スキルツリー
冒険者ギルドのカウンターには女の子がいた。
「おはようございます~。ようこそ冒険者ギルドへ、私は受付兼、事務兼、経理兼、秘書兼とにかくなんでもやってます。ナナです。よろしくです」
「お、おはようございます。アビゲイルです」
「昨日教会にどこかから飛んできた人ですよね」
「もうみんな知ってるんですか?」
「私もあのとき教会にいたんです~。びっくりしましたけど悪い人じゃなかったようで良かったです」
挨拶もそこそこにナナが水晶球をカウンターに置いた。
「先程の役場でのやりとりは見せていただきました~。スキルの確認ですけど、役場でそのままできますよ?」
「え、そうなんですか」
「ナナ、余計なこと言うな。お前が暇だろうから仕事を与えてやろうというのに」
「マスター。わざわざ仕事を増やしてくれなくていいんですよ~?」
と言いつつ水晶球を出してきてカウンターに置いた。
「では水晶に手を置いてください~」
とうとうきた、ここでわかるスキルで私はまたただの村人になるか冒険者になるかが決まる。神様にどんなスキルをつけてくれたのかあのときに聞いておけばよかったと今になって思う。
はてさて鬼がでるか蛇がでるか・・・・・。
水晶に手を乗せるとまた青く光り、画面に文字が表示されていった。
アビゲイル エルフ
職業 不明
体力 430
魔法力 1026
すばやさ 320
防御力 290
攻撃力 200
スキル
剣 LV・1
魔法 LV・1
火 1
水 1
風 1
土 1
神 1
探索魔法 1
「全部1だ・・・・」
ひょっとしたらものすごいチートでものすごい力を得ているのではと思ったがそんなものはどこにもなかった。全部1。
「おおーいいな! 剣と魔法のツリーがあるし魔法も5元素使える可能性があるし、基礎体力は人間より高めだな! 魔法力も1000超えてる! いいぞ!」
「冒険者に理想的なスキルですね~、神魔法が使えるのは最高です」
「冒険者かと思っていたがそうじゃなかったのか・・・・しかしこれだけ使えるなら冒険者や王立軍に入ることを勧められるがなあ?」
「飛ばされてきたのに関係があるんですかね~? 記憶と一緒に消えちゃったとか」
ディックとナナは私のスキルを見ながら色々話し合っている。おいてけぼりをくらっている。
「あのー・・・・わたしのスキルについて教えてください」
「見た通りだ、スキルツリーを2本持っている剣と魔法だ。魔法は精霊の相性もあるが5元素使える素質がある」
「これってすごいことなんですか?」
「いやツリーを2本持っているのは結構よくあることだ、もっと多いやつもいるし成長途中で新しく生えるときもある。魔法5元素も同じだ、魔法に秀でたやつは結構持ってる。だが5元素全部鍛えるやつはほとんどいない」
「どうしてですか?」
「器用貧乏になることが多いからだ、弱い魔法を各種使えるよりは強い元素魔法をひとつ使えるヤツのほうが重宝される。それに訓練は各元素ごとにやらないといかん、時間がかかる」
「なるほど、ツリーって言うから木の姿なのかと思ってました」
「本来は木の姿をしていて持ち主が成長するごとに木も大きくなっていく、この水晶はそれをもっとわかりやすく見せてくれる道具なんだ。木の場合は本人以外見づらい。個人で見るときは念じればいい」
「念じる・・・・」
心の中で(スキルツリーでてきてください~)と念じると目の前に2本の木が現れた。光る木は小さく葉もなかった、剣のツリーは枝が二手に、魔法のツリーは5つに枝分かれしていた。これはたぶん5元素に分かれているのだろう。
「ツリーもやっぱり小さいな。まあいい。お前は今からこのスキルを1から育てていかにゃならん、時間はかかるがお前はエルフだ。人間より時間がある。つまりこれから育てる余地がある。そして仕事に就かなきゃならん、金が無いからだ! だが酒場の女給や料理人、教会の手伝いくらいじゃこの村ではたいして稼げない! そこでだ!お前は冒険者になるしかない!俺が鍛えてやる!冒険者ギルドに入れ!」
ディクソンは説明しながらどんどんテンションが上っていっている、そんなに私が冒険者になれそうなのが嬉しいのか。しかしなんだかディクソンの様子がおかしいな冒険者ギルドに入って大丈夫かいな。
ナナはその隣で呆れ顔だ。
「アビゲイルさん、よかったら冒険者ギルド入ってください。マスターが言っていることは一理ありますし。それにこの村は冒険者として正式登録してるのはマスターを入れて2人だけなんです」
「すっくな!」
「私からもぜひお願いします~。ここのギルドは人不足でクエストをちゃんとこなせるのはマスターだけだし・・・・お願いします!」
「でもレベル1じゃ何も出来ないのでは」
「1でもできるクエストから始めていけばいいんだ! 剣は俺が教えてやる! 魔法はオスカーが神魔法が使えるからあいつに習えばいい! 頼む! 冒険者になってくれ!」
ディクソンのテンションは上がったままだが、目をみるとなかなか必死なのがわかった。この冒険者ギルドには何か問題があるらしい。正体のわからないレベル1のエルフにここまで頼むのだ、それだけ困っているのだろう。だが冒険者にはなれる、今までオタクとして憧れていたファンタジー世界の冒険が出来る。主婦以外のスキルはこれから育てていくことになり、途方にくれるが今の私はおばさんではない。時間のたっぷりある若い(ここ大事)エルフなのだ。やるしかない。というか冒険者になりたい。
「わかりました。ぜひ、お願いします。私冒険者になりたいです」
「・・・・・・よし、よしよしよし!いよっしゃああああああああああ!!」
今までこれほど見事なガッツポーズは見たことがないというくらい見事なガッツポーズだった。後光がいま指したような気もする。
「よし! 登録しよう! 手を出せ、水晶球にのせろ!」
あわててのせるとその上からディクソンが思い切り水晶ごと握りしめてきた。
「痛い痛い痛い!」
水晶が役場のとき同様じんわり光った。
「これでお前はこのトココ村冒険者ギルドの一員だ! 今日からよろしくな! お前はもう俺の部下だからアビゲイル・・・・いや呼びづらいアビーって呼ぶからな!」
「ええー、まあいいけど」
笑うしか無い。
「アビーさん、これからよろしくおねがいします。わたしのこともナナと呼び捨ててください~」
「あっはい、よろしくおねがいします」
ナナも順応が早い。
水晶球が表示した画面にはもう職業が冒険者と書かれていた。
「冒険者に登録したのか、おめでとう。」
村長がいつの間にか来ていた。
「村のみんなには君のことはおいおい話していこう、たぶんあっという間に広まると思うがね」
「はあ」
「ここは娯楽やおもしろいことが少ないから、ちょっと面白いことがあると光より早く知れ渡るのさ」
「まあ、しばらくはディクソンの言うことを聞いてやってくれ。彼も色々溜まってるから」
「溜まってる・・・・?」
聞くと村長はにっこり笑ってごまかした。
「すぐわかる」
「そうですか・・・・・」
早まったかな?