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記憶境日  作者: 紫晶朔実
第Xx+1章ー夜の国編ー二つの王族
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第五話 黒魔族の城

 ー朝、目が覚める。

 またやり直しか、と一言呟く。

 何を間違えた?とベットの上で考え込む。

 目が覚めるという行為のあとはいつもこうだ。

 もう何度繰り返して…何回繰り返したっけ…?

 灰色の腕の番号を一目確認する。また一つ番号が上に上がっていた。

 これが何を意味しているのかは、まだその時の私は分かるはずもなかった。


 いきなり弄り倒された青年の頭は少しぼさっとしていっていた。青年はそれが不満だったのかすぐ手櫛で髪を整えようと髪を撫でていた。その仕草は繊細で気品があった。

 一方その頃、情報屋を含むこの家に隠れる三人は、青年に関する準備を進めていた。

 ただ単に記事にあったNight王国へ行くという事ではない。

 この世界は各国が指定した地域がある。そこが基本的な国の領域、というのはおわかりだろう。しかし、この国々は季節によって移動する。真四角の土地のの四方に春夏秋冬がそれぞれ固定された地域があり、その地域に領土が近づいたり離れたりすることで気温や湿度が変わるのだ。

 と説明したはいいが、この隠れ家があるこの森は一年雪が降り続いている異常気象。いくら日が経っても、良くて雪が止むくらいでただただ寒い。

 そんなこんなで国と国の間にある草原はとても広く、案内板も道もない。目的もなく歩くだけではただただ野垂れ死ぬ。本当に何もない草原を長期間歩くのは人間では別の国にたどり着く前に物資が底を尽きてしまうだろう。最低の物資で最短距離で行くには今いる地域と目的地移動ルートを算出することが必要になる。

「でもぉ、逃げてこれたんだから結構近いんだねぇ今の時期。」

「あぁ、私が見つけた時の追手が人間の狩人だったから、一旦は逃げ延びてまた追いかけられていたのだろう。」


 真夜中、この森で一番大きな大樹から離れていく情報屋と新しい防寒着を羽織った青年。情報屋は一旦、彼を「カラン」(Aが記憶が空っぽ、からそう呼び出した)呼び、一人分は余裕な数日分の栄養食と浄化水を鞄に詰めて、八面体の青く輝く宝石のランプを携えて大樹を後にした。

「防寒着本当に着なくていいんですか?」

 情報屋は室内と変わらない服装で、カランが着ているようなもこもこの上着は着ていない。首にかけていたネックをあげ、顔を半分覆っていたが、それでも寒そうだ。

「これ位の気温の方がちょうどいい。」

 家を出て数分後、突然情報屋は立ち止まり、白い手袋をしたまま手笛を鳴らした。森にこだまして響くその音には少しだけ()()()()()()()()()()()()()()()

「い、いきなりどうしたんです?」

「少し待ってろ。」

 雪が降る中木陰で待つ二人の元にその積もった雪に紛れて、青年と同じ真っ赤な目が浮かび上がる。

「うわあああぁぁぁぁぁ!!!??」

 カランはその目に飛び上がるほどに驚いて、情報屋の袖に勢いよくしがみつき顔を真っ青にして暫く動かなかった。

「離れろ。暑い。」

 情報屋は軽くカランを腕から振り払った。

 目の前に現れたのは真っ白なアルビノの狼。毛皮はこの寒さでも生きていけそうな位もふもふだった。

「やぁ、ブランカ。今日も案内頼むよ。」

 バゥ、と吠えると、左の方向に駆けだして行った。

「ほら、行くぞ。」

 情報屋がカランの手を引っ張り、ブランカの足跡を追っていく。この静かな雪ならば、すぐに足跡は消えないだろう。

「狼の鼻はよく利く。火薬の匂いを本能的に避けてくれれば、あの狩人たちにまた出くわすことはない。」


 ブランカのお陰で何事もなく森を抜け、数日草原の上を歩いた。この時期草原を歩くモノは居ない。どこからともなく砂が飛んできて喉がカラカラになるのが苦しい。

「…むっ、いきなり暗くなったな。着いたか。」

 情報屋が上を見上げると、先程まで朝だったはずの空が暗く分厚い雲が覆い、太陽が見えなくなっていた。目の前には藁や木でできた自然に溶け込むスタイルの住処が不規則に建てられていた。外に出ている住民は誰一人いない。灯りも一つも灯っていないほとんど見通せない暗闇に情報屋は恐れずに足を踏み入れた。

 落雷に目の前が大きく照らされる。

「もう国の真ん中まで…え…。」

 燃えたと噂されていた城は、その場に、禍々しくも堂々と真っ黒い影を落としていたのである。

 

 町を見ても何も思い出さないカラン。いよいよ黒城の扉を押し開く。しかし二人はとある妨害により二手に分かれてしまう。

 天井から見つめるのは誰なのか…。


次回「紫炎の耳飾り」

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