第四十六話 「受け取った結果」
目的地は、すぐに見つかった。
道の先。
人が集まり、声が交錯している。
魔物は既に倒されていた。
痕跡だけが残っている。
焦げた地面。
折れた木。
戦闘があったことは分かる。
だが――
その場に、戦った記憶がない。
「本当に助かりました!」
誰かが勇者の手を取る。
思ったよりも、強く。
振りほどく理由はない。
けれど、指先に残る圧が、少しだけ気になった。
感謝の言葉が続く。
頭を下げられる。
一度ではなく、何度も。
英雄を見るような視線。
期待と安堵が、重なる。
金貨が渡される。
数は、妥当だった。
勇者はそれを受け取った。
拒否する理由はない。
成功報酬だ。
……成功?
胸の奥で、何かが沈む。
剣に視線を落とす。
柄が、わずかに温かい。
握った手が、ほんの少しだけ震えていた。
理由は、分からない。
「……ええ」
返事は、遅れずに出た。
声も、震えていない。
周囲は満足している。
問題は解決した。
それなのに。
自分が、剣を振った瞬間を思い出せない。
魔物の姿も、
攻撃の感触も、
倒した手応えも。
結果だけが、ここにある。
「お疲れさまでした」
そう言われて、
初めて“終わった”のだと理解した。
帰路につく。
足取りは、軽い。
……軽すぎる。
何かを言うべきだった気がする。
けれど、言葉にすれば、
この違和感に形が与えられてしまう。
だから、何も言わない。
依頼は完了した。
報酬は受領済み。
世界は、次へ進む。
当日の進行を継続する。
イベント処理、完了。
特記事項は――
ない。




