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プロローグ
地獄。そんな言葉が適当かもしれない。つい最近まで仲の良かった者同士までもが生きるために殺し合う。それ故に、それ以外にハマル言葉が浮かばない。最も醜く、最も恐ろしいものは他の何者でもない、人間自身だった。
そんな人間に絶望して、彼は今回の事件を画策したのかもしれない。
人類史上最大のバイオハザード。いや、そもそもこれはバイオハザードと呼べるのだろうか。
なにせ、原因はウイルスにあるのではなく、人にあったのだから。
だが、それを治めたのもまた人であった。
だれも信じないだろう。だが、この目で見たのだ。それを。奇跡の一部始終を。
こんなオカルティックなことを記事にするなんてどうかしているかもしれない。だが、ありのままを読者に伝えよう。それがジャーナリストの務めであるのだから。
−六月七日 日高新聞 著 沖田正信−