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手芸と魔素と訓練と

 魔素集めは明日から採集クエストと一緒に頑張ることに決めて、夜はのんびり裁縫をして時間を過ごした。

 狼討伐の途中の暇つぶしのはずだったが、本格的に始める前に狼のほうが忙しくなり、少しの間することが出来なかった。と言っても風呂敷は布の端を縫えば出来上がってしまうので今日明日で終わるだろう。

 アビゲイルが狼退治をしている間、エルマとカミラは時間つぶしと運針の練習を兼ねてずっと雑巾作りをしていたので、かなりの枚数の雑巾が出来ていた。エルマ曰く2年はもう作らなくていいという。オスカーも礼拝堂や応接室と掃除をするところが多いので喜んでいた。

途中でエルマにボタンをつける方法も教えていたので、カミラと一緒にそちらもほぼ終わっていた。

教会の家族が過ごす居住スペースにあるリビングで4人が集まってくつろぎ、女たちはみんなで裁縫をしている。アビゲイルは今までこちらにくることはあまりなかった。裁縫の続きをここでやろうとエルマが誘ってくれたのだ。このリビングにも家族用の小さめなキッチンがあった。こちらのかまどはストーブのような形をしていて、暖房と調理を兼ねたものらしい。だが夜にお茶を沸かすだけでほとんど使っていないそうだ。キッチンにつながった10畳くらいのリビングには暖炉もあり、古臭いものだったが布張りのソファもあった。

 そのソファに女3人が並んで座り、こつこつと針を進めながらのんびりとしていた。

「アビゲイルさんは次に作るものを決めているの?」

「一応カバンに入れる袋を大小作ろうかなあと思ってるんだ」

「収納に使うのね」

「どんなふくろ?」

「ただの袋だよ、巾着袋。紐で閉じるやつ」

 アビゲイルは紙に書いて説明した。

「こうやって両側から紐で引っ張ると口が閉じるわけ、で紐を結んでおけば緩まない」

「なるほど、私も小さめの何か入れ物がほしかったから作ってみたいわ」

「じゃあ一緒に作ろう、作りかた教えるからさ。布を選んでおいてね」

「いいなあ、カミラもほしい~」

「カミラはまず布を買わないとね、お小遣いで買いなさいよ」

 そう言われてカミラは自分の部屋に飛んでいった。お小遣いの残りを数えにいったのだろう。足りるといいが。

 風呂敷の半分を縫い終えたので、今日はここまでにして眠ることにした。明日は採集クエストが残っているといいのだが。


 翌日、採集クエストは残っていなかった。なんと昨日のうちに予約が入っていたらしい。それを聞いてアビゲイルはナナを少し恨むように見つめるとナナは慌てて言い訳しだした。

「いやいやだって~、アビゲイルさんに昨日予約されてももう枠が空いてなかったです~」

「明日は~?」

「あと3日くらい予約済みです~」

「どわー、まじかー。おまんまの食い上げだよ!」

 後ろにディクソンの気配を感じる、こっちを見ている。振り向くと嬉しそうな顔をしている。訓練か。

「俺とちょっと森の奥まで巡回しようぜっ。魔素集めも兼ねてさっ。そして午後から剣の訓練しようぜっ」

 語尾に星がつきそうなくらい軟派な感じで近寄ってきた。ちょっと気持ち悪かったがまあそれしかなかったので承諾した。

「そういえばロイドは?」

「今日は実家に呼ばれてるんだとよ」

「ふうん」

 ロイドの実家は小麦農家らしいが、どんな家族なんだろう。ロイドだけ離れて暮らしているのもなんだか気になるといえば気になる。

「あ、そうだこの間の飲み会で気になってたんだが、ちょっとお前のスキルツリー見せてくれよ。どのくらい成長してるのか気になる」

 ぼんやりとロイドの家のことを考えていたらディクソンに遮られるようにスキルツリーのことを聞かれた。そういえばそんなものあったな。

「ん、いいけど。私も全然見てなかったわ」

 念じてツリーを見る。人がわらわらと集まってきて、ちょっとした見世物になってしまった。まあいいけど。


アビゲイル エルフ 

職業 冒険者


剣4 魔法6


体力 565

魔法力 1372

素早さ 362

防御力 320

攻撃力 278


火5

水6

風2

土1

神2


探索 6


「だいぶ上がってるんじゃないか? 前は魔法全部1だったもんな?」

「そだね、探索は外歩くたびに使ってるから6にまでなったんだ・・・・・火と水も風呂とか料理に使ってるからか」

「もっと戦いに使ってほしいんだがな、まあ力がついてるならいいけどよ。神魔法がもっとあがるといいんだがなあ。教わってるのか?」

「ぼちぼち」

「もっと本格的に学べよ~」

 確かに覚えたい魔法ではあるのだが、気づくとあまり練習出来てない。オスカーも無理やり教えてくることはせず、アビゲイルが問うと答えるという感じで合わせてくれている。オスカー自身も神父としての仕事があるので無理に頼むことは出来ない。だが休日などに都合を合わせて何か教えてもらったほうが良いかもなとアビゲイルは思った。

 剣もまあこれは練習不足だ、バフマン達に作ってもらってから全然練習できてない。討伐でずっと巡回だったせいもあるのだが。狼も一応倒しはしたが、まったくもって情けない倒した方だった。まともに切る事もできず、突っ込んできたとこを串刺しにしただけである。下手すれば死んでいたかもしれない。

作ってもらった人たちにも申し訳ないくらいだ。

「魅力は5000くらいあるんじゃが、書いてないの~」

「美人も4000はあるぞい」

「うるせえぞ! すけべじじい共!」

 ディクソンがしっしと手を振ってじじいを追い払う。

「まったくもう・・・・・てか1ヶ月にしては上がっている方だがやっぱり剣と体力だな」

「あとお金」

「それは追いかけすぎるときりがないぞ、じゃあ準備してくるからすぐに行こうぜ」

 準備と言ってもディクソンはカバンひとつ抱えれば終わりである。剣はいつも腰にくっついているし他の革鎧も手袋も朝からすべて装備している。むしろ装備してないときのほうが珍しいくらいだ。アビゲイルもそれにならってギルドにくるときは剣を装備しているし、休日も剣は離さないようにしている。コルセットは今はルツが染め直してくれているので手元にないのだが、戻ってきたら毎日装備することになるだろう。

「弁当をアルのとこでもらってくる。一緒に付き合ってくれ」

「はいよー、いってきま~す」

「アビーちゃん、ディクソンという狼に気をつけてな~」

「うっせ!」

 ギルドが爆笑に包まれて平和そのものだ。笑いながら酒場に向かう。朝だがお客がちらほらといた、ここで朝食を食べてから仕事に向かう人も多いのだそうだ。

「おう二人共、おはようさん。さっき頼んでくれた弁当は出来てるぜ」

カウンターからアルが紙袋をディクソンに渡してきた。

「ありがとな、よし行くぞ!」

「ほーい」

「気をつけてな」

 というわけで今日は魔素狩りとなった。アビゲイルのクエストの予定はだいたいディクソンが勝手に決めていくのだなと気づいてしまったが、あまり気づきたくなかった。

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