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剣の練習

 朝、冒険者ギルドに行く前にブイヨンを肉屋へ届けることにした。店に着くとまだ開店前だったが店主が外の掃除をしていた。

「おはようございまーす」

「おはよう、早いな。どうしたんだい?」

「昨日お約束していたブイヨンを持ってきました」

「おお、ありがとさん。いつでも良かったのによ」

 店主は鍋を受け取り、蓋を開けた。中には鶏の骨から出たゼラチンで固まったブイヨンが入っていた。

「茶色いスライムみたいだな」

店主は「これ食えるのか?」という怪訝な顔をしていた。笑ってアビゲイルが説明する。

「大丈夫食べられます。これ鶏の骨からでた髄液の影響で固まってるんです。ゼラチンていうんですけど、冷えて固まるとおいしいブイヨンができた証拠です」

「ほーん、ゼラチンかなるほどね。匂いはたしかにいいな」

「温めて溶かしてから野菜やベーコン、ローリエを一枚を入れて、塩コショウで味付けてください」

ふんふんと頷いたあとにまたゼラチンを見ながら店主は言った。

「わかったぜ、酒場の旦那と昼に食ってみるか」

「酒場?」

「あんたが昨日店に来たあとに酒場の旦那が来てよ、この話をしたら興味があるようだったんで、一緒に食おうと約束したんだ」

「へー、じゃあもう少し持ってくれば良かったですかね」

「いいよ、味が知りたいだけだから、気にすんな」

午後に鍋を取りに来ることを伝えてアビゲイルは冒険者ギルドに向かった。


 本日のクエストに薬草収集はなかった、今週集める量が揃ったからだという。他にあるクエストは広場とギルドの清掃だけだった。

掃除のクエストも悪くないなと考えていたら、ディクソンがじりじり背後に寄ってきた。

「アビゲイル・・・・今日は剣の訓練しないか?」

「怖いわ」

「いやでもそろそろ、練習したほうがいいだろ? な?」

ディクソンがやりたいだけだな、とアビゲイルは思ったが確かに剣の練習はしたかった。木剣から早く卒業したい。木剣は見た目が子供のおもちゃのようでちょっと恥ずかしいのだ。

「そうだね・・・訓練てお金かかる?」

「DとEランクは無料だ」

「じゃ私最下位のEランクだから無料だ。よろしくおねがいします」

「堅実でよろしい」

ギルド裏の訓練場に移動する、以前来た蔵の横にある広場だった。ただ広いだけで何もない空き地だ。周囲は一応石塀に囲まれていた。

ディックは練習用の剣を持ってきた、長さも形状も様々で鋼や鉄で出来ている。見た目もなんだか豪華で、きれいな装飾がついていたりした。

「練習用にしては豪華だね」

「鍛冶屋に作ってもらったんだが、趣味で勝手に装飾されたりこうして種類も増えたんだ」

アビゲイルは剣を一つずつ持って何度か振り、自分にあう剣を探してみた。

「うーん、これかな?」

選んだのはショートソードだ。刃の長さは70センチくらいで強く振ると剣先が少ししなった。見た目より軽い。刃の中心部に溝がある、これが軽量化できている理由のようだ。

「そうだな、ショートソードが一番いいだろうな、基礎と応用を学ぶのに一番いい、お前の身長だとロングでもいけるかと思ったが、ちょっとまだ重いだろうな。これで慣らしていこう」

「はーい」

 剣の練習は基本の構えと動きを習ってから打ち合いをした。ディクソンはもちろん加減してくれた、だが優しくはない。しかも気の抜けた瞬間や隙を瞬時に見つけ、そこを突いてくる。まったく油断が出来ない。

時々強く振り下ろしたりして慌てて受けると手がしびれる。

「無理に受けなくていいぞ、しびれるのは握力が弱いせいだ。だがしっかり握れ、手首は力を入れすぎるな」

「アビーちゃん、がんばれぇーい」

声援に気づいて見ると訓練場の壁際にじじばばが何人かいて練習を眺めていた。どうやら暇つぶしに覗きに来たようだ。

「うわ、はずかしっ」

「気にするな、よそ見すると危ないぞ!」

注意とともに剣を絡め取られ、はじかれた。アビゲイルの右手から離れた剣はくるりと回って地面に突き刺さった。

「もう少し足を動かせ、あとビビりすぎだ。剣を拾え、どんどんいくぞ」

アビゲイルはすでに息切れしていたがディクソンはけろりとしている、お遊びにもならないのだろう。訓練はそのまま2時間ほど続いた、途中休憩もあったが最初からかなりしんどかった。訓練はまめにやったほうが良さそうだ。

「週3か2くらい訓練したほうがいいかな?」

へとへとになりながらディクソンに聞いてみた。

「まあそのほうがいいかもしらんが、金も稼がないとだしな。そのへんのスケジュールはお前に任せる。訓練したいときは言ってくれ」

「ありがとう」


 顔を洗い汗をある程度流してからギルドのカウンターがある集会所で昼食を食べた。じじばばとお弁当を囲んでいるとそこに恰幅のいい女性がやってきた。

「アビゲイルさんて人今いるかい?」

「ふぁい、私ですけど何か?」

パンを加えたままアビゲイルが返事した。

「ああよかった、あたしゃ酒場のおかみでウルバってんだ。食べ終わったあとでいいから酒場に来てくれないかい?」

なんでだろうと思ったが、そういえば肉屋の主人がアビゲイルのブイヨンを一緒に食べると言っていた。そのことだろうか?

「わかりました、すぐ行きます」

「ありがと、頼むよ」

そう言ってウルバはすぐにギルドを出ていった。

 アビゲイルは急いで弁当のサンドイッチを食べて、急いで酒場に向かった。



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