをする勇気があるわけもなく。こんな近くにいるのに、なんにもできない私。

 しばらくすると家の近くまでやって来た。徳永さんが沈黙を破る。


「えっと、もうすぐ榎坂だけど、どこら辺?どこで右折?」

「は、はい。えーっと、この先、右手にファミレスがある交差点があるので、そこを右に。あとはまっすぐで、二つ目の信号のところです。」

「了解。」


 ほどなく私の住むワンルームマンションに着いた。


「徳永さん、ありがとうございました。また、お礼させてください。」

「おう、お疲れ。お礼なんかいいよ。また、明日な。お休み。」


 車から降りて、部屋に入る。


「はあぁぁぁぁぁ。疲れた。」


 ほんの三十分のドライブだったが、緊張しすぎて疲れてしまった。もっと色んなことを話したかったし、徳永さんのことをもっと知りたかったのに。

 シャワーを浴びながら、色々考える。

 ワタナベについての誤解は解けただろうか?今度会った時はなんてお礼をしようか?彼女がいないなら、飲みに誘ってみようか?それか何か小さなプレゼントが良いだろうか?どうやったら、私は徳永さんが好きだということに気付いてもらえるだろうか。


 一方その頃、徳永さんとワタナベの間で、とんでもないことが起きているとは、このときの私は全く知る由もなかった。

何となく三角関係。

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