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第四十話 「処理済み扱い」
王都へ戻る道は、
来た時と何も変わらなかった。
道幅。
景色。
空の色。
違いを探そうとして、
勇者はやめた。
報告は簡潔だった。
異常なし。
被害なし。
追加対応不要。
勇者は頷く。
それで終わる。
終わっている。
誰も、
それ以上を求めなかった。
宿に戻る。
部屋に入ると、
扉を閉める音がやけに大きく響いた。
いつもの部屋。
いつもの机。
いつもの剣。
刃こぼれはない。
血の匂いも残っていない。
何も、残っていない。
勇者は剣を置いたまま、
しばらく動かなかった。
勝てなかったわけじゃない。
負けたわけでもない。
それでも、
胸の奥に沈む感覚があった。
声を出そうとして、
やめた。
言葉にする理由が、
見つからなかった。
夜になる。
灯りを落とす。
横になる。
目を閉じても、
眠りは来ない。
あの広間。
外套を纏った姿。
交わらなかった刃。
思い出そうとして、
また、やめた。
勇者は、
小さく息を吐いた。
深く、沈むように。
当日の進行は終了。
結果は処理済み。
世界は稼働中。
特記事項は
ない。




