笑顔。
「ねえ。最近どこにいるの?あかり。」
「え、なんで?」
「最近放課後、家行こうと思っても家にいないって言われるから。」
「んー、用事。」
そう言って逃げるしかなかった。あの彼と会ってるなんて、言えなくて。
家にも、外にも居場所がない私は、彼を頼るしかできなかった。
だって、彼が唯一私の話を喜んで聞いてくれて、ちゃんと私の目を見てくれるから。
それだけでも、私は嬉しかったんだ。
「……お疲れ様です。」
「お、今日も来たんか。」
「はい。」
「……どうしたん?元気ないやんか。」
そういうところだけ、鋭いのよね。わかってほしくないところをわかられるのって、少しだけ辛い。
・・
いわゆる、お金持ちの家に生まれた私。両親が欲しかったのは男の子で、跡取りが生まれなければ意味がない。
私はそのまま養子に出されて、今の家に来た。でも、今の家ほど居づらいものはない。元々子供が二人いて、よく私を引き取ってくれたな、と思う。
ちゃんと高校にも通わせてもらえて、もちろん感謝はしてる。でも。
「あかり、ほら。」
「うん、今月のバイト代。」
生活費も、食費も、全部出してるのは私。おかげさまで毎日寝不足。学校が終わって、この時間を過ごしてから、夜勤のバイトに出て、また学校。
私の寝る時間は、正直言って、ない。
「あかり、私も頑張ってバイトするね?」
そう言った義理の姉の美咲。でも、私はこの子を信じられなかった。
そう言ってるくせして、私にお金をたかってくる。私の貯金は、すぐ消えた。
こんなことになるくらいなら、私は前の家に居たかった、なんて。
高校生になって、部活とかもやりたかったのに、そんなお金はない。
こんな苦労、人生で2度としないと思う。
全てを話し終えた後、私は泣いていた。
「泣きたいなら、泣いてええよ。」
そう言ってくれた彼は、私の背中を撫でてくれた。
私の過去を知ってる人はほとんどいない。ていうか、いない。
私に本当の友達なんていないから。
なんで、こんなことになってるんだろう。
「あのな、あかり。」
彼の口から発せられた、「あかり」の声。
家で呼ばれる名前や、友達が呼んでくれる名前より、すごく安心する声。
それと同時に、好きになった私の名前。
「人生はそんなもんやで。嫌いになろうと、知らない人が親になろうと、そんなもんなんやって。でも、あかりの人生の中でこれ以上の苦労はないと思うわ。」
優しくこちらを見つめてくれる目は、私をさらに安心させた。
少しだけ、胸がトクンとなった。
「私が、今、出来ることって、なんですか、」
彼は、私のほっぺをつついた。
「ただ、笑うだけや。」
彼はそう言って、芝生から立って、知らない方向へ歩き出していった。
私はただそれを見つめていた。




