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悪役令嬢の品格-読者様への感謝を込めた短編集-  作者: 幸路 ことは


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趣味はなんですか

「クリス様のご趣味は?」


「休日は何を?」


 茶会や夜会でそう話題が振られる度にクリスは、


「エリーと一緒に過ごして、エリーのために行動すること」


 という本音を隠して、当たり障りのない返答をしていた。クリスとしては本音をそのまま口にしてもいいのだが、カイルにエリーナが社交界に出ることになったら困るからと以前言われたのだ。


 クリスとて多くの人が趣味として挙げるチェスや乗馬、美食が嫌いなわけではない。だがどれもエリーナがいるから楽しく、喜びを感じるのだ。つまり、趣味はエリーナだ。


 それは結婚しても変わらず、エリーナの願いを叶えることが楽しみであり生き甲斐である。今もエリーナが馬に乗って散策がしたいと言い出したので、前に乗せて馬を歩かせている。


「馬車と違って、風を感じられるからいいのよね」


 エリーナはクリスに身を預け、馬に揺られながら景色を見ていた。早朝の空気を肺一杯に吸い込めば、体が目覚めていく気がする。


「そうだね。こうやって、エリーに触れていられるし、エリーを攫ったみたいでワクワクするね」


 クリスはエリーナを抱くようにして手綱を握っており、顎を上げて顔を向けたエリーナに微笑みかける。


「あら、攫われたお姫様として大声をあげたほうがよろしくて?」


 それに対してエリーナはにまっと口角を上げて、挑戦的に笑った。


「できるものならね」


 額にキスを落とし、エリーナを左手でしっかり抱きかかえてから両足で馬を蹴った。


「きゃっ」


 馬はいななきを上げて走り出し、エリーナは慌てて鞍の取っ手に掴まる。鞍は二人乗り用で、前に乗る人用に取っ手があった。


「ちょっとクリス! 危ないじゃない!」


 エリーナは必死に掴まって抗議するが、クリスは楽し気に笑うだけでしばらく乗馬を楽しんだ。そして屋敷に近づいたところで馬の足を緩めると、クリスはエリーナの首筋に顔をうずめ頬を寄せた。


「きゃっ、くすぐったいわ、やめてクリス!」


「ほんと、エリーは可愛いな」


 遊ぶのは終わりと、クリスは首筋にキスを落として馬を屋敷へ進めた。今日は久しぶりのエリーナと二人だけで過ごす休日だ。ここ最近は休みがあっても、式の準備で忙しかったりシルヴィオ夫婦が遊びに来たり、エリーナが王都の母親に呼ばれてお茶をしにいったりしていたためゆっくりできなかったのだ。


 屋敷に帰って朝食を済ませ、午前中は領地にある牧場へ料理人を連れて出かけて新鮮なプリンを堪能し、クリスは熟成されたチーズとワインを味わった。クリスはさらに卵と牛乳の質を上げるよう、餌などの手配をしておいしそうにプリンを食べるエリーナを眺めていたのだった。


 そして町のレストランで食事をし、屋敷に帰って来た二人は盤上を睨んで向かい合っている。最近エリーナはチェスにはまっており、クリスはその相手をしていた。


「お義母様って、すごく強いわよね」


 エリーナはポーンを動かし、むむっと難しい顔をして盤上の駒を見ている。クリスの母親はチェスが好きで、その腕前は名だたるものだった。当然エリーナが勝てるはずもなく、ほんのお遊びなのだが、それでもエリーナは楽しかったのだ。


「まあね。僕も勝てたことはないよ」


 悩むエリーナに対し、クリスはすぐに駒を動かす。クリスは子どもの時に母親と何度か遊んでいたが、子ども相手と手加減してもらえることはなかった。


「子どもの頃は、ロマンス小説を読むか悪役令嬢ごっこだったから、もう少しこういうゲームをすればよかったわ」


 エリーナも貴族とのつきあいのために、ルールは知っている。だがルールを知っているだけだ。実践はほとんどなかった。


「でも、全く興味がなかったでしょ?」


「……だって、チェスの駒って可愛くもないし、女の子は人形遊びのほうがいいわ」


 バレンティア家の双子も同じことを言っていた。教養としてチェスを練習しているそうなのだが、武骨なチェスの駒が嫌いらしい。ゲーム自体は好きなので、双子でよく勝負をしているそうだ。


「ふ~ん。可愛くねぇ」


「そうよ。クイーンがベロニカ様だったら、喜んでチェスを練習するわ」


 そう言いながらエリーナはクイーンを動かした。


「でも、キングは僕でクイーンはエリーナがいいな」


 クリスはキングを持ち上げ軽く揺らした。エリーナは眉をピクリと動かす。キングは今動かされても問題ない。だがクリスはにんまりと笑ってキングを置き、クイーンを手に取った。その瞬間エリーナの顔が引きつる。


「チェックメイト。ごめんね、僕も負けず嫌いだから」


「も~! 一回くらい勝たせてよ!」


「もっと練習しよ。エリーナが楽しくできるように、プリン姫の冒険のキャラで駒を作らせるからさ」


 頬を膨らませて拗ねるエリーナの頬を撫で、クリスは甘く微笑む。拗ねるエリーナも可愛くて、ついこの表情をさせたくなる。


「プリン姫の?」


「そ、カイルに言ってみる」


 エリーナは頭の中でキャラたちを駒に当てはめる。なんだか楽しそうだ。


「そうね、お願い」


「じゃ、次はカードゲームでもしようか」


「いいわね。次は勝つわよ」


 そうして午後はゲームをして過ごし、結果カードゲームはエリーナの一勝三敗で、ふくれた頬をクリスにつつかれるのだった。


クリスの趣味……どうあがいても、エリーナ抜きでは進めらなかった(´・ω・`)

たぶん剣の鍛錬も続けているとは思うけど、それもエリーナを守るためだろうからなぁ。

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― 新着の感想 ―
ベロニカ嬢様のチョコミントフラッシュ、攻撃力高そうですね。 登場の時には薔薇が舞い散りそう
プリン姫のゲームがあったら楽しいですね。プリンの妖精エットちゃんもプリン姫を護りますわ ラウルチョコレートプリンマスターと一緒に(笑)
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