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転生場所

「誰だ?」

と言われても。

目を開けると大勢の人に囲まれていた。ここどこ?

周囲を見回すとほとんど男性だけだったがよく見ると奥の方に女性や子供、老人もいる。

長椅子の後ろに隠れて、こちらの様子を見ていて興味津々という感じだ。一人を除いて・・・・・。

「誰だと聞いている、名前は? どこからきた?」

長身マッチョの男が鬼みたいな顔で私に剣先を向けて聞いてくる。転生直後に私は死ぬのか。返答次第ではそうなりそうな予感。

やばい、名前まだ考えてないわ。

「名乗れ!」

「アビゲイル! アビゲイルです!」

とっさにでてきた名前は私がゲームでよく使うものだった。正直もっとゆっくり考えたかった。

だがこの状況で慌てて元の世界の名前を言わなかった私えらい。

「アビゲイル、変わった名前だな。どこからきた?」

「と言われても・・・・ここどこですか?」

「ここはカールズ王国バン・デルデン領トココ村だ。そしてその村の教会だ」

「トココ村」

かわいい名前の村だな。

「アビゲイル、お前はどこから来た? いやどうやって突然現れた?」

剣先をこちらに向けたまま、男はさらに聞いてきた。

だけど異世界転生してきたただの主婦ですと言っても信じてもらえないだろうし。おかしい人だと思われそう。

こちらの世界は来たばっかりで何もわからないし、変なこと言わないほうが良さそう。

「わかりません・・・・・」

「わからない?」

「はあ・・・・全然わかんないです」

「なんでわからないんだ?」

「えーと・・・なんでですかね?」

異世界転生は黙っておこう、他のことは何もわからないからそのまま素直に言うしかない。

「ディクソン、この人は魔物なのか?」

剣をこちらに向けている男はディクソンというのか、なるほど。

「村長、魔物なら教会に現れたりしないよ」

私の後ろから声がかかった、見ると白いローブを着ている、ここは教会なのか、じゃあこの人神父様かな?

ディクソンに魔物かどうか訪ねた小太りの男性は村長さん、ふむふむ。とにかく情報、情報だ。こっちは何もわからないんだ。

「わ、わたしもなんにもわかんないんです。急に光に包まれて眩しいなと思ってたらここにいて」

「ふむ・・・・・冒険者か? ダンジョンの罠で他の場所に飛ばされるものがあるが、ひどいときはかなり遠くのどこかわからないところまで飛ばされることがあると聞いたことがある。」

「そんなことがあるのか」

「ああ、俺は見たことないがな、難易度の高いダンジョンの深部にはたまにあるらしい。飛ばされて行方がわからなくなって数年後別な場所で再会したという記録もあるんだ」

「へー・・・・」

「へーってあんたなんにも覚えてないんだな、荷物も剣も持ってないし、どこから飛ばされたとか思い出せないのか?」

「はい、なんにも」

「記憶も飛ばされたのか? まじかよ・・・」

ディクソンは剣を収めながらため息をついた。

「危険はないのかね? 彼女」

村長は私とディクソンを交互に見ながらたずねた。

「たぶんな、ただの迷子のエルフみたいだ」

その言葉を聞いて周囲の人たちも緊張がとけたみたいに話しだした。奥にいた女性や子供たちも覗き込んでくる。

どうやら最初の危機は脱したみたい、よかった。

ほっとしたら力が抜けてそこに座り込んでしまった。

「だいじょうぶかい?」

神父が手を差し伸べてきた、優しそうな人だなー。よく見るとなかなかのイケメン・・・イケオジ。

「ありがとうございます」

お礼を言って立ち上がると神父を見ていた目線が下がった。神父は私よりちょっとだけ背が低かった。エルフほんとでかいんだな今まで背が低かったから見上げてばかりだったのでなんだか新鮮。

「えーとアビゲイルさんだっけ、このあとどうするの?」

このあと?

「お金は持ってる? 荷物はないようだけど」

あ、そうかお金・・・ズボンのポケットに手を入れるが何も入ってない。ベルトには小さめの革ポーチがついていたがこちらも空っぽ。神様せめて剣といくばくかのお金は欲しかったぞRPGでも最初は50か100くらいは持たせてくれるのに。

「どうしよう・・・・」

「よかったらしばらくこの教会に泊まるといい、狭いけど部屋はあるし」

「ホントですか! ありがとうございます!」

「待て! オスカー!」

ディクソンが突然大声で会話に割り込んできた。

「危険がないわけじゃなくて、無さそうってだけだからな! 油断するな! お前はともかくエルマ達に何かあったらどうすんだ!」

「大丈夫じゃないか?」

「もっと警戒しろ! ・・・・ああもう、今日は俺も教会に泊まるぞ! 念の為にな」

「わかった、部屋を用意しよう」

あのディクソンっていう人すごく用心深いな・・・ある意味やさしいのかもしれない。

まあ見ず知らずのエルフが突然目の前に現れて危険はないです、はいそうですか。とは普通ならないし。

神父さんがちょっとおっとりしてる。他の人達もなんだかそんなのんびりした雰囲気だし。

村と言っていたからふだんは長閑な所なのかも。

「おーいみんな、今日の集会は終了だ。祈りはすませてあるからだいじょうぶ、また来週な」

神父がそういうとみんなぞろぞろと教会から出ていった、何人かの村人は私に「じゃまたな」とか「災難だったな」とか挨拶までしてくれた。

「じゃあアビゲイルさん、こちらにどうぞ」

私はそう言われて神父さんについていった。


新しい生活、初日からなかなか怖い。








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