第四十一話 「観測者たち」
五柱は、揃っていた。
広間は静かで、
天井の高さだけがやけに目につく。
装飾はない。
必要がないからだ。
ここは、
彼らが集まるためだけに用意された場所だった。
報告は、簡潔に済まされた。
遺跡での事象。
勇者との接触。
戦闘の中断。
進行は予定範囲内。
記録上の異常は、存在しない。
「……問題はない、ということか」
誰かが、低く呟いた。
応える者はいない。
ヴァルは、黙って立っていた。
背を伸ばし、
視線は正面に向けたまま。
あの遺跡の空気を、
彼は覚えている。
高飛車は、腕を組んだまま、
ゆっくりと息を吐いた。
記録は正常。
処理は完了。
それ以上を掘り下げる必要はない。
そう判断しているはずだった。
だが、
その結論に至るまで、
ほんの僅かな間があった。
「……随分、静かな戦いだったな」
誰に向けた言葉でもない。
それでも、
空気がわずかに揺れた。
五柱の中で、
誰も違和感という言葉を使わない。
使えば、
形になってしまうからだ。
それぞれが、
それぞれの形で理解している。
何かが、想定より先に進んだ。
沈黙が落ちる。
短いが、
軽くはない。
「引き続き、経過を観測する」
結論は、それだけだった。
判断は下されない。
修正も行われない。
五柱は、順に場を離れる。
最後に残ったのは、
変わらないはずの広間。
それでも――
先ほどまでとは、
同じ静けさではなかった。
世界は稼働中。
進行は正常。
特記事項は
ない。




