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第三十九話 「未処理ログ」
遺跡での事案は、
規定通りに終了していた。
調査完了。
被害報告なし。
追加対応不要。
処理は正常。
進行も予定範囲内。
問題は、検出されていない。
高飛車は、
提出された記録を一度だけ確認した。
数値に異常はない。
行動ログも欠損なし。
照会対象は、
存在しない。
そのはずだった。
指先が、
もう一度記録端末に触れかけて、止まる。
再確認は不要。
そう判断する理由も、
十分に揃っている。
それでも、
そのまま閉じることができなかった。
想定に、含まれていたか。
問いは、
音にもならず、内側に落ちた。
確認すれば済む。
照会すればいい。
その選択肢が、
確かに存在していることを理解した上で――
高飛車は、何もしなかった。
判断は保留。
その保留は、
記録に残らない。
だが、
保留したという事実だけが、
内部に残る。
高飛車は視線を上げる。
城の奥。
魔王の在処。
そこへ向かうべき理由は、
今はない。
そう結論づけるまでに、
わずかな時間を要した。
事案は終了。
未処理項目は存在しない。
世界は稼働中。
進行は正常。
特記事項は
ない。




