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第五十九話 「許されていた結果」
雨は、いつの間にか弱まっていた
森に残るのは
濡れた土の匂いと
血の生温かさだけだった
勇者は
倒れた魔物から
ゆっくりと距離を取る
剣は、まだ握られている
力は抜けない
腕の中には
小さな身体があった
温かい
確かに
まだ
温かい
呼びかけても
返事はない
揺すっても
反応はない
それでも
抱き寄せる腕に
力がこもる
勝った
確かに
倒した
間違いなく
勇者として
正しい行動だった
森の奥に
危険な存在はなくなった
村へ戻れば
感謝されるだろう
悲しみはあっても
これ以上の犠牲は出ない
すべて
正しい結果だった
――
この結果は
最初から
許されていた
――
雨に濡れた前髪が
視界を遮る
拭おうとして
手が止まる
剣を落とすことも
子供を離すことも
できなかった
勇者は
その場に立ち尽くす
動けない
いや
動かない
理由は
分からない
分からないまま
ただ
抱きしめていた
森は静かだった
何も
なかったかのように




