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第零話『雨の記憶』

 その日は、土砂降りの雨が降っていた。

 辺りは既に暗く、時間帯は夜の11時をとうに回っていた。

 しかし、街頭の助けで辺りは薄暗く、行き交う人の顔くらいは見る事が出来た。


「君、ずっとそこに立っているつもりかい?そのままじゃ風邪を引いてしまうよ。ほら、これをあげるから…」


 傘を差し出しながら、英国紳士のような黒いスーツを着た男が、11歳くらいの少年に話しかけている。

 土砂降りの雨の中、傘も差さず、しかもこんな時間に小学生が出歩いている訳が無いのだが、このご時世である。

 最近では子供が家出をしたまま家に帰らないなんて話は、よくある事らしいと、何処かで誰かに聞いた話をぼんやりと思い出しながら、男は少年を眺めていた。

 しかし、少年は何一つ荷物を持っておらず、靴すら履いていなかった。

 まだ春先なのに、服は薄手の、病院等で支給されている制服のような白地の半袖で、履いているズボンも、上とお揃いなのか全く同じ生地に同じ色、しかも足首より少し上までしか無かった。


 幾らなんでも、これでは寒すぎる…。


 男は我が身のように身震いすると、差し出されたままの傘を更に少年に近付けた。


「さ、持って」


 男が、酷い空模様にも負けぬ、爽やかな笑顔を少年に向けると、彼の右手を取って傘の柄をぎゅっと掴ませた。

 少年は、ゆっくりと男を見上げ、それから更にゆっくりと、傘の柄を自分の力で掴んで受け取った。

 しかし、その顔に表情らしい反応は見られず、虚ろな暗い瞳をじっと男に向けるだけだった。


「オイ、オッサン!」

「ん?」


 男の影に隠れた場所から声がして、男が振り返る。

 男の背丈よりも低い位置にある黒い傘が、男目掛けて差し出されていた。


「これは、なにかな?」

「…見れば分かるだろ?…傘だよ」

「…あぁ、そうか、ありがとう」


 男が嬉しそうに傘を受け取ると、そこから生意気そうな面をした少年が現れた。

 男と合わせているのか、黒いスーツを着た、11歳くらいの少年だった。

 男が、連れであるその少年から傘を受け取ると、軽やかに数歩下がって、すぐにそっぽを向いてしまった少年を傘の下に招き入れた。

 その様子を、虚ろな眼差しの少年は、ただじっと見つめていた。

 否、本当に見つめていたのか、本当はどこを見ていたのか、それは正直分からないところなのだが…。


「今車待ちなんだ。君も来るかい?うち、ここから少し行ったところなんだよ。もし、君が良ければだけど…」


 虚ろな視線は虚ろなまま、瞳の色も暗いまま。

 それでも男は気にする事無く爽やかに笑って、やってきた黒いベンツが少し遠くに止まるのを確認すると、傘を連れの少年に手渡し、ちょっと行って来る、と一声かけて駆けて行った。

 辺りは、相変わらずの土砂降りの雨と音に支配されていた。

 男の背中を見送ると、連れの少年は迷惑そうに溜息を付いて、2人きりにされてしまった少年の方を傘の隙間から覗き見た。


「………オイ、お前、言葉が分からないんだろう?でも、なんとなく俺の気持ちは分かるよな?」


 生意気な面した少年の、ぶっきら棒な囁く声に、男をターゲットに追っていた虚ろな眼差しが、生意気な表情を崩さない少年の方にゆっくりと向けられる。

 辺りは雨音が支配していて、少年の囁き声では、視線を向けてくるだけの少年には、聞こえる筈が無かった。

 しかし、それでも彼は続けた。


「お前がどこから来たのか、俺達は知っている。だから声をかけたんだ。俺達に付いて来るのも、来ないのも、お前が好きに決める事だ。…ま、お前に意思らしい意思は無いだろうけどな…」


 吐き棄てるようにそう言うと、生意気な面の少年は、虚ろな眼差しの少年に背中を向けると、さっさと歩き出した。

 向かう先は、男の佇む黒いベンツの方。

 虚ろな眼差しの少年は、虚ろな眼差しのまま、それを確認したかのように歩き出した。

 ポケットに左手を突っ込んで大人ぶった歩き方をする少年の背中をゆっくり、ゆっくりと追い駆けるように。


 言葉は、聞こえなかった筈なのに…。


まだ操作に慣れず、誤って本文を削除してしまいました…。(--;)

て事で書き直しました。

内容は変わってません。


小説についてですが、これはプロローグというのかなぁ…?

専門的な事は、よく分かんないんですけども(ォィ)、とりあえず第零話、終わりです…。(^^;)


短くてすみません!

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